第7話
こういうの。アニメでは見たことないけど。そんな気分ではある。
「一緒に逃げちゃおうか?」
彼が、信頼に値する同年代だったからか。同じ境遇というのが、まず少ない。だから惚れたのか。わたしも案外単細胞なのか。
それとも。
彼がそういう任務を帯びているのか。
「俺も似たようなことを考えてた」
と、いうことは。
「無理だよな」
「無理だよね」
同時に。結果だけが口から出てくる。
「腐ってはいるけど、義賊ではあるし。捨てようがない」
「曲がりなりにも警察だからな。これがなくなると後が面倒になる」
「おたがいに、損な役回りだね」
「ちょっと恋愛ドラマっぽいな」
「そうなの?」
「あ、見ないっていってたなそういえば」
「うん」
「こんな感じなんだよ、大体。経路は違うけど、なんか男と女が、なんとなく一緒になって、それで」
黙る彼。
「それで?」
「どっちかが死ぬ」
まじか。
「死ぬのか」
「死ぬ。そして、残った片方が悲しみを乗り越えて、そして新しい恋人を作って終わり」
「うわ」
「死と再生があればなんとかなるんだよ。大体はそんな感じだ」
ドラマも色々なんだな。アニメのほうがいいわ。
「死なないドラマはないの?」
「あるんじゃねぇの。俺もべつにそんなに見るわけじゃないし」
彼が寝そべる。
「今はほとんど見てない」
「なんで」
「ここが楽しいから。眠る前に屋上のことを考えて、それでなんとなく、眠れる」
彼の眠れないときの暇つぶしなのか。ドラマは。
「同じか」
「なにが?」
「わたしのアニメと。あなたのドラマ」
眠れない夜が多いので、アニメを見るようになった。
「ひとが死ぬアニメを見てると、眠れるような気がするの。自分が死んでいくように眠るのを、待っている」
「分かるなぁ。恋人の片方が死ぬ辺りで、そのなんとなくの悲しい感情で心を疲れさせて、夢が来るのを待ってる」
「似た者同士だね」
「まったくだ」
彼との屋上は、これが最後だった。
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