第24話
その後、すぐに走り始めた。
天国門ダンジョンの陽エリアとは言え、どうにも囲まれているうえに、その数も多いようだ。
このままではそこにいる2人は死に戻りも時間の問題だろう・・・
そして辿り着いた先には・・・
女子生徒が確かに2人いた。
しかしそれに対するモンスター・・・ゴブリンの数が異常に多すぎる。
既に片方は足に怪我をしている様子で、もう片方もそれを庇ってか擦り傷などが多い。
そのうえで庇っている方に関してはスカートがはぎ取られて下着が露わになっている。
物語上のゴブリンらしく、どうやら単純な獲物として考えたわけでは無く、ゴブリンの性欲の捌け口として利用する形を取ろうとしているのだろう。
「ちょっ・・・あの数・・・!なんで!?」
と香澄も慌て気味だ。
「それは恐らくここが陰エ―「考えるよりも先に行動だ!先に行くぜ!」―リ・・」
と新一が説明を聞くよりも早く地面を蹴った。
「疾ッ!!!」
庇っている女子生徒の死角に入っていたゴブリンに一気に近づき首を跳ね飛ばす。
元々、新一は何かしらの武術の心得があるのか、動き自体は悪くない。
そのうえで、過保護な形であったかもしれないが、パワーレベリングの後に、自分達だけで戦い、生き残る術を身に着けている。
更に陽エリアよりも強力な分ステータスの上り幅が、他の一般的な一年生に比べてかなり大きい3人にとって、天国門ダンジョン陽エリアの第1階層は既に彼らにとってはただの獲物と化していた。
疑問を呈していた香澄も既に支援魔法を発動したうえで、牽制目的で魔力弾を放ち始めている。
詩織に至っても新一に若干遅れる形ではあるが、すぐに追いつき槍を器用に振り回して敵の殲滅に入っている。
助けてもいいのか迷っているうちに3人とも既に戦闘状態に入っており、
俺にしては珍しく少し慌てて戦闘へと加わる。
しかし俺はここでミスをした。
尤も結果的に悪いミスでは無かったのだが・・・
というのも俺が普段使っている特殊な歩法は衝撃波を生み出さないものだ。
普通の瞬間移動ではあまりに早いと空気が一気に押される形で衝撃波が発生してしまう。
仲間が先に積極的に救助に入ったことによる困惑と、これで間違っていないのだろうかという焦りに近い感情で、普段通りの感情ではない俺はその歩法を使うのを忘れてただ普通に速く移動してしまった。
―――ドパンッ―――
先に大本の数を減らそうと、彼女達から結構離れた位置に固まっていたゴブリンの集団に飛び込んでしまった。
その衝撃波だけで周りにいた7匹のゴブリンがズタボロになって吹っ飛び、壁に叩きつけられてグシャグシャに潰れて息絶えた。
「あ・・・・」
「「「え・・、ええええぇぇぇ!?」」」
ちなみに先の呟きは俺である。あとに続いた驚愕は新一たち。
守られている彼女たちは茫然としている。
「あーーーー・・・まぁ・・・・・・いいか・・」
「「「いや、いや、いや、」」」
揃いもそろって否定しなくてもいいのでは・・・?
そう考えながらあたりを見渡してみると30匹近くいたゴブリンは残り半分程度になっていた。
そして反対側にも同じように7・8匹がまとまっているようだ。
――この際面倒だし、一度歩法を使って連中の割とすぐ近くに移動して、そこから衝撃波で吹き飛ばせばいいか・・・――
などと若干投げやりに考えて行動に移した。
――ドパンッ――
再び吹き飛び肉片に変わるゴブリンたち・・・
やっておいて言うのも変な話だが、我ながらに敵が可哀そうに思えてくる乱雑な殺し方だ。
「まぁ・・・いっか・・」
「「「えーーーー・・・・」」」
最早適当である。
その間にも殲滅は確実に進んでおり、どうにもこのゴブリンたちのリーダー格と思しき個体が、女子生徒のスカートを高々と振り回して遊んでいたのだが・・・
あっと言う間に殲滅された仲間を見て茫然と固まっている。
そしてその女子生徒も結構戦い慣れていたのか、その隙を見逃すような人物では無かったらしく・・・
「ハアアアァァ!!!!」
と雄たけびを上げながらゴブリンの体を上下に分かれさせて、倒していた。
そして香澄の魔力弾が最後の1匹を捉えて絶命させる。
どうにも陽エリアなだけあって、敵も脆いようだ。
普段は2~3発同じ場所に当てて、何とか穴を開けて敵を倒している香澄だが、
このエリアでは1撃で貫通までさせている。
そうして俺たちの救援作戦?は終わりを告げた。
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