すごく完成度の高い短編で、限られたページ数なのにキャラクターや世界観が丁寧に描かれているんです。雰囲気は穏やかでゆったりとしていて、一応ファンタジー設定ではあるものの、物語の焦点はあくまで二人の気持ちに置かれています。どうやって傷を支え合いながら乗り越えていくのか、そんな日常の中で少しずつ生まれていく変化を追っていると、文字一つひとつの温もりが伝わってくるようでした。
最初はただの友情とか家族っぽい百合かな、くらいに思っていたんですが、小川のせせらぎみたいに静かだった日常が、不意に大きな感情の波となって押し寄せてくる瞬間があって、思わず飲み込まれてしまいました。とても温かい作品だと思います。