第10話

 殺し合うか。観念して逃げるか。


 オーソドックスな二択。


「殺し合いたくないなぁ」


「同じ気持ちだよ」


 彼も。二択の前に立ち止まっている。


「わたしがいないと、この腐った義賊組織は成り立たない」


「俺が義賊組織をつぶさないと、警察は面子のために暴走していく」


 互いに。難しい局面。


「逃げよっか」


「それはそれでいい。わるくない選択だ」


「いや。ふたりで」


「ふたりで?」


「恋愛ドラマ的な」


 あれから、いくつか恋愛ドラマを見た。


「どちらかが死ぬ展開じゃねぇか」


「案外そうでもなかったよ」


 嘘。安っぽい恋愛ドラマでは誰も死なないけど。良いドラマほど。やはり片方が死ぬ。


「逃げようよ。ふたりで。しぬまで。とりあえず」

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