第4話

学園に着いて早々に、俺たちは領に案内された。

寮自体は学園の周辺にいくつも存在している。

この学園は1クラス40人の人数で構成されており、1学年に30クラスもある巨大校だ。

そのうえで高大一貫校であるため7学年。

あわせて210クラスも存在しており、総勢で8500人弱にも及ぶ生徒たちがいる。

学園の周辺に沢山建てられた寮には男子寮・女子寮として分けられた状態で寮が存在している。


一応とされているのは、この学園は男女間の交友に関しての風紀がかなり緩い特色がある。

故に一応は男子と女子を分けているが、女子生徒を連れ込んで如何わしい行為をする男子生徒は後を絶たないし、

そういう案件だとわかっていてノコノコついていく女子生徒も後を絶たない。


そして8500人弱という大人数を収容するとなると、なかなかに高い収容力が必要になるので致し方なし。


この学園に入るにあたっての条件は本来は推薦者の推薦あってこその物だ。

故に殆どの生徒はこの学園の卒業生や関係者が教師を務める学校で選抜されて、この学園に推薦されるという仕組みだ。


ではなぜ他推による受付などという面倒なことをするのか。

この学園にはダンジョンが存在する。

ダンジョン自体は世界のあらゆる場所にランダムで発生した代物だ。

妖魔・・・と呼んでいいのかわからないが、異世界アニメもので存在するような危険なモンスターたちが彷徨っている。

それだけにダンジョンやその周辺は本来は危険なものであるはずなのだが、そんな場所に学園が密かに立てられるのには理由がある。




それはダンジョンに入ることによって特殊な職業を得て、特殊な力を得て、それで戦うことができる。

戦いの中でモンスターを討伐すると稀にドロップアイテムが得られるほか、結晶を入手できる。

この結晶だが、この世界には無い物質であり、ダンジョン周辺でしか存在し続けることが基本出来ない。

基本・・・とされている理由は加工することによってダンジョンから離れてもその効力を発揮することができるのだ。

しかしそのためにはダンジョンの周囲に加工工場、というか研究所を作る必要がある。

それに加えてノーリスクで結晶を得られるわけでは無いので手間もかかる。


そこで考えたのが学園を建て、生徒たちに攻略させる方法だ。

それにより学園は、この世界には無いエネルギーを楽々と確保することができるという仕組みだ。

しかしそれでは生徒たちが一方的にリスクを背負うことになってしまう。

そこである研究結果を一部の領域で表に出し、誘惑したのだ。


本来ダンジョンで得られた力はダンジョンの内部でしか使えない。

例えば日本列島に戻ってその力を使おうとしても、その力の行使は不可能なのだ。

しかし、とても厳しい条件をクリアすればその力を外部でも使うことができる。

言ってしまえば、他の一般市民とは違ったアドバンテージを手に入れることができるため、知る人にとって甘い話になったわけだ。

当然それで済む話ではないが・・・


しかしそれだけの恩恵があるとなると一般市民が所望するのは目に見えている。

特権階級はそれを独り占めしようと考えたわけだが、多くの生徒たちを集めるにあたってはその情報を隠しながら集めるのは困難だ。

それゆえに推薦者には推薦の際に一定の条件が定められている。

それは『いなくなっても問題のない人物』

これを条件にすることによって、なにか不味い事態が発生した際には、その人物を消すだけで済むようにしたのだ。

消しても大して調べられることの無い人物を集めたわけだ。


そしてこの法則は男女ともに生徒に対して厳しく適用されている。

しかし男子生徒と女子生徒とでは扱いが違う部分が存在する。

男子生徒も女子生徒も基本的には条件としては同じだ。

推薦を受けた生徒は、入学の意思があるかどうかの確認をされる。

そして契約の最中で、その身柄を買われるのだ。

比喩的表現でもなんでもなく、家族には口止め料として億単位の金額が支払われる。


何が違うのかというのここから先の対応だ。

男子生徒の家族にも一応は口止め料を払われることになるのだが、女子生徒の家族には男子生徒の家族の場合よりも金額を増やして払われることになる。

それは女子生徒ならではの使い方があってのことだ。


そして公式記録からは一時的に戸籍情報などが消されて、存在しない人物として表社会では取り扱われるのだ。



それはこの学園を隠匿するにあたっての問題点が原因である。

学園を隠匿するためには基本的に外部とのアクセスを全てシャットアウトする必要がある。

一部接続を許可する物であったとしても、全て学園の監視範囲に入っているわけだ。

それでは娯楽が無く、それまでの生活で娯楽に塗れた学生たちを縛り付けては不満が続出する。


そこで取った方法が、人間の欲求を満たすことにしたのだ。

具体的には女子生徒たちをお金で買い、男子生徒たちにあてがい、性欲を満たすことでその不満を押さえつける形を取った。

とはいえ中には優秀な女子生徒や、学園の為にダンジョンへと挑戦してくれる女子生徒もいる。

そういう者たちは基本的に重宝される。


反面、この学園に入学しておきながら、ダンジョンへと挑むことを拒否した女子生徒たちは女性としての尊厳すら踏みにじられる行為を強要されることになる。

また一般男子生徒にもそれをあてがうことによって、男子生徒のやる気を引き出そうという、まさしく下衆の極みと言わんばかりの所業だ。


また男女ともに入学時点では自分の身柄が金で買われて、世間的には一時的に記録から抹消された存在であるという事は、当人たちが知らされている。

故に男女ともに不満を言えるはずがない。

仮に言おうものなら国にとって不利益となる存在という事で、学園関係者やその卒業生によって構成された暗部によって消されてしまう。


また不思議な事にダンジョンやその周辺では男性が女性の中で果てたとしても、女性が困るようなことは無い。

その現象もまた、性に対する壁を破壊できる一つの要因となった。


何にしても寮が一応分けられているとは言えども、基本的に男子生徒たちはダンジョン攻略に非協力的な女子生徒たちの扱いを知っている。


女子生徒の方も独自に防衛策のようなものを用意するため、男子生徒が女子寮に忍び込むのは容易ではない。

しかしその逆は悲惨なことになる。

とくに相手を限定した状態ではない場合はかなり悲惨だ。相手を特定していた場合でもその相手から物扱いされることが多い。

そして相手が特定されていないと、その寮の男子生徒たち全員の共有財産としての道具となってしまうのだ。


またそれは寮内に限った話ではなく、学園内やダンジョン内おいても実質治外法権と化している。

そのため、時折その非協力的なリストに入った者達が、物として扱われる光景を見かけることになるのだ。


そしてそんな環境に立たされた女性生徒もずっといれば価値観が破壊される。

いつしか彼女たちの中にあった忌避感は、唯一の娯楽となり、彼女達自身の欲にも流されることになるのだ。



寮に辿り着いた俺は自由時間になるなり、外に出た。

そして人気がない指示された場所へと到着するなり人払いと防音の結界を発動する。

10分ほど待っていると目当ての人物が到着する。


上日 莉緒こうが りお】。上月一族の分家に該当する、親戚の女性だ。幼いころから親しい間柄で俺の姉のような存在だった。彼女は俺がこの学園で任務にあたることになり、それにあたり先行して情報収集や環境整備のためのサポート要員として送り込まれていた。


「久しぶりね、鋼。元気にしてた?」

「いつも通りだよ。そういう莉緒姉さんは?」


「・・・昔みたいに『りおねぇ』って呼んでくれてもいいのに、がっくん」

「お互いいい年してその呼び方はないんじゃないか?」


「私にとってがっくんは、いつになってもがっくんだよ」

「まぁ・・・2人きりの時は任せるよ。それでりおねぇはどうだった?危ないことになってない?」


「大丈夫よ。ダンジョンの攻略は安全マージンを多めにとってる。それにもともとのアドバンテージもあるから簡単には追い付かれないわ」

「そっちの心配もあるけれど、この学園の風習もさ・・・その・・・」


「まだそんなことになってないわよ?」

「なら良いけど、気を付けてね?」


「わかってるわ。でも本音を言ってしまえば、がっくんが私の初めてをもらってくれればうれしいし安心できるんだけどね?」

「り、りおねぇ!?」


「そんな調子じゃ正直心配ねー。数は多くないとは言えども、そういう光景は時折見かけるからね」


軽い調子で言うりおねぇに俺は冗談を言われて揶揄われたと思った。

ムスッとした表情になりかかったが、なんとかそれを抑え込んで反論する。


「だ、大丈夫だよ。俺も頭ではわかってるし、怪しまれないように任務を遂行するつもりだから」

「そっか。それなら安心したよ。家の掟は怖いからね・・・」


体を包み込むように自身の腕をつかむ、りおねえは震えていた。

そう。家の掟に逆らった者は例外なく『死』あるのみだ。

男であるとか女であるとか関係ない。


むしろ俺たちはある程度の自由を与えられている。

女として生まれたりおねぇは実力を示さなければ、妖魔に対するある種の餌として使われる危険すらあるのだ。



「あ、そうそう。さっきの、がっくんに初めてをあげるって話だけど・・・」

「な、なに!?」


「がっくんは冗談だと受け取ったみたいだけど、私は本気だから。そのうち私に襲われないように気を付けてね?」

そういって去っていくりおねぇ。


・・・・・・・


顔を見なくても分かる。

今の俺は顔が真っ赤だ。

とても気恥ずかしい思いが溢れている。


このまま帰れば怪しまれるだろう。

目を閉じて無心になる。



・・・・・・・・うん。

冷静に・・・なりきってるわけじゃないけど、平常心もいくらか戻っている。


そうして俺は寮に戻った。


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