第17話

俺はこの後、あのいけ好かない神獣のところに行ってドロップした結晶をルビーに交換する必要がある。

細かいことは言わなかったがこのメンバー全員の為になることだから、3人を入り口まで送り届けたらもう少しだけ潜ってくる意思を3人に伝えた。


勿論、新一はそれに対して猛反発したが、実際にはレジェンダリーだが表向きユニークを倒すことができる俺を心配するのも可笑しな話だということで容認された。

容認されたことはありがたいが理由がいささか納得できない


そういえばアレを渡してなかったな・・・

「新一、ほら・・・コレ・・渡してなかったから渡しておくよ」

と言いながら明るい色をした結晶を2つ渡した。


「なんだこりゃ?モンスタードロップか?にしては見慣れない結晶だけど・・・」

「モンスタードロップ・・・なのかな・・よくわからん」


「お前が分からないんじゃ俺も分からんと思うのだが」

「あえて言うなら・・・モンスタードロップならぬヒューマンドロップかな?」


「どういうことだ?」

「初日の実習で3人ともユニークに殺されたって言っただろう?」


「ああ」

「その時にそれぞれから出た結晶だ。詩織には後で俺から渡す。

お前に渡したのは新一と香澄の分だな。要は多分それが魂の欠片なんだろう。

それを失えば短命で子孫を残せなくなり、現実でスキルを使えなくなるということだろう。

逆を言えば・・・」


「これが戻れば・・・俺たちもスキルを扱えるってことか!?」

「落ち着け。あくまでも可能性の話だ。約束はできない」


「あ・・・ああ。済まない驚きすぎて言葉も出なかった・・・・・・・ハッ!?」

「どうした?」


「お前ら周辺に警戒しろ!絶対に死ぬんじゃねえぞ!?」

「何をそんなに慌ててる?」


「もとに戻る可能性があるならこれ以上は死ねないってことだろうが!?」

「それはそうかもしれんが・・・そこまで警戒する必要は無いぞ?」


「なぜそう言える!?」

「詳しい原理は説明するつもりはないが、注意力が散漫になってなければ俺は敵の接近を事前に察知できる。あのユニークの時は油断してたから先手を取られたが、今はそんな油断も残ってない。

ダンジョンの中で詩織と致すことはあっても、たった一度とは言え詩織を殺されたわけだからな。

そんな油断は微塵も持ってないさ。

それで今現在俺たちに近づいている敵はいないから平気だ」


「なんだよ・・・それは・・お前は一体?」

「無理に信じてもらおうとは思ってない。だが恐らくだが、お前にはいつか話せるときが来るだろうと思う」


「・・・・・・そうか。ならその時を待つことにするさ」

「悪いな・・」


そうして俺たちは特に敵と遭遇することもなく、俺は3人を無事に入り口に通じる転移装置まで送り届けた。



さて、ここからが本番だ。

俺は身体強化などをフルに活用し一気に2階層へと通じる道を探し当てる。

あのいけ好かない神獣は1階層にいるわけだから、それまでいた階層以上のエリアで戦闘を行い、そのあとで奴のところに行くことを考えると、さほど時間に猶予があるわけじゃ無い。


午前中から潜り始めて既に時間も3時ころになっているだろう。

強制排出まで5時間といったところだ。

俺ならばかなりの数を狩れるはずだが、今日中に行ける範囲を増やしておきたい。

そうすれば次回以降練度などが上がり新一たちでも、さらに奥の階層をアタックするとなっても、転移装置でいきなり2階層へと向かうことも容易なはずだ。


そうして俺はすれ違いざまにゴブリンたちを倒していく。

それぞれの戦闘でゴブリンは最初の1~2匹、場合によっては5~6匹倒されるまでは俺の接近にすら気づかないといった具合だ。

加えて気づいたとしてもスピードが俺の方が圧倒的に速く攻撃が掠るような危険な場面は存在しなかった。



そんな形で結論を言えば陰エリア5階層の中腹まで到達することはできたが残り時間が1時間。

つまり午後7時になった段階で俺は攻略を中断し、5階層の転移装置まで一度戻り、1階層へ転移。

そのまま奴の元へと向かった。

結果としては俺単体で100体を超えるゴブリンを討伐しており、既に結晶や武器をメインとしたドロップアイテムが収納箱に山ほど存在した。


当然ではあるが、どのモンスターからもドロップしている結晶に関しては既に俺単体で100個以上集まっている。

そのうち1個を残して全てを換金する予定だ。


その1個はスキルのアイテムボックスへ入れている。

なお気になる陰陽収納で格納した場合については昨日倒したモンスターからドロップした10個近い結晶を陰陽収納に保管しておいた。

結果としては陰陽収納で保管した結果、色とか中に込められてる力とかが抜けてる様子は見られない。



そして俺はあの神獣の元へとたどり着いた。


「やあ、一昨日以来だね?どうかしたのかい?」

「結晶を売り払いたいと思ってきたんだができるか?」


「構わないよ。僕も結晶を売り払う先はあるからね。それで物を見せてくれるかな?」

「わかった」


そういって俺は結晶を渡す。


「すべてゴブリンの結晶だね。でもこの純度は・・・相変わらず裏エリアで狩りをしてるんだね?」

「わかるのか?」


「当然だよ。表エリアと裏エリアの純度は違うからね。本来表エリアのゴブリンの結晶なら1個100ルビーなんだけど、裏エリアだから1個200ルビーでどうかな?」

「2倍か・・・ゴブリンにしては高いな?」


「君が思っている以上に裏エリアは危険な反面、エネルギーの質も高いということだよ」

「まぁこちらとしては満足のいく査定だ。それで頼めるか?」


「142個あったから、28400ルビーだね」

「高価買取してくれたから少しおまけするさ、端数は切り捨てで頼む」


「いいのかい?正当な報酬だと思うけど?」

「いいさ」



ここで僅かばかりとは言え、すこしおまけをしておけば『付き合いがあっても悪い奴じゃない』と思わせることができる材料になるかもしれないしな。

それが何処で役に立つかもわからないし。



「そうかい。ならお言葉に甘えて28000ルビーを渡すよ」

「ありがとうな」


「他に買い取れそうなものはあるかい?」

「いや、ゴブリンの武器くらいだ」


「それも買い取れるには買い取れるけど・・・でも裏エリアのゴブリンの武器だからね・・

もしかすると職人クラスに依頼してしっかりとした武器にしてもらった方が価値は高くなるかもね?」

「そうなのか?」


「表エリアの武器ならたかが知れてるけれど、裏エリアなら話が違うからね」

「そういうものなのか・・・助言感謝する」


「いいさ。その代わりと言ってはなんだけど、珍しいアイテムや結晶は僕に売ってくれないかい?」

「そのくらいであれば全然かまわないし、こちらからもお願いしたいな」


「なら頼むよ」

「こちらこそよろしくお願いする」




お互いにいい取引になったようだ。

そうして俺は用を済ませると、転移装置へと向かい、ダンジョンから出ていくのであった。


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