第15話 シャベル使いと愉快な仲間たち【5】
「これは……どうしましょうか」
「いやあ……?落とし穴を掘る、ってのは我ながら名案だと思ったんだけどな……」
「うむ。その案には私も賛同してしまったからな、キミ1人を責めるわけにはいかん。でもな……」
見事、落とし穴にすっぽり埋まった針葉樹を見て、3人で頭を悩ませる。
結論から言おう。
俺の策は、驚くほどすんなり成功した。
綺麗に
……それがまさか、こんな事になるとは。
「殴った瞬間にカウンターで葉っぱが飛んできて大ダメージ。穴に落ちた相手に攻撃する都合上、避ける事もできない。それだけでなく、奴は穴に入った瞬間から絶え間なく回復している気がするのだがね!?……これ、夢だったりしない?」
「しないですよ。現実を見たください、ダンプティさん。まだ一応、あのエフェクトが回復ではない可能性はありますが……まあ、期待するだけ無駄でしょうね」
詰み、だな……
回復とカウンターが合わさったせいで、もはやできる事は何もない。
一度ダンジョンに入り直して、1からやり直すしかないだろう。
穴に落ちた中ボスに一瞥して、正規の階段に向かう––––––––
事は叶わなかった。
視界にでかでかと表示されたレイド通知によって、我らの歩みは阻まれたのだ。
「「「––––––––は?」」」
【大規模ダンジョン”
”
そして、隠し要素は……まさか、木を地面に落とした事か?
一応、他のパーティーが今まさにこのダンジョンで何かを見つけた可能性も無くはないが……俺達が原因だと考える方が妥当だろう。
【レイドバトルが発生する為、ダンジョンから
地面が揺れる。
……困った、全くもって理解が追いつかないな!?
* * *
「ここは……ダンジョンの外か?そうだ、2人ともいるか?点呼!」
「モルモ、さっきの地震で少し酔いましたが無事です」
「キミが点呼するのかね!?……ダンプティ、無事だ」
良かった、パーティーが散り散りになったりはしていない様だ。
周囲を見渡す。
まだ1分すらも経っていないと思うのだが、既にそこそこの数のプレイヤーが集まっている。
つい先程まで俺達がいたダンジョンは、結界の様な何かに覆われて入れない。
「それにしても……まさかレイドバトルにリアルタイムで参加出来るとはな」
「ダンプティ氏、何か知っている事でも?」
「ああ、そういえばキミ達は知らないのか。あの伝説の10時間レイド事件の事を」
「10時間?しかも事件とは、何かあったのでしょうか?」
俺も初耳だ。
SNSで話題になっていた気もするが……ダンプティ氏が実際に知っているのなら、大人しく聞いた方が良いだろう。
「昔々、と言っても1ヶ月程前の話だな。その時にも、今回と同じようなワールドアナウンスが流れたのだ」
「それで?アナウンスに問題でもあったのか?」
「いや、違う。アナウンスにも、レイド自体にも問題はなかったのだよ。ただ、場所が悪すぎただけでな。なんと、レイドを引き起こした当事者であるパーティーとあと1人を除いて、開催位置に誰も辿り着けなかったのだよ!」
「それは……凄いですね、色々と。秘境的な場所で開催されてしまったのですか?」
「いや、単純にそのエリアの敵が強すぎただけだね。……だが、この事件の一番恐ろしいのはそこじゃない。その4人パーティと追加で来た1人の、計5人。そのたった5人で、実に10時間掛けてレイドボスを討伐してしまったのが一番頭のおかしい所なのだよ!」
何かダンプティ氏、ノリノリだな。
だが、それほどの大事件なら語りたくなるのも分かる気がする。
開催まではあと25分以上あるのに、現実でもそう見ない量の人が集まっている。
これだけの人が集まるレイドバトルだ。
カプリスも、ログインしているのならどこかにいるだろう。
そう思いながら、確認の為にフレンド欄を開く。
––––––––居ない。
あのアークトゥルス・オンライン狂いの人間が、よりにもよって日曜日の、しかもレアなイベントが開催される瞬間に限ってログインしていないとか、すごい笑える。
……こういうのに参加できないと結構凹むタイプなんだよな、あれ。
開始まで結構時間はあるし、仕方ない。
このゲームには一時離席の機能もある事だし、ちょっと呼びに行ってくるか。
「すみません2人とも、ちょっと離席します!」
「フルダイブ系のゲームをしていると、現実での食事や水分補給は忘れがちになりますからね。せっかくですので、私も離席しますね」
「……あれ、一旦離席する流れかね?仕方ない、それなら私も少しお花を摘んでくるとしよう!」
「いや、別にわざわざぼかさなくていいからな!?」
心残りなく初めてのレイドを楽しむ為にも、友人を呼びに現実へ帰る。
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