アッシュ
次に生まれたところは、幸いにも港町だった。ミャンファはようやく、海というものが何なのかを知った。
ミャンファを拾った漁師は、灰色の毛を持つミャンファにアッシュと名付け、家猫として育てようとしたが、ミャンファは家を抜け出して野猫になった。海が目の前にあるならば、これを渡らない選択肢はない。
ミャンファは人間たちの行動を注意深く観察し、どうやら船というものに乗り込めば、海を渡った向こう側へ行けることを知った。
ミャンファにとって海とは海でしかなく、とにかくその向こうに行けばユキエがいるのだと思っていた。ユキエが渡った海は日本海で、この時ミャンファが渡ろうとしていた海は大西洋だったのだが、もちろんそんなことは分からなかった。
海の向こうへ行くという船が来たので、ミャンファはそれに忍び込んだ。音を立てずに歩くことは得意だったし、夜目も利くので、侵入は夜間に問題なく完了した。
船の中で人間に見つかったのは誤算だったが、船上の人間たちはミャンファを歓迎した。
船旅は何か月にも渡った。ミャンファは船の上で、ねずみを捕まえて暮らした。人間たちはそれを喜び、ミャンファにジリィと名前を付けた。
ミャンファが、ミャンファという名前の次に気に入っていたのが、このジリィという名前だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます