第7話 目的

 アルガンタが姿を消しマヤの様子を見に海辺に向かう途中で魔力の気配が無くなった。そして海辺に1人で立っている。

 水龍を何とか出来たんだろ、まぁあいつなら何とか出来そうな気はしてたけど、……それよりも赤の入れ墨のアルガンタ、あついが最初から本気で戦っていたら勝てなかった。

 俺は最初から本気で魔法を使いながら戦っていた、一か八かの魔力を使い切っての攻撃すら大したダメージを与えられなかった。


 これが赤い入れ墨をしたメフィストの力、あの赤髪とやり合うには、もっと力を付ける必要がある。

 そんな事を考えながら海辺へ歩いていると、マヤがこちらに気付いたのか走って向かって来る。


「シュウ!大丈夫?凄い顔色悪いけど…」

「魔力切れなだけだ」

「そっか……メフィストはどうしたの?」

「……逃げられた。そっちはどうなった?」

「水龍は帰って行ったよ」


 魔力切れで体が重い、頭痛もする、正直立っているのもきつい、けどこのまま此処にいたら色々と面倒くさそうなので街を出たい。


「マヤ、このままメラニアを出る」

「私はいいけど……シュウは大丈夫なの?もし良かったら私、魔力を他人に渡せるからあげるよ?」

「平気だ」

「…………無理だと思ったら言ってね」


 心配そうな顔で言ってる、やるせない気持ちと自分の無力さに押し潰されそうになる。

 もっと強くなりたい。





 


「アルガンタ、龍鱗はどうした?」


 地下深く、地中に開けられた街一個分はある広い空間、魔法により外界と同じ明るさを持つ場所。

 建物が複数あり一際大きい館、そこに黒い入れ墨をした女が座っている。


「すまねぇミラさん、水龍を呼び出す事は出来たんだが化け物みてぇに強い奴がいて出来なかった」


 長い黒髪に黒い瞳、左腕には魔族の印である魔印があり、服装もほとんど黒なのでミラと言う女性はカラスと言う異名がある。

 カラスが一度敵だと見なした人間は、形すら残らないと言われるほど有名なメフィスト。


「……お前が化け物と言うからには相当強いのか、私とそいつどっちが強い?」

「カラスと名高いあんたでも勝てないと思うぜ」

「そうか…」


 考え込むように手を顎に当てて考える。


「あんまり良く見えなかったんだかあいつ、魔族だぜ、去り際見たんだ、右頬から首にかけて魔印の様な物があった」

「魔族か……」

「どうする?」


 少しの間考える素振りを見せ薄く笑いながら。


「いや……何もしなくていい、いずれ会えるだろうからな」

「あいよ…………後もう一つ、あまり関係無いと思うんだが」

「何だ?」

「さっき言ってた魔族と一緒に居た人間が居たんだけどよ、そいつが赤墨で赤髪の男を探してるっぽいんだけど……知ってるか?」


 メフィストは各地に点在していて構成員も多い、全員が全員を把握してる者は少ない、招集がある訳でも無いし、集まる機会も無いので知るすべは無い、だが黒墨は何年かに一度ボスの招集があるのでそこで情報交換が行われているらしく赤墨以下の者たちより情報を持っている。


「いや……知らないな」


 目を逸らす、何か訳あり何だと思い、アルガンタは深入りしたく無いので流す。


「そっか……じゃあおれは行くぜ」

「あぁ、ご苦労」


 そお言うと、アルガンタは姿を消しミラだけが部屋で1人、座って考え込む。


「まさかな……」


 

 


 




 シュウとマヤが街から出て少し経ってから街の人達は、みんな水龍の姿が消えたのと領主が安全だと確認したので帰って行った。

被害もさほど無く一箇所戦闘を行って地面がボロボロになっ所は、マヤの魔法で治したので騒ぎが起こる前と同じ状態になっている。


 みんな何事も無くホッとして、帰っていき、いつも通りの街に戻っていく。


 1人街の外を眺めている冒険者がいた。


「もう、行っちゃったんでしょうか」

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