番外編3 オレの名は1(全3話)
このお話から番外編となります。
全3話である人物の過去話となります。
お付き合い頂ければ幸いです。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「オラァ!! 寝とけよ、ボケが!」
「ゲボッ」
路地裏で男のうめき声が聞こえて来た。
鈍い音がした後にドサッと何かが地面に倒れる音。
うめき声を上げた男が地面に倒れる音だった。
倒れた男はゲホゲホと咳き込みながら苦しそうに地面を転げる。
それがひどく癇に障った。
「テメェ、オレらの縄張りで楽しい事してくれてるんだってな」
「ち、ちが――」
そんな男の髪の毛を掴むと顔を上げさせて、額が付きそうな距離に顔を近づけてやると、明らかに怯えた目をしてきやがる。
オレのドスの効いた声を浴びせかけてやるとチビリそうになってるのが笑えるな。
――だったら最初からちょっかいかけてくるんじゃねぇよ、クソが。
そして、何か言い訳をしようとした男の顔を、オレは何の躊躇もなく地面に叩きつけてやった。
「おつかれ〜……あらら。派手にやっちゃってんね、白鬼ちゃん」
「……タッちゃんか。やめてくれよ
地面に赤い染みを広げている男の髪から手を離した時、後ろから軽薄そうな声が聞こえて来た。
「いいじゃん、いいじゃん。その白髪、俺好きだよ〜。白鬼もめっちゃカッコいいあだ名じゃん。それに、お前のレイノルズって名字、めっちゃ呼びにくいし」
ヘラヘラしながら近づいて来た男に頭をガシガシ撫でられ、それがうっとおしくて咄嗟に払いのける。
「それにしても最近増えてるね〜。ウチの
「……
「代替わりしてから舐められっぱなしだよね〜、あの内弁慶くん」
少し歩いて停めてあったバイクにまたがる。
そのままエンジンをかけるとオレ達はその場を走り去って行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
この街に生まれて十八年。
特にこれと言って特徴のねぇ星の、特徴のねぇ街で工場をしている親父と一緒に暮らしている。
産まれた時から爺さん婆さんみたいなオレの白髪は、この何もねえ街ではかなり目立っていた。
だからだろうな。ジュニアスクールの頃からイジメにあっていたが、全員ボコボコにしてからは誰もオレに何も言わなくなってきた。
親友のタッちゃんに会ったのもこの頃で、いつも二人で馬鹿なことやってた。
十二歳の頃に工場の裏の廃材置き場から持ってきたエンジンを直してバイクを作った。
ボロボロのフレームを二人で塗装して、エンジン乗っけて走った時はテンションヤバすぎて死ぬかと思ったよ。
親父に後で死ぬほど怒られたけどな。
まぁ、怒られた理由はフレームの強度が足りなくて、もう少しでバラバラになるところだったから、らしい。
危ない事をするな!ではなく、やるならきちんと勉強してからやれ!というのが親父の言。
いかにも技術バカの親父らしいな、と幼いながら思ったよ。
それからは親父に色々教えてもらった。
元々、機械いじりが好きな性分だったんだろう。
親父に教えてもらう事だけに飽き足らず、自分で気になることは全部調べた。
このパーツは何の為に付いているのか。
この機構はどういう働きをしているのか。何のパーツと関係があるのか。
この仕組みが十分に性能が発揮させるにはどういう風に取り付ければいいのか。
一つ理解すれば十個は疑問が出て、どんどん調べるものが出てくる環境に、元々学校の勉強が好きでは無かったはずなのに、オレはどんどんハマっていった。
おかげで十五歳の頃には市販車以上の完璧なバイクを一人で作れるようになったけどな。
十四歳の頃にはタッちゃんと一緒に地元で有名だった暴走族チーム“
同年代の奴に比べてガタイが良かったから、喧嘩のたびに大暴れしてたらいつの間にかって感じだ。
そして、ついたあだ名が“白鬼”。
何もひねりのねぇ、白い髪を生やしたデカくてケンカの強い奴、で白鬼。
……あんまりオレは気に入ってねぇんだけどな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『面白いもんあるから一緒に見ようZe☆』
そんなある日、朝イチにタッちゃんから面倒くさそうなメッセージが入ってた。
寝起きのボサボサ頭をかきながら少しだけ考える。
ま、別に暇だからいいかと思いながら、レザーのジャケットを羽織るとバイクにまたがって家を出た。
店にでも寄って、飲み物でも買ってから行こうとしたのが間違いだったようだ。
「お、やっほー。白鬼じゃん」
……嫌な奴に会っちまったぜ。最悪だ。
「んだよ……」
ニコニコしながらオレに向かって、チビが近づいて来た。
白い布地に赤い線の入った服を着た、男にしては身長の低い奴。
黒髪を短く刈り込んで、子供みたいな人懐っこそうな笑顔を浮かべている。
その総長のドミニクだ。
周りには同じ白地に赤線の入った特攻服を着た数人の男がたむろしている。
最悪のタイミングだ。
ちょうど店の影に居て気づかなかった。
「何してんの? 暇ならボクと
顔はニコニコしてるのに、目が笑ってねぇ。
周りの男達もドミニクとオレを見てニヤニヤ笑ってやがる。
恐らく『
「うるせぇな。急いでんだよ」
オレの横まで歩いてきて肩に手を置いてきた奴の手を払いのけると、ドミニクの顔を覗き込んでメンチを切ってやる。
その行動にニヤーっとさらに奴は笑顔を向けてきたんだ。
……気持ちわりぃ。
「じゃあさ。少しだけそこら辺、バイクで流そうよ。ちょっとだけでいいからさ」
「なんなんだよ、失せろや! 忙しいっつってんだろが!!」
そう言って手で追い払う仕草をするとドミニクはその手をサッと避けて、肩をすくめて残念そうに言う。
「あ~らら、ボク振られちゃった、ね。ざ~んねん」
周りの男達からも笑い声が上がり「振られてやんの」とヤジが飛んできた。
「白鬼。ボクは君の事が気に入っちゃったんだ。仲良くやろうよ」
そう言って手を差し出してくる。
オレは数ヶ月前、
コイツは子供みてぇな顔と口調、ちっちゃい背丈なのにマジで強かった。
拳が重いんだよ。腹にもらった時は胃の中の物が全部出そうになった。
しかも俺の拳を何発喰らってもこいつは絶対に倒れない。
あの時は本当に負けを確信したよ。
流石、巨大暴走族グループ
少しくらい喧嘩の強いだけのオレとは強さも覚悟も違うんだろうな。
そう思わせる強さだった。
でも、その時に遠くからサイレンの音が聞こえてきて警察が近づいて来た事が分かったから、そこで喧嘩も終わりになった。
『白鬼! 次もボクと遊ぼーぜ!!』
去り際にドミニクからかけられた声。
二度とごめんだ、と思いながらオレもバイクで走り出した。
それから、何度かドミニクと出会ったが、何故かオレは奴に気に入られたようで何度も声をかけられるようになった。
『ねぇ、ボクと
ドミニクはいつもニコニコしながら、それでも眼の奥は笑っていない顔で俺を誘ってくる。
奴との喧嘩は二度とゴメンだったオレは適当にそれを断ってきたが、その都度ドミニクは残念そうな顔をしていた。
世の中には三度の飯より喧嘩が好きなバトルジャンキーって奴がいるらしいが、ドミニクもその類なのだろう。
今日も差し出してきた手をパンッと叩き落としてやると、奴を無視するようにバイクに乗ってオレは店から出ていった。
後ろから「白鬼ー!またなー!!」と声が聞こえてきて、ミラーを見るとブンブン手を振ってくるドミニクが映っていた。
今日も何とか撒いたか、と安堵した時にふと気づいた。
あ、飲み物買ってねぇや。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「タッちゃん? タッちゃん入るぞ~?」
タッちゃんの家に着いて何度か呼び鈴を鳴らすも誰も出てこねぇ。
でもそこは勝手知ったる親友の家。
ドアを開けるとズカズカと家に入っていった。
「あらぁ? こんにちはぁ」
そうすると部屋の奥からどこかタッちゃんと似た女性が出てくる。
その女性、タッちゃんの母ちゃんは、独特の間延びした声で嬉しそうにトコトコ近づいてきた。
そうして前まで来ると、んしょ、と背伸びしてオレの髪を撫でてくれる。
「まぁまぁ、相変わらず綺麗ねぇ。……ふふっ、ちょお〜っと前まで、こぉ~んなにちっちゃかったのにねぇ。私が背伸びしないと届かないくらい大きくなっちゃってぇ」
タッちゃんの母ちゃんは昔から、オレの白い髪を綺麗だって褒めてくれた。
……内緒だが、この母ちゃんがオレは大好きだ。
こうして頭を撫でられる度、オレは嬉しくて顔が真っ赤になっちまう。
オレに母ちゃんがいたらこんな感じだったのかな、とガキの頃はよく思ったもんだった。
「よ、止してくれよ。オレもうそんな歳じゃねえっすから」
あらあらぁ、と頭から手を離してくれたタッちゃんの母ちゃんが一歩後ろに下がって両手をポンと胸の前で合わせてニコニコ笑ってくる。
う、いつ見てもデケェ胸だな。
顔が真っ赤なままのオレの手を取ってきた。
ゴツゴツしたオレの指と違った、柔らかくてふっくらした女性らしい細い指。
「息子は上にいるから勝手に入っちゃってぇ。またぁ、お茶でも飲みながらぁ、今度ゆぅ〜っくりとお話しましょぉ? ね?」
そう言ってオレの手を離してひらひらと右手を振ってくる母ちゃんを見て、ドミニクでささくれだっていた心を癒しながら階段をトントンと上がって行った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「タッちゃん、入るぞ~! なんだよ面白いもの、って……テメェ、頭沸いてんのか?」
久しぶりに入ったタッちゃんの部屋は様変わりしていた。
というか、そこにいたタッちゃんが変わり果てちまっていた。
外にいるときはビシッとした服着てんのに、そこにいたタッちゃんは亜麻色のハッピを着てバンダナのようなハチマキを頭に巻いていた。
襟には黒糸で“妖精小姫”と刺繍してあるし、背中にもやっぱり黒糸で“i L♡VE ALMa”って刺繍してやがるんだよ。
「なんだよ、その気持ち悪ぃ格好は」
「気落ち悪いって。正装だよ~、アルマたんファンクラブの」
「はぁ?」
そうタッちゃんと掛け合っているうちにテレビから声が聞こえてきたからそっちを見る。
『さぁ、開会式も終わり、今年も始まります夏の全国
『やはり個人の部で大会二連覇を果たしているアルマ・カーマイン選手ですね。今年も彼女の姿を見ようと大勢の観客が初日から駆けつけています』
そうして観客席が映し出されるとオレは唖然とした。
だって、客の四割くらいがタッちゃんと同じ亜麻色のハッピとハチマキ姿だったからだ。
『アルマ・カーマイン選手は開会式が終わった後の第一試合に早速登場予定です』
「うげぇ、気持ちわりい。オタクばっかじゃねぇかよ」
「なんだと!? オタクっていうな!!――ぶべっ」
気持ち悪い格好で詰め寄ってくるタッちゃんを思わずどついてしまう。
手をプラプラとさせながら、タッちゃんのベッドに腰をかけるとちょうど第一試合の選手紹介が始まったようだった。
『東天方面シュワルツ
そうして画面にボウズ頭の男が映し出される。
男って言っても多分十五歳くらいのガキだ。
腕を組んでドヤ顔をしてるのが最高に気持ち悪かった。
『続きまして、中央士官学校
てか、実況の熱量が違いすぎんだろ。
……と思っていると選手のプロフィール画像が出てきてオレは思わず吹いちまった。
本を立てて隠れるようにサンドイッチにかじりついた女の子の頭に拳骨が突き刺さっていた。
ちょうど拳骨が落ちた直後らしく、小さい少女は満面の笑顔のまま顔がブレている。
『……なるほど、今年はこう来ましたか。ププッ』
『えー、今年も画像提供はクーデリアン・オッペンハイマーさんです』
会場中に笑い声が上がっている。
「アルマたんかわいいよアルマたん」
「ふぉぉ! 永久保存、永久保存!」
特にタッちゃんとお揃いのハッピを着ている奴らの盛り上がり方が半端なかった。
タッちゃんもテレビの前で鼻息を荒くして「アルマたんマジ神」と騒いでいる。
その様子にドン引きしながら気になっていた事を聞いてみた。
「てか、このアルマって女の子は強ぇの?」
テレビに向かって騒いでいたタッちゃんはピタッと止まると、オレの方を向いた。
その顔は怖いくらい真顔になっていた。
「……強いよ。てか、
そんな様子に、へ~、と生返事しながら、またテレビに顔を向ける。
まぁ、別に今日は暇だからいいか、と思いながら試合が始まるまでボケっとテレビを見ていたんだ。
そうこうしている内に、時間になったのか二体のロボットがテレビに映った。
めちゃくちゃ広い屋内の競技場の両端に分かれて立っている。
二体の間は一kmくらい。
間には崩れたビルのような障害物が多くあった。
テレビの画面に数字が映り、それが十から少なくなっていく。
そしてそれが〇になると、ブーーとサイレンがなり、画面に「試合開始」の文字が映った。
『さぁ、それでは第一試合開始です!――おっと! アルマ選手の騎体が地面に崩れ落ちているぞ! orzの姿勢になっている! 騎体トラブルでしょうか!?』
『あ、立ち上がって味方のベンチに向かって指を指してますね。なにか言っているようですが、コックピット内の映像と音声は出ますか?』
『……だから! 今年はカッコいい写真にしてってあれほど言ったじゃん! 何あれ!? この前の早弁してたの教官にバレた時のなんて誰が撮ってたの!!』
『お〜っと! アルマ選手、味方ベンチへの猛抗議だ!』
『私は可愛くて好きですがね……と言っている間にフレデリック選手が距離を詰めて来てますよ!』
『これは危ない! フレデリック選手がマシンガンを発砲! 直撃コースだ!!』
味方ベンチに向いて、相手に完全に背を向けていたはずなのに、相手の攻撃が当たる瞬間、アルマって子の騎体が一瞬で脱力したように地面に沈み、そのまま背中をつけて一回転。
膝立ちになった瞬間に背中のスラスターを起動してその場から飛び立つ。
放たれた弾は全て当たることがなかった。
上空に飛び立った騎体は大きく体をひねり、背中のスラスターを小刻みにふかしている。
それで軌道がフラフラと左右に揺れ、フレデリック騎の放ったマシンガンの弾が面白いようにアルマ騎の左右に逸れていってしまっている。
『出た〜!
『もはやアルマ選手の代名詞ですね。フレデリック選手の弾が全く当たりませんよ』
相手の放った弾は全て空を切り、アルマの騎体には一発も当たっていない。
そして、騎体の向きをクルクルと変えながら、ステップを踏むように地上をぴょんぴょん跳ねる。
その間に右腕に持った長いライフルで無造作に弾を放っていた。
「何なんだよ……何なんだよこれ!」
「ふふん。すげぇだろ俺のアルマたんは」
「うるせぇ! 黙ってろボケ!! 聞こえねぇだろ」
「ひどい~!!」
オレは言葉を失ったが、隣で意味わからん事をほざいてドヤ顔しているタッちゃんを思わず殴っていた。
ちっちゃい頃から色々な機械に囲まれていたから分かる。
かすかに画面から流れてくる駆動音聞きゃ、騎体のジェネレーターの唸り声が大きくなって、“ここだ!”というタイミングでアルマの騎体が動き始めているのが分かった。
発生したエネルギーの一番“美味しい所”が使えるタイミングでの始動。
言葉にすりゃあ簡単だ。
例えばバイクにだってある。エンジンの回転数を上げてシフトを変える瞬間。
エンジンの回転数とクラッチのタイミング。そのどちらもが完璧に合った時は言葉にならないくらい気持ちがいい。
オレだってそのタイミングなんて通り過ぎたあとで、さっきだったか、とわかる程度だ。
そんなタイミングにドンピシャで合わせるのはとんでもない神業だ。
しかしアルマって子は、そのタイミングをさっきから一度も外しゃしねぇ。
フレデリック騎はたまらず回避行動を取る。
脚部を前に出して、スラスターを全力でふかして急制動をかけると下に向かって真っ直ぐ落ちていった。
そして、地面で当たる瞬間に肩と足裏のスラスターを巧みに使い地面と水平に騎体を倒して、地面に沿うように高速でジグザグに、騎体をメチャクチャに動かしてライフル弾を躱そうとする。
でもな。
人型の機械っていうのはどうしても“息継ぎ”が出ちまう。
例えば、腕を振り上げてそれを止める瞬間。
例えば、騎体の向きをスラスターで無理矢理変える瞬間。
動きがピタッと止まってしまうんだ。
それでもほんの僅かコンマ数秒の話しだ。
その、騎体が“息継ぎ”をする瞬間にアルマ騎のライフル弾が相手の騎体に面白いように吸い込まれていく。
対して、アルマの騎体は息継ぎが全く無い。
脱力が上手いんだろうな。
騎体が硬直する瞬間に騎体の関節の動力を切り、止まる事なく次の動作に繋げている。
気持ち悪いくらいヌルヌル動く
『フレデリック騎、左腕大破判定。機能停止』
『フレデリック騎、頭部ユニット小破判定。カメラ性能二十%制限』
『フレデリック騎、両脚部中破判定。可動域を制限』
『フレデリック騎、右腕小破判定。可動域を三十%制限』
『フレデリック騎、バックパック中破判定。スラスター推力五十%制限』
画面に出てくるフレデリック騎の絶望的な状況。
模擬弾を使うこの大会は被弾場所の状況によって機能を制限して、破損の再現をしているようだった。
見ていてもわかるほどフレデリックの騎体の動きが悪くなった。
『うあぁぁぁぁぁぁぁ!!!』
画面から
だが、その声は悲痛な叫びじゃない。まだ、勝負を諦めていない戦士の雄叫びだ。
フレデリックはマシンガンを放り投げると
それに対してアルマがとった行動は――自分もライフルを捨てて両手にナイフを一本ずつ持ってフレデリック騎に向かってスラスター全開で突っ込んだ!
距離をとって遠間にライフルを撃ってりゃ勝てるだろうに。
とんでもねぇ胆力にオレは手に汗握っていた。
お互いにグングンと距離を詰める両騎。
フレデリックが残っていた右腕を前に突き出す。
それは正確にアルマの騎体のコックピットを捉えていた。
が、それが当たる瞬間アルマは騎体を沈める。
肩部と頭部の間を通り過ぎるナイフの刀身。
そして肩と背中のスラスターを器用に操作すると、
『フレデリック騎、コックピット大破。撃墜判定。勝者アルマ・カーマイン』
その瞬間、会場が大歓声に包まれた。
実況者も解説者も絶叫を上げている。
そして、オレは泣いていた。
もう、口からはさっきから「すげぇ」しか出ていなかった。
綺麗だったんだ。
とんでもなく綺麗な操縦だった。
そして、その操縦で動く
地上に降りてきたアルマの騎体に駆け寄ってくる整備士を見てオレは決心した。
小さい頃から曲がりなりにも機械をつついてきたんだ。
こんなに綺麗な操縦をする騎体を触りてぇ。
どんな造りをしているんだろ。どんな風にパーツが摩耗しているんだろう。
興味がどんどん心の底から湧いてきやがる。
「タッちゃん。オレ、
「は? 何言っちゃってんの白鬼――てちょい待ち! おい、待てって!」
そうなりゃモタモタなんてしてる時間はなかった。
タッちゃんの家から飛び出すとバイクに飛び乗って、家の工場に向かってバイクを急がせた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます