第13話 国の闇
「遅かったな」
日も暮れ初めて、俺が街の方に行ってから大分経っていた。
「色々あってな」
クレアと言う護衛に口止めされてるし、何処に耳があるか分からないから言わない方がいいだろ、騒ぎにもなるだろうし。
「そお、まぁいいわ」
マヤはまだ子供と遊んでるみたいだ、随分と仲良くなったみたいで楽しそうに話してる。
「そろそろ帰らないと……」
「そおだね、夜になったら危ないから」
「あ、そおだね、暗くなる前に帰ったほうがいいね」
此処には魔獣対策が何もされて無い、街の方に魔獣避けの外壁はあるけど此処はその外側、何にも守られてない。
「お姉ちゃん、まだこの国に居る?」
「うん、まだ居るよ」
「本当!? やったぁ!」
「じゃあ、マヤお姉ちゃんまた遊んでね」
「うん、遊ぼ!」
子供達がみんな一斉に何処かへ行く。
「またね!」
「バイバイ!」
最後まで楽しそうに、手を振りながら歩いて帰って行く。
「随分と懐かれたな」
「うん――此処の子供達みんな親を知らないんだって大人は、相手をしてくれないって言ってた」
親を知らないか、みんな自分が生きて行くのに精一杯なんだろ、だから子供の世話なんてしてられないから放置する。
良くある話しだ……
「でもね、プルトお爺ちゃんて言う人が養ってくれるらしいの、みんなその人の所で暮らしてるみたい」
「そうか」
たまに居る。
自分よりも他人を優先する優しい人、そして一番苦労を抱え込む、馬鹿な人。
「何処にでも、優しい人は居るんですね」
「うん」
俺達も、子供達が見えなくなってから宿に行く事にした。
大分食事をしてこなかったので、宿に着くなり食事をする事にした。
食堂に行くとそれなりに人が居て騒がしかった、テーブルに座り注文した食事を待っているとメラニアに居たハゲが此方に向かって来た。
「よお、また会ったな!」
「あ、ハゲだ」
「お前、どうして此処にいる?」
冒険者には、大体二種類いて一箇所に止まりその周辺だけの仕事を受ける者と、色々な所を回って行き当たりバッタリの仕事をする者がいる。
どちらかと言うと後者の方が少ない。
ハゲは後者だろう、だからメラニアから近い大きな所だと此処位しか無いから会うのは別におかしくない。
「まぁ良いじゃねえか、俺はグリードお前らは?」
「シュウ」
「私はマヤ」
「……」
クリスがグリードとか言うハゲを怪しんでいる。
急に話しかけられたら、何か企んでいると思うのは当然だけどな。
「で、そこの金髪の嬢ちゃんは?」
「クリス」
不機嫌そうに答える。
「お前ら、スラムのガキ共と一緒に居ただろ」
「居たけど……」
見ていたのか。
「此処で会ったのも何かの縁だ、だから言っておくが、あまり関わらない方がいいぜ?」
「どう言う事?」
昼間、怪しい三人組が此方を監視している様だったけど何かあるのか?
「スラムのガキが突然消えるって言う噂、聞いた事あるだろ?」
クリスがトレアルに着く前にそんな事言ってたな。
「何でもその消える事件、この国のお偉いさんが関わってるらしいぜ、だからあまり関わらない方が身の為だぜ」
お偉いさん、貴族か王族の仕業って事だよな。
何で此奴はそんな事分かるんだ。
「どうしてあなたがそんな事知ってるのよ」
「俺はただ盗み聞きしただけだから詳しくわ知らねーよ」
盗み聞きしただけか――信用出来る、出来ないは別としてあまり深入りしない方が良さそうだな。
「ま、そう言う事だ、年長者の助言は聞いとくもんだぜ!」
それだけ言って仲間の居る所に戻って行った。
「子供達が行方不明になる噂、やっぱり本当だったんだね」
「でも、何にも守られて無いあんな所に住んでいたら魔獣に襲われたっておかしく無いのにどうして、消えた、なのでしょうかね」
確かに魔獣の被害だったら、血や遺体が残る筈だから消えるなんて言われ方しないと思う。
「神隠しなんてあり得ない、十中八九、人が関わって居るんだろうな」
「……ねぇ、私達でその原因、調べてみない?」
マヤがそんな事言いそうな予感はあった。
正直グリードが言った様に深入りしない方が良いだろと思うが、スラムの子供達と関係を持ってしまって情がわいたんだろ、マヤの事だ、助けたいと思うのは仕方ない。
「私も調べたいです!」
まぁ、クリスはマヤの言う事なら何でもしそうだから否定しないと思っていた。
「いいかな? シュウ……」
「急ぐ旅でも無いし、良いんじゃないのか」
もし何かあっても俺とクリスなら早々危なくなる事も無いし、マヤなんてもってのほかだ、むしろ本気を出された方が騒ぎになる。
「ただしマヤ、メラニアの時みたいに、あまり本気で魔力使うなよ、国中が騒ぎになるから」
「分かった!」
普通魔力は、ある程度修練を積んだ者なら感じる事は出来るが、視覚化する程の魔力なんて聞いた事ない、そんな物この国で見せたら大騒ぎどころでは済まなくなるのは、目に見えてる。
だから今回は、自重してもらおう。
こうして俺達は、明日の予定を決めて眠りに着くのだった。
案の定酒を飲んでたマヤは潰れた、クリスもずっとマヤを眺めながら飲んでいたが潰れる程飲んでいなかったので、今回はクリスにマヤを寝室まで運んでもらった。
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