あいのかたち
なにか怖い話無いかって? そりゃあるよ、こんな仕事してるんだから。
聞かせてほしいって言われると困るな……最近、コンプライアンスだなんだで、煩いんだからさ。
だからまぁ……オフレコでな?
ちょい前に報道されたバラバラ殺人事件、覚えてるか? そうだ、あの川から男の手足が見つかったやつ。
あの事件、急に報道が消えたと思わないか?
散々捜査状況がどうとかやってた癖に、犯人がどうとか被害者がどうとかの話まで行かずに、すっぱりと。
それにはまぁ、理由があるんだよ。
警察が犯人まで辿り着けなかったから?
いやいや、んなこたない。なんだかんだで辿り着くさ、こんだけ大事になったなら尚更のことな。
なのになんで報道がされなくなったのか。
とりあえず、警察は犯人に辿り着いた……こっから先はまじで誰にも話すなよ? 洒落にならないからな?
犯人は若い女で、警察はそいつの自宅に踏み込んで、任意同行を求めた。かくいう俺も、その場に居た。
だからまぁ、こんな話も出来るわけだ。
なんか変な家だったよ、玄関にだるまが三つ、起き上がりこぼしが……幾つだったかな、後マトリョーシカもあった。玄関にそんな沢山置くかんなもん。
で、声をかけたら女が出てきた。
女はその場で、自分が男の手足を川に捨てたことを認めたよ。
……なんか変な言い方だ、って? まぁ、そう言わざるを得ないっていうかさ……
で、署まで任意同行……ってところで、奥から男の声が聞こえてきたんだ。
待ってくれ、彼女は何も悪くない、ってな。
おかしいと思ったよ、なんせ、調べた上では女は一人暮らしだったからな。親兄弟って事はないだろうし。
何はともあれ、声がした方へ行ったわけだ。
声は、とある扉の閉められた部屋から聞こえてきた事が分かった。その前まで行って、扉を開ける。
それで、見つけたんだ。
男だよ。
手足の無い、男だ。
分かっただろ、事件はバラバラ殺人事件じゃなかったんだ。なにせ、手足の持ち主はまだ生きてるんだからな。
なんでも、その女はだるまとかみたいな、手足のないものしか愛せないんだとさ。手足の有るものは気持ち悪いんだと。
だから、それを聞いた男は……って事だ。
ってわけだ。どういう事件にしていいかすら分からない。だから報道も止まった。
幽霊や人殺しより、俺はその男のほうがおっかないよ。
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