第8話

 警察との本格的な抗争が始まって、わたしはビルに閉じ込められた。後継なので、いちばん安全な場所にいなければならない。


 学校の屋上が、ビルの屋上になった。周りでいちばん高いビル。対空設備もある。わたしを守り閉じ込めておく、監獄。


 屋上で、眠りを待っている。

 簡単に眠れたら、どれだけいいだろうか。

 夜。

 街の景色。

 星の灯り。


 彼の料理がたべたい。


 ふらっと寄ってきて。

 わたしに食べ物をくれる。警察の犬。


 彼がいた。にこっと笑う。


 ここに彼がいるわけはないので、これは夢。

 つまりわたしは、ようやく屋上で眠れたことになる。

 彼に話しかけるけど、彼は答えない。笑ってるだけ。記憶の中のわたしが生み出した、架空の彼。だから言葉を持たない。笑うだけ。

 それでも、彼がわたしの心のなかにいるということがわかって、安心している。この暗澹とした監獄のようなビルの、このどうしようもない抗争のなかで。わたしは自我を持っている。彼のことを考えたりしてる。歳相応に、女の子してる。


 爆発音で、起きた。夢から醒める。

 彼の姿が消える。もういない。

 ビルの屋上だから、下の様子は分からない。


 まぁ、いいか。どうでも。


 危なくなったら、空経由で助けが来るだろうし。この監獄がなくなって、新しい監獄に移るだけ。


 彼に会えないだろうか。もう一度眠ってしまおうか。爆発音。もういちど。

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