第21話

「それで・・・職人クラスの当てはありそう?」

「ええ。これでも1年間この学園で生活してきた身だからね。

丁度良さそうな5人グループがあるわ」


「5人グループ・・・そのいずれかに職人クラスがいるの?」

「いいえ、そのグループ全員が職人クラスのパーティーなのよ」


「それは、また・・・なんとも・・・」

「言いたいことはわかるわ。ダンジョンに潜るというならどうしても火力職は必要になるからね。

でも全員が後方・・・しかも本来ならばダンジョン内に潜るような職業では無い以上どうしても火力不足は否めなくなる。

効率が悪すぎるっていいたいんでしょ?」


「そうだね・・・でも何でそんなことを?」

「この学園の風習が原因よ。

言うまでもなくこの学園では一部女子生徒は男子生徒の道具や奴隷扱いよ。

それだけに戦闘に役立たない職人クラスは足手まとい。

だからダンジョンに連れてってレベリングしてやるから、

俺たちの言いなりになれっていう連中が多いのよ」


「それは、そうなるだろうけど、そこからのつながりが全く分からない」

「要はそういう人たち同士でお互い助け合おうっていうグループを作ろうって考えたのが事の始まりよ」


「なるほどね・・・」

俺はここでふと気になって尋ねてみることにした。

その答え次第では今後の道筋が変わってくる可能性があるからだ。


「りおねぇ。気になったんだけど、この学園でパーティー以上の大きな組織は無いの?」

「っていうと?」


「それ以上の集団を組成したような・・・・そんな一団とか・・」

「ああ・・・そういうことね。あるわよ。ギルドって呼ばれる物ね。」


「ギルド?」

「ギルドってのは元々1年の時には複数かつ少数のパーティーだった連中が、それぞれの目的に合わせて効率的にダンジョン攻略をしようって魂胆で作り上げる集団だ。

パーティーがダンジョン内限定での登録になるのに対して、ギルドは学園に対して申請が必要になる」

ここで新一が会話に加わる。


「そのギルドの結成で必要な物ってあるのか?」

「答えは簡単でルビーが必要になる。言っちまえば金だ。

その代わり、ギルドは各学期で支払う金額に応じてギルドホームっていう独自の拠点とできるエリアを与えられててな。

個人間でしかロッカーやら更衣室やらを使うしかないのと違って、一つの大きな拠点としてしようできるから人気は高い」


「人数の制限は?」

「各ランクで想定されている人数制限に近いものはある。

ただ明確に何人までっていう物じゃない。

あくまでも与えられる敷地の広さからして、この程度の人数迄での利用を想定しているってだけの話だ。

極端な話、最低ランクのFランクは20人登録が想定となっちゃいるが、中には30人で登録して手狭とはいえFランクで頑張ってるギルドもあるくらいだ」


「なるほどね・・・それなら俺たちはFランクで良さそうだな。

元々大人数のギルドにするつもりはないし、どんなに多く見積もってもその1つか2つ上くらいで十分だろう」

「1つ上ならEランクで30人、2つ上ならDランクで40人だな」


「それならEもあれば十分だ。各学期の使用料金は?」

「一人当たり5000ルビーってところだ。とはいえ最低ラインがFランクからになってるから、5人で登録したからって2万5千ルビーになるわけじゃねえ。

あくまでも最低ラインの10万ルビーは必須だ」


「そうなると・・・今現在俺の方で50万ルビーはあるから、Fランクの登録でも2年の2学期分までは支払えるってことか」

「え?ちょっと待ってがっくん?いつの間にそんなに稼いだの?」


「ダンジョンの中にこの学園と契約している神獣がいてね。

そいつがドロップを買い取ってくれるんだよ。

購買を経由しないルートだから足がつきにくい」

「はぁ・・・いつのまにそんなものと出会っていたの・・・?」


「俺たちは天国門ダンジョンの陰エリアをメインで探索してる。

あいつはその陰エリアの最奥に居たんだ。

それも攻略ルートから外れた最奥にね。

だから多分今まで一般生徒には見つからずに済んだんだと思う」

「とはいえ、これから先はあまり大口を使おうとすれば怪しまれるわよ?」


「10人を超えるあたりから使えば目立たないんじゃないか?

それなら大口の稼ぎがあっても不思議じゃないし・・・」

「んー・・・微妙なところだけど、それが一番現実的かな?」


「よし・・・それじゃあやることはおおむね決まったね。

りおねぇは明日にでもその職人クラスの人と面会ができないかコンタクトを取ってほしい。

俺たちはこのままダンジョンに向かおう。

今日は新一たちの本格的な初戦闘と行こうか?」


「わかったわ、職人は任せて頂戴」


「そりゃいいが・・・いきなりハードル上げて来たな・・」

「昨日の最後の段階では殆ど苦も無く倒せてただろ?

それなら大丈夫だと思っただけだ。

俺が危険だと思ったらしっかりサポートするさ」


「それは心強いが・・・まだ早くねえか?」

「いや、陰エリアとはいえ1階層であれば問題ないだろう。

今日の目標は1階層を新一たち3人でクリアするのが目標な?

俺はあくまでも同行者ってだけの話だ」


「お前はどうするんだ・・・?」

「俺はお前たちが2階層に到着して天国門入り口に戻ったのを確認したら昨日の続きを攻略するよ。

すでに5階層入り口までは解放済みだ」


「ごか・・・・!?そんなところまで行ってんのかよ!?」

と新一が驚き、詩織と香澄も驚愕しているようだ。


対してりおねぇは当たり前と言わんばかりに

「まぁがっくんの実力なら当たり前かな」

とコメント


俺とりおねぇは「何言ってんだコイツ?」みたいな目で新一たちを見ている。




そうして俺たちは分かれてそれぞれの目的に向かった。

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