第11話 不穏

 スラム街の子供達にお使いを頼まれて俺達は、トレアル国に入国した。

 予想は付いていたがこの国の人達は、中央に近づくに連れ、身なりや並んでいる店の雰囲気も変わって来る。

通行人に話しを聞いて見たら、基本的に旅人や行商人は王城近くの貴族街からは出入り禁止だそうで、位の高い人物や名が知れ渡っている有名人しか入れないそおだ。


「このお金、どうやって手に入れたんでしょうね?」


 クリスがマヤの手に持っている、子供達のお金を覗くように見る

 

「ん〜何かお金になる物を売ってたりとか?」


 確かに金の出所が分からない、スラムの人達は働き口がないと聞いてる、他の手段で考えると金目の物を見つけて売るか、大人達が何か金になる事をしているのかどちらかだよな。


「あ! あそこいいんじゃない、色々売ってそうだし保存も効きそう」


 マヤが指差した先には、路上に屋台が並んでいて色々な小物やすぐに食べれそうな食材が売っている。

 でも貰った金では充分な食べ物は買えない、子供は五人居たけど、まだ他にも居そうだから――まぁ俺は金に困ってないし余分に買っていくか。


「ねぇ、子供達に持っていく食べ物何だけど私が持ってるお金も使っちゃていいよね?」


 マヤも俺と同じ考えだったのか……

 けどマヤはメラニアの街で換金した金しか持ってないからそこまで余裕は無いはず。


「いや、俺が出すよ、マヤは自分の旅支度に使いな」

「でも……」

「今までそれなりに魔獣を討伐して来たから。余裕のある方が出せば良い」

「ありがとう!」

「…………私はお金、持って無いわよ」

「知ってる」


 あんな行き倒れてたクリスが金を持ってる訳無いのは知ってるから期待してない。


「魔獣売ればお金手に入るけど……」

「そこまでの金額にはならないだろ、だから気にするな」

「そお……」

 

 そうして俺達は子供達にあげる食べ物を買い、街中を出て行く。

 まぁ早い方がいいだろ、見た感じみんな空腹そうだから。


 スラム街に着いて少し探したらさっきの子供達を見つけられた、やっぱり増えてる、十人位に。

 俺達に気付いたのか一斉に近寄って来る。


「わぁ〜沢山ある!」

「すご〜い」

「おいしそ〜」

「みんなの分、ちゃんとあるから落ち着いて食べてね!」


 マヤが1人1人に食べ物を配って行って、みんな空腹だったのか物凄い勢いで食べていく。

 そう言えばさっきまでは大人もちらほら見えて居たが今は、周りに1人も居ない、何かあるのか?


「シュウ」

「どうした?」

「街の方、凄い怪しそうな奴がこっちを監視してる」


 クリスに言われ、横目に確認して見る。

 確かに居る、三人、フードを深く被って居るせいで顔は良く見えないが体格的に男だろ武器は携帯して無いようだが隠してる可能性もある。

 スラムの子供達に食べ物をあげるのは、まずかったのか?


「武器は持って無い様だし、今何かして来る事は無いだろ」

「……見えるの?」

「生まれつき目はいいんでね」

「そお、まぁ追ってくる様だったらそん時はその時ね」


 あいつらの目的が俺達だったら、その時対処すれば良いだろう、目的が子供達だとしても今は、何も出来ない。


 結構買い込んだのにもお全部食べ終わってる、余程お腹が空いて居たんだろう。

 今はマヤが魔法で色々な物を作って、子供達と遊んでる。

 時間が掛かりそうなので此処をクリスに任せて俺は換金や宿の予約を済ませる事にした。


「何処か行ったか」


 先ほどまで居た怪しい三人はもう居なかった、俺達が居たから諦めたのか、それともただの偵察だったのか分からないが気に留めておこう。



 

 換金を終え宿の予約も取れたのでマヤ達の所に戻ろうと歩いて居ると。


「あ! ごめんなさい!」

「いや、此方こそ」


 歩いて居ると急に横からぶつかって来た。

 俺は鍛えてるから倒れたりしないが当たって来た人が倒れてしまった。


「あの、大丈夫ですか?」

「は、はい大丈夫です」

「!?」


 長い金色の髪に王族を表す翡翠色の瞳、ぶつかって来たのはこの大陸で最も力を持つ国、中央大国ヴェストリア国王の1人娘、ミレイア・ヴェストリアだった。

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