アッシュ


 次に生まれたところは、幸いにも港町だった。ミャンファはようやく、海というものが何なのかを知った。


 ミャンファを拾った漁師は、灰色の毛を持つミャンファにアッシュと名付け、家猫として育てようとしたが、ミャンファは家を抜け出して野猫になった。海が目の前にあるならば、これを渡らない選択肢はない。


 ミャンファは人間たちの行動を注意深く観察し、どうやら船というものに乗り込めば、海を渡った向こう側へ行けることを知った。


 ミャンファにとって海とは海でしかなく、とにかくその向こうに行けばユキエがいるのだと思っていた。ユキエが渡った海は日本海で、この時ミャンファが渡ろうとしていた海は大西洋だったのだが、もちろんそんなことは分からなかった。


 海の向こうへ行くという船が来たので、ミャンファはそれに忍び込んだ。音を立てずに歩くことは得意だったし、夜目も利くので、侵入は夜間に問題なく完了した。

 船の中で人間に見つかったのは誤算だったが、船上の人間たちはミャンファを歓迎した。


 船旅は何か月にも渡った。ミャンファは船の上で、ねずみを捕まえて暮らした。人間たちはそれを喜び、ミャンファにジリィと名前を付けた。

 ミャンファが、ミャンファという名前の次に気に入っていたのが、このジリィという名前だった。

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