第3話

翌日、俺はとある船着き場に何日か分の荷物を持って立っていた。

ここから目的地に向かうわけでは無い。

最終的な目的地は誰の目にも触れることを許されない土地だ。

それだけに徹底した情報管理がなされている。


情報とは小さなものでも情報になる。

例えば、誰がどの電車を使った。これだけでも大きな情報となるのだ。

それは確かに足跡として残る情報だ。


それゆえにとある学園がチャーターした船に乗って、まずは一時中継地点に向かう。

そこから大型船に乗り換えて、その学園へと向かうのだ。

これにより、この船着き場から向かったことはいろいろな人の目に触れることはあるし、一時中継点へと向かったこと自体も色々な人の目に触れることになる。

しかしその後、俺がどんな乗り物を使って、どこへ行ったのかは、その一時中継地点の者しか把握しないことになる。


そしてその一時中継地点の者がその後の足取りを誤魔化せば、当然俺の足跡は消えるわけだ。

ましてその場所が、ある意味国家機関であり、そして国の暗部ともなっていればそれだけの権力を使って情報を握りつぶすことも容易い。


その島の片側の停留場には多くの小型船舶が停泊していた。

俺が出発した地点は、もともと人口の少ない街だ。

それゆえ乗船していたのも俺一人だけだったが、他の地点は違う船もあるようで、複数の生徒が乗っている船もあった。

いずれも中学生と思われる者達だけであった。


確証は無いが、高校生だとするにはまだ幼さが残っているように思える。

しかし小学生とするならば身長なども含めて大人に近すぎるのだ。

おそらく中学を卒業したばかりの生徒たち。

つまりは俺と同じ年代の生徒たちだろう。

尤もこの場にいるのは、あの学園に入学予定となっている生徒たちだけだ。

故に俺と同じ立ち位置の生徒だけと言える。


唯一の違いは、彼らは正真正銘の一般人であり、俺があまりにも特殊な家の出自であるということぐらいだろう。


そしてその停留場と、島の中央を挟んで反対側には大きなクルーズ船が控えていた。

といっても大人数を運搬するのに長けているだけであって、別に豪華客船というわけでは無い。

いや、厳密に言えばそこから二回り小さいクルーズ船も控えている。

そしてその船には煌びやかな装飾が施されている。


この2隻の違いは一般市民を乗せているのか、それとも上流階級、所謂上級国民と揶揄される者たちを乗せているのかという違いだ。

当然俺は一般市民扱いのため、これといって装飾など施されていない大型のクルーズ船に乗り込むことになる。


クルーズ船の内部はあくまでも食堂と各部屋が存在するだけだ。

幸いなのは、各部屋は1部屋2人部屋となっており、その2人部屋にランダムに生徒が入るだけだ。

唯一ランダムでは無いのは、男子生徒か女子生徒かという差異だけだ。

これくらいはここでは当然だろう。


なおここの組み合わせに関しては、基本的にこれから先、同じクラスになるし、同じ寮の同じ部屋・・・

つまりルームメイトとなる予定だ。

第一印象最悪で今後の付き合いが悪くなるのも問題だろう。

同居人が既に中にいるのならばノックくらいした方が良いだろう。


ノックをして3秒くらい間をおいて中に入る。

「お?お前さんがルームメイトか?これから7年間・・・になるのか?よろしくな」

「よろしく。俺は上月 鋼だ」


「俺は富勇 新一だ。改めてよろしくな」


富勇新一・・・

要注意人物の1人だ。

春日浦財閥の腹違いの妾の子供で、現生徒会長を務める腹違いの兄と繋がっている恐れのある人物だ。

そんな人物のルームメイトになるってことは疑われる要因でもあったのだろうか・・・

まぁ、どのみち多くの生徒たちに注意しながらことを進めなくてはいけない。

その生徒が近いか遠いかの違いだ。

それに近ければ近い分初めから適度な警戒心を持ってことに当たれる。

何事もマイナスに捉える必要は無いだろう。


そうこうして出発を2~3日出発を待っていると、船は出発し、目的の島へと到着する。


国立徳川学園


俺の7年にも及ぶ任務地となる予定の地であり、いろいろな曰くがついた学園がある島だ。


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