第9話 ボッタクラレ&ぼったくる
翌日 先触れが、来たので用意していた貴姫としての装いをする。安物だけど華美な衣装に簪を付け花は、白いドクダミの花と葉っぱを差す。
衣装箱に椅子を乗せ落ち無いように荒縄で固定する。小さい卓も脇に固定。
娃鈴に威厳が、あるか聞いたら少し後ろに寄り掛かり顎を上げては、どうかと言われ寄り掛かったら椅子が、ぐらつき慌てて荒縄の紐を引き絞った。
諒俊と共に現れたのは、デップりと太った年齢不詳のニキビ顔の男。
人の居に輿で乗り入れて来た。
偉そうにこちらを見るので、上から偉そうな視線を返した。今日は諒俊を見下ろせる。
「貴姫さま に礼を申し上げます」男は立礼で、挨拶をする。
バシンわらわは、扇を卓に叩きつけ叫び。扇を差し向け命令した。「無礼者 わらわは、廃されても貴姫ぞ。膝を折り頭を下げよ」
男は慌てて膝を折るが、重い体は、引力に負け頭から崩れ落ちる。ゴィ〜ンこれは痛い。
5人いる付き人達が、巨体を支え起こそうと奮起し何とか膝立ちが、出来き改めて礼を述べた。
立ち上がるのもひと苦労2苦労してやっこらと荒い息を吐きながら体制を整える男の額は赤くなっている。良い音だったもん。
「離宮の勘定部を預かる。愚清と申します。皆様ご希望の品の入手に生活の改善を承っております。
聞けば 貴姫さま 銀粒の両替をご希望とか。早速 用意馳せ参じました。これに」
男が右手を軽く上げるとお付きの者が、持参している箱より布袋を取り出し卓に置く。
娃鈴に中身の枚数を確認させる。男はすんなりと銀粒を手に入れられると思っていたので、少し表情を強ばらせた。
「諒俊そちも数えよ」娃鈴は事前に指示したように銅貨を10枚づつ重ね並べてゆく。諒俊もそれに習い重ねた銅貨の柱は 6 … 。
「これはいかに?銀粒ひとつは、銅貨100枚のはずだか、どう見ても60枚しかないのう。残りをはよう」
「いえいえ貴姫さま…ここは離宮。手間賃を頂きませんと」
わらわは声を張り上げた。
「謀るで無い。幾らものを知らぬ廃姫なれど4割りの手数料など払わぬ。払っても銅貨5枚じゃ」
娃鈴は、もとより諒俊にも耳栓を渡してるのでふたりは、涼しい顔で側に付く。初めてわらわの金切り声を聞く者達は、目眩を起こし耳を押さえ崩れ膝を付く。
愚清もバランスを崩し頭から後ろに倒れる。ゴ〜ン〜これは痛い。
意識を失った愚清の介抱で、交渉は一時中断。その間に諒俊が、残りの宦官と相談。手数料5枚で両替は、終わった。ついでにもうひとつ粒を両替。しばらくは間に合うだろう。
目を覚ました愚清に諒俊が、何か囁くと苦虫を噛んだような顔でわらわを見て渋々礼をした。交渉は成立。勝ったぁ。さてもうひと芝居。
「愚清 そなたお通じは、大丈夫か?
わらわの縁者に糖の病持ちが、居ったのじがな。そなたの様に肥えて足先が、腐り・指も痺れ筆も握れず…眼も霞んで最後は、心の臓が破裂して死んだのよ」
いろいろ心当たりが、有りそうな愚清は、脂ぎった顔を拭きながら曖昧な答え返すだけだった。
「おおそうじゃ…わらわが、何時も飲んでる十薬茶が、糖の病に効くのじゃ。娃鈴…愚清に茶を」
直ぐに3杯の茶器が、それぞれに置かれ・2つ寄せた丸太椅子に座った愚清が、茶器の中を覗き匂いを確かめ眉をひそめるが、諒俊が飲んでいるのを見て一口飲みむせる。わらわも飲んで叫ぶ。
「苦がぁ〜これは原液じゃ。娃鈴〜原液じゃぞ」今朝じっくり煮出したドクダミ茶は、濃く苦く不味かった。すいませんと丼入りの薄めた茶をそれぞれに置き娃鈴 退場。
「すまんのう茶器が、無くて」
赤いデコに皺を寄せた愚清は、恐る恐る飲み始める。その間にじっくり十薬の効能を説明。繰り返されるコマーシャル洗脳効果。十薬=ドクダミの良さを声高に力説・今なら一袋銅貨10枚だが、初回購入特典として2袋で銅貨12枚とオウムの様に繰り返してると逃げ出したい愚清は、あっさり銅貨12枚を出した。
ほっとし退出する愚清達を見送る為に諒俊の肩を借り高い椅子から降りる。
愚清の横に並び その緩んだ出腹をツンツン突っつき「お主…妊娠しておるか?双子でも入っていそうな腹だな。さぞかし毎日旨いものを食べているのだろう。早死にしたいなら止めぬが、旨いものは、少し控えろ。後は歩け」
強制的にわらわが、先に輿を送り返したので、愚清は巨体を揺らしヨチヨチと帰って行った。もう来なくていいぞ。
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「ジュウヤクは、便秘・吹き出ものなどに効果が、あります。毎日少しずつお飲みになれば、効果も出ましょう。原料ですか?日陰の何処にでも生えてるドクダミですよ。いまの季節小さい白い花を咲かせている…そうあれです。天日に干しお茶に…これで銅貨10枚?」離宮の医者は呆れた顔をするが、ドクダミは、名前の様に体内の毒素を尿と流す効果は、あると進めてくれた。
十薬もといドクダミ茶を飲み始めて2ヶ月強制的に買わされた。茶が終る頃 愚清の肌荒れが、少し良くなりあれほど苦しんだ便秘も改善されていた。
愚清の使いが、銅貨50枚を持参 5袋のお買い上げ〜タンポポ茶を1袋おまけに付けた。
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