第8話 冷宮でマイペース

10日が過ぎ今日も雑草刈りと畑の掘り起こし・薪の配達が、来てもすぐに気付くようにと草刈りは、門の横・城壁に沿って突き進むぅ。


立木の下・梅の実が、沢山落ちていた。落ちたのは食べれ無いが、熟れた梅が、高みからわらわを呼んでいる。


娃鈴にザルを取りに行かせ残っている実に手を伸ばすが、届かない。ジャンプしてもわずかに指先が、枝を揺らすだけだ。裸足になり再度ジャンプ。


「薪を持って参りました…んっ」

使いの宦官達が、荷車を引く下働きとやって来た。柳に飛び付く蛙の如く梅の枝に手を伸ばし華麗にジャンプするわらわを見て皺宦官は問う。


「貴姫さま…?」


「いかにも奏麗華である。丁度良いそなたこれを取れ」わらわを爪先から布帽子を被った頭までしげしげと見つめ呟く。


「随分と様変わりなされて、御息災の様で何よりでございます」


案内宦官が、荷車の横で下を向き笑いを堪えている。笑いたければ素直に笑えばよいものを。


晴天が続き毎日外で、元気に草刈りに畑仕事と精を出すわらわ達の肌は、日に焼け健康そのものだ。少しだけ筋肉も付いたかもしれない。


何か言いたそうにする皺宦官。娃鈴が、ザルを持って来たので居の薪置き場への案内を頼みわらわは、再び蛙になる。びょん〜


盛大なため息と一緒に影が、近寄り梅の枝が、降りて来る。案内宦官も手伝ってくれて50個ほど取れた。後は鳥達にくれてやろう。


話があると言う宦官達を居に招き入れ椅子に座らせる。最初は辞退していたが、そなた達が、座らないならわらわも立っていると脅すと壁に並べた背の低い丸太椅子を指しあちらをお借り致しますと近くに運んで座った。背が高い方は、座りずらそうに両足を後ろに流す。わらわ側から見たら膝立ちに見えるが、座っておる。次はも少し高い椅子を置いて置こう。それよりもわらわの椅子を高くするか。


「これは熟れ過ぎておりますが」

「よい熱湯を掛け・塩漬けにし雨季が、過ぎたら種を抜き日に干し保存出来よう。その前に食べ尽くすと思うが…廃姫とは、食事も粗末になるのだな」思った事を伝えて見た。


「朝廷の加護が、無くなり・粥も薪も温情でございます」

「それ以上を望むなら自分で何とかしろか。白い木綿布と糸・芋の苗を所望する」銀粒を渡すと困った顔をされた。


「なんと廃宮は物価が、高いと申すか」更に手元の巾着袋より銀粒を出そうとすれば、慌てた2人に止められる。


「麗華さまお止め(おやめ)ください。下位の者の前で貫を出すなどしかも銀など決して見せては、いけません」


「なぜじゃ?欲しいければどうする」「綿布と苗なら銅貨10枚あれば十分でしょう」「わらわは銅貨を持ち合わせておらぬ。そうじゃ そなた銀粒と交換せよ」


「わたくしも銅貨100枚は、持っておりませぬ」「なら何とする?ここは、物も不自由するのか。それとも絹の衣か玉の簪と交換か」


後宮ドラマで風邪を引いた廃妃に言葉巧みにすり寄り金の簪と粉薬を取り替えた宦官の悪い顔が、浮かぶ。


「ぎょく…絹。極端過ぎる」


皺宦官が、額を押さえた。案内宦官が、やんわりと子供に伝える様に話す。確かにわらわは、実家と後宮しか知らぬ。有るのは、前世の知識のみだ。


「木綿布は、縫い処に芋苗は、外から求めますのでお時間を頂きます。綿布や炭など後宮で使われている物は、国の物で、厳しく在庫を管理しておりますが、申請し代価を支払えば、適正な値で買えましょう。苗など外から手に入れる物は、人の手を渡る為手間賃も考えて多めに頂きます」


「あいわかった。だが両替は、どうする」「此度はわたしが、建て替えお品が、届いたら頂きましょう」


「両替したいが、どうする」「その事と関連する事をご忠告に参りました。両替は明日出来ましょう。伝えておきます」


聞けば皺の上司に当たる愚清が、明日・廃姫に挨拶参りに行くと言い出した。


狙いは、ものを知らぬ廃姫の懐具合と実家などの後ろ楯の確認らしい。言葉優しく取り入れば、油田のごとく富が、吸い取れよう。


が…わらわは、下に玉石を眠らせた枯れ井戸になろうぞ。今の奏家では、後ろ楯も無理だし。


その後もあれこれ打ち合わせをして皺宦官が、立ち上がり挨拶をする。

何か〜忘れて〜そうじゃ。


「そこな額に皺のある。背の高い男。ぬしの名は、何と申す」くるり➰と振り向いた皺の深い男は、呆れた顔で、頭を下げる。


「諒俊と申します」隣に視線を向ければ「清近でございます。お品が届きましたらご連絡いたします」


「うむ…奏麗華と娃鈴じゃ。これからも力になってくれ」ふたりを見送り

明日の仕掛けの相談をしょう。まずは開けて困る衣装箱を背の高い椅子にリメイクじゃ。


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