第12話

 近くに潜伏している組織の人間を、徹底的に殺して回った。追手はかからなかった。どうやら警察のほうも、彼の方法でずいぶんと殺し合いになっているらしい。ぶちぎれた市民 の怒りの行進がけっこう滑稽で、遠目におもしろかった。


 全員殺した。


 親を。組織を手にかける。独特の、感覚だった。くびきから解放される優越感。そして、自らの帰属先を失う、疎外感。よろこびと、かなしみ。彼も、同じような気持ちなのだろうか。違ってほしいなと思う。こんな気持ち。彼とは共有したくない。彼には笑っていてほしい。なにも気にせず、ねそべっててほしい。


 返り血と自分の血が、分からなくなった。周りも騒々しい。彼のほうも成功したらしい。よかった。よくないかもしれないけど。よかった。


 彼に会いに行こう。


 きっと、諸々を終えて、屋上でねそべってるはず。

 彼の作ってきた料理を、食べるんだ。美味しい、とか言って。しあわせそうに。わたしが食べてて。それで。それで。


 学校。


 彼は、2階と3階の間の踊り場で事切れていた。

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