第3話 月の女性の贈り物

「でも!でも、、、!」


『まだ、怖いのかい?』


「う、、、、、うん、、、、」


 女性が問うと男童は控えめに頷いて、顔を伏せた。


「ぅ、う゛、、、、」


『泣くな、坊や。坊やが怖くないように、良いものをあげよう。』


 そう女性が言ったとたん、男童は波だ目になりながら女性を見上げた。


「、、、、何?」


『これだよ。私がもっている月の輝きを使って作った水晶。少し、黄色味がかっているだろう。月の力を封じ込めておいた。これを使っていつでも、私は坊やのことを見守っているよ。』


 そういって、女性は男童の片手に収まるような小さな小さな水晶を男童に手渡した。


「ほ、、、、、本当に?」


『あぁ。約束するよ。だから、泣くな。』


「う、うん!」


『じゃあ、もう大丈夫だな。1人が怖いのならば、沢山の人と関われ!関われば、覚えていてくれる人、助けてくれる親切な人もいるだろう。お前は、もう十分1人でも大丈夫だ。いつでも、見ているよ。』


「でも、、、僕、村から捨てられちゃったよ!」


『人里に近付くまでは、この水晶が導いてくれるよ。』


 そう言って、女性の姿は薄く、光の粒のように細かくなっていく。


「待ってよ!お姉さん、名前だけは聞かせて!」


 男童は、女性がもう、女性の原型を保たない光の粒になった時、叫んだ。


『水月(すいげつ)、月の化身、、、、坊やの言う〖お月様〗だよ。』


 その言葉を最後に、女性を形どっていた最後の光の粒が消えていった。


「待って!」


 その瞬間、男童の正面方向にある海の上から視線を感じた。


「あ、、、、、」


 海の上の空には、先程までは無かった月が、輝いていた。


 その月は、あの天女が男童にくれた水晶と同じ輝きをしていた。


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