第13話 シャベル使いと愉快な仲間たち【3】
ミミック。
”宝箱に化ける”という性質の厄介さと、多くの場合その辺の雑魚より高く設定されているステータスから、古今東西のゲーマーを屠ってきた強敵だ。
……問題は、そんなミミックに絶賛頭を食われているダンプティ氏をどうやって救出するか、なのだが。
「見てないで助けてくれないか!?いや、キミ達が見てくれているのかすら私は確認できないのだがね!?」
「ダンプティさん……ご自分で倒す事はできないのですか?」
「何だね、その冷やかな声は!見ての通り頑張っているだろう!?」
「傍から見れば、ただミミックをつついて遊んでいる様にしか思えないぞ?」
「ぎゃあああああ!?これが!遊んでいる人間の!悲鳴に!聞こえるのかね!?」
うん、そろそろ助けるか。
このまま放っておいて死なれても困るし、流石にそれは申し訳ない。
ダンプティ氏の頭にがっちりと噛みついているミミックを、シャベルの先で思いっきり突き刺す。
––––––––が、効果は無い!
ミミックは以前として、ダンプティ氏の頭を食べたままだ!
「……はあ?うっわマジか、コイツもしかして物理無効?」
「本当ですか?では……”ダブル・ストライク”!……本当ですね、金属を殴っている様な感じです」
「嘘でしょ?まさかキミ達2人とも、物理攻撃しか出来ないとか……ないよね?」
「残念ながら私は……バランさん、確か魔法を使っていませんでしたか?」
「いや、あれは土を打ち出しているだけの物理攻撃だ。俺が魔術師っぽいのは見た目だけなんだよ、残念ながら」
いやあ、まさかミミックで詰むとは。
ダンプティ氏にはこのままミミックを引き受けてもらい、モルモさんと2人で進むしかないのでは?
一応色々なスキルを試してみるが……望みは薄いだろうしな。
「”アイテム・キャノン”……効果なし。じゃ……”スクリュー・ディグ”!」
「何だね!?あああ、何かが削られている音がする!幼少期、歯医者が怖かったのを思い出すな!?……え、本当にいつになったら止まるのだね?」
「待ってくれ、今無限に”シャベル・アーツ”のポイントが貯まっているんだ!このまま俺のMPが尽きるまで耐えていてくれないか?」
「え?……あ、すごい。サンドバック的なアレでしょうか?」
「やめてくれないか!?暗闇の中武器の音だけが響くのは中々に恐ろしいのだぞ!?……仕方ない、骨は拾ってくれよ?」
申し訳ない、ダンプティ氏。
こんな、人を犠牲にして手にいれる力なんて……
普通に嬉しい。強くなっていく事に勝る喜びなど存在しない。
ただまあ、これから先にも、魔法が必要になる瞬間があるかもしれない。
高い勉強代だったと、ダンプティ氏の命を諦めたその時––––––––
「とうっ!」
……飛んだ?ミミックを被ったまま?何故?
「”グレイト・フォール”!」
落ちた!?
しかも、床を思いっきり突き破って。多分、一番下の階層まで落ちたな。
モルモさんと顔を見合わせ、2人で人型に開いた床の穴に飛び込む。
「ダンプティ氏、生きてますかー」
床の崩れた1階の中央に、頭から刺さっているダンプティ氏へ声をかける。
……へんじがない。ただのしかばねのようだ。
いや、生きてはいると思うのだが……なんで埋まっているんだ?
だがしかし、埋まっているものを掘り出すのは俺の得意分野。
絶対に救い出してみせる––––––––!
「……死ぬかと思った。てか、このスキルを使って初めて死なずに済んだわ!」
「あ、経験値も入ってるし、スキルオーブも手に入ってる。って事は、ちゃんとミミックも倒せているみたいだな」
「良かったですね、ダンプティさん。まさか、床をぶち抜くとは思っていませんでしたが……埋まっていたのもスキルの効果ですか?」
「ははは。……超高火力の代わりに埋まって1人だと窒息するスキル、という訳だよ。……控えめに言ってふざけてるとは思わないかい!?」
新しく手に入れたスキルを意気揚々と使ったところ、1人地面に埋まって死を待つのみとなる……考えただけでゾッとする。
そんなふざけたスキルのお陰で今回は助かったので、馬鹿と変なデメリット付きスキルは使いよう、と言ったところか。
一見使い道のないものが輝く瞬間のあるゲームは良いゲーム、というのが俺の持論だ。
「スキルオーブも手に入りましたし、結果論ですが幸運だったのではないでしょうか。オーブ、早速ですが使ってみます?」
「お、賛成。俺、碌にダンジョンを攻略して来なかったからな……スキルが全然足りていない気がする」
「む……私はパスだ。どうせ今使っても碌なスキルが出ない気がするのでな。これ以上デメリット付きのパッシブスキルでも手に入ったら、いよいよ置物になってしまうわ!」
「そんなに変なスキルばかりなのか……?」
ダンプティ氏がどんなスキルを持っているのかは気になるが、今は自分のスキルが最重要だ。
できれば、面白くて使いやすいスキルが出て欲しい。それか、土を楽に入手できる様になるスキルだな。
祈りながら、オーブを使う。
「”リソイル・アルケミー”、ランクB。効果……特定の物質を土に変換する……?何だこれ、特定のって何なんだよ。説明文がふわっとしすぎて理解できねえ!」
「そもそも、リソイル自体造語じゃないかね?多分土に戻すとか、そんな感じの意味だとは思うが……バランよ、もしやキミも変なスキルを手に入れた被害者か?私と同類か!?」
「一緒にしないでくれ、土にできるなら俺にとっては有用だ!……きっとな。モルモさんはどうでしたか?」
「うーん、普通ですね。影の上だと移動速度が上がったり、敵に攻撃されにくくなったりするパッシブでしたから……ランクもEですし、効果量も低そうです」
もしかして、今回は俺の一人勝ちか?
まあ、勝ち負けとかそういう話ではないし、俺のスキルの使い道があるのかもこれから決まるのだが。
アルケミーと付いているせいで土9999個を要求してきたあのクソスキルを思い出すが、きっとこいつは違う筈だ!
俺は、このスキルの可能性に賭ける。
このダンジョンの壁や床は木製……というか、そもそもここは木の中だ。
ダンプティ氏のおかげで、ダンジョンの床や壁が壊れる事も分かっている。
そう。ダンジョンの構造は、プレイヤーが変更を加えられるのだ。
このスキルが、物質を土に変換できるというのなら!
……腐葉土とかもあるんだし、邪魔な木の壁も土に出来るのでは?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます