ナアラ
次にミャンファは、三色の毛を持って生まれた。兄弟たちがたくさんおり、母猫もいた。気候は暖かく、水にも食べるものにも困らなかった。
やがて兄弟たちもミャンファも成長し、ひとり立ちしてからは、ミャンファは決まった縄張りを持とうとせず、とにかくあちこち走り回った。海というものが何なのか知りたかったのだ。
ミャンファは誇り高く高潔な猫だった。もっと違った言い方をすれば、意地っ張りで強情で、驚くほど執念深い猫だった。
たいていの猫はそうかもしれない。一度こうすると強く決めたことを、自分で諦めたわけでもないのに、無理やりに取り上げられることが我慢ならなかったのだ。海を渡って、ユキエの膝に乗り、彼女が死ぬその瞬間まで温めてやるという誓いを、捨てるつもりなど毛頭なかった。
しかしどうやら三毛のミャンファの住むそばに、海というものはないようだった。人間たちの会話に耳をそばだててみても、彼らは海の話など少しもしないのだった。
ミャンファはあちこち走り回るのをやめて、人通りの多い場所を自分の縄張りにした。そして、道行く人々の声に耳を傾け続けた。
ちょうど居心地のよい場所があったので、ミャンファは一日中そこにいて、体を丸めて眠るふりをした。
ミャンファは知りようもなかったが、そこは人間たちが作った仏像の脚の間だった。人々は、お釈迦様の座禅の中にまどろむ猫を、たいへんありがたがって、ナアラと呼んで可愛がった。
ミャンファは四六時中撫でられたり、ちょっとした食べものを与えられたりした。
そんな日々を繰り返し、野猫にしては長く生きたある雨の日、ミャンファはお釈迦様の膝の上で、眠るようにたましいを手放したのだった。
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