第20話
「そんで・・・そこまで説明して俺たちに会ってほしい人ってのは」
「その人の名前は【上日 莉緒】という生徒だ。2年生の先輩だな。
俺とその人の関係は陰陽師の本家と分家というあり方だ。
元々俺はかなり前からこの学園に入ることが、ほぼ確定していた。
俺が本格的に調査するにあたり、その人が先行して情報収集やできる限りの環境を整えることが、その人の任務内容だ」
「つまるところ鋼のバックアップが任務内容ってことか」
「ああ。だがバックアップが任務とはいえど、そこは同じ陰陽師だ。
少なくとも今現在ハイランカー認定されている生徒たちとさほど変わらない戦闘力を持ってる」
「待て、でも本格的な調査はお前がやるんだよな?ならお前の戦闘力は?」
「もう分かっているだろう?俺の本来の戦闘力はそのバックアップメンバーやハイランカー達よりも上だ」
「本来・・・?」
「簡単に言えば俺は今現在、意図的に自分の力を制限した状態で戦っているということだ。封印を解除すれば恐らくエキゾチックとも互角にやりあえるだろう。
俺達陰陽師の本家というのは、時には神から堕ちた存在すらも討伐してきた存在だからな」
「一種のバケモノってわけか・・・」
「酷い言いようだな」
と悪態を付き合っているがお互いに苦笑している。
翌日、俺は3人を引き連れて以前と同じ場所に来て、以前と同じやり方でりおねぇを呼んだ。
「ひさしぶり、がっくん・・・それでこの子たちは?」
「その呼び方やめてくれないかな・・・」
見れば3人ともポカンとしてる。多分この呼び方が原因だろう。
「今更取り繕ったって意味無いでしょう?
私たち陰陽師同士の会話に連れて来たってことはがっくんが早々に仲間にした子たちなんでしょうし。
そうなると必然的に普段の呼び方で呼ぶようにもなる。
がっくんっていう呼び方がバレるのが早いのか遅いのかそれだけじゃない?」
「・・・・・・・・・」
相変わらず聡い。
ここに連れてきた時点で俺が彼らに対して身分を明かしているのは既に把握済み。
そのうえで今後も見通していきなり呼び方を教えている。
ちなみにではあるが、この時の鋼はそう思うだけで、この時莉緒が詩織に対しての牽制を始めていたことなど、彼には知る由もなかった。
「それでどうしたの?何の相談?」
「相談内容は2つ。
1つは今後は莉緒・・・・・・・・・・・・りおねぇも一緒にダンジョンに潜ってほしいというのが一つ。
もう1つは職人クラスを知ってないかなっていうのが一つ」
「前者はもちろん良いわ。だけど後者はなんでなの?
私達は私達独自の武器が扱える。職人クラスの力は必要ないと思うんだけど?」
「それは俺たちの話な?」
「???」
「簡単に言えば新一、香澄、莉緒が使う正式な装備が必要だってことだ。
言うまでもないことだけど、ダンジョンに潜ることでステータスを高めることは重要だろう。
しかし同時にダンジョンに潜る際に着ける装備類でもステータスの底上げができるんじゃないか?」
「それはそうだけど・・・」
「危惧していることはわかる。職人クラスを俺たちの事情に巻き込むってことは、その職人クラスを危険にさらすかもしれないのが1つ。
もう1つはその職人クラス達に俺たちの事情を話す必要がでるってことだろう?」
「その通りよ。私たちは言うまでもなく国からの依頼を受けて、家から任務を課されている。
そして学園生活で失敗した際に彼らが行く未来が短い人生であることは承知しているけれど、私たちの任務失敗の行きつく先は無能に対して行われる制裁。
即ち記録を全て抹消されたうえで、命も狙われるという事よ」
「「「!?」」」
ここへきて俺たちがとんでもないリスクを背負ってこの任務に当たっていることを知った3人は絶句している。
「それはそうだが・・・俺はこの3人もしっかりと守りたいと思ってる」
「なぜ?」
「答えとしては簡単で、自己満足だ」
「それはどういう・・・」
「俺は確かに陰陽師としてこの世界の陰の部分で生きる存在だ。
しかし表の全てを切り捨てた生活を送っているわけじゃ無い。
つまり表にもその存在を証明し続けるためにも、香澄たちには生きてほしいと思ってる。
例え殺されて、記録を全て抹消されようとも、香澄たちが俺たちのことを覚えていてくれれば、すくなくともこの3人だけは俺たちの存在を証明し続けてくれる」
「・・・・・がっくんも意外と理想家な点があったんだね?もっと現実主義かと思ってた」
「幻滅した?」
「いいえ、全然。むしろ惚れ直したかな?」
「からかってるのかな?」
「からかってなんかないわよ」
「「・・・・・・・・プッ」」
結局俺たちは笑いあってしまった。
まぁこれくらい軽い方が俺達らしい。
重い空気のまま任務に当たっていても心が壊れるのも時間の問題だ。
そうして俺たちはダンジョン装備を整える準備に入る。
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