第5話
荘厳な雰囲気を放つ扉の前に着き、重々しく押し開ける。部屋の中へ入るなり連行していた意識の無い男を傍に座らせ、「お願いします」と言って離れた。即座に男の周囲に陣が張られ、その場で光の檻が作られ収監された。
「お疲れ様、アール」
「遅くなりました、すみません。件の魔珠もエレンたちから預かっています」
部屋の奥から一人の女性が出迎える。この組織「ガーデン」の総指揮を務め、現状この
「……『起きなさい』」
「っ!?」
気絶していた男が、セラヴィの一言により瞬時に目を覚ます。男の目が明らかに動揺していると見てわかる。何が起きているかさえ、理解できていないようだった。セラヴィは光の壁越しに男の目の前に立つと、目線を合わせるように膝をついた。
「あなたにこの魔珠を取ってくるよう指示したのは、『エデン』で、あなたは彼らのブローカーで間違いないわね?」
「なっ……! っ……」
(黙秘するつもりか……だが)
「……残念だけど、私に嘘や黙秘は効かないわよ。『質問に答えて』」
「はい、そうです……っ!? 勝手に言葉が……!」
「答えてくれてありがとう。もう一つ質問ね。『いつから見ているの、グラッツ』」
「!」
「あ…………ははっ、そこまでお見通しとは恐れ入った」
「グラッツ……」
ガーデンに対する反政府組織『エデン』。そのブローカーであることを自白した男を通して再び、先程の人物が言葉を紡いだ。アールはその声を聴くなり、険しい表情を見せる。グラッツと呼ばれた人物は、すらすらと話し始めた。
「あぁ、そんな怖い顔するなよ、アール。この状態では俺も何もしない、というかできないさ。それでいつから見ていたか、って? そりゃもう最初からだよ」
「っ!」
「あなた……今回は何が目的?」
「ん? そこはわからなかったかい? オレは元から目的は一つしかない。女神の写し子……エレンただ一人だよ」
「誰がお前なんかに……っ」
「アール、落ち着いて。流されないで。……言っておくけど、彼女に写し子としての自覚は無いし、当然力も発揮していない。そう簡単に利用できると思わないことね」
珍しく怒りを露わにするアールを宥めながら、司令官らしく冷静に対応するセラヴィ。しかしそんな彼女の言葉にも、グラッツは薄ら笑いを浮かべて聞いている。
「おや、司令官ともあろうお方がそこまでの知識とは。力の発現が無くとも、写し子はその存在だけで価値がある」
「っ!?」
「……何がしたい」
「あー、もちろん、アールでもいいんだが……お前じゃあ足りない」
「……」
「だってそうだろう? お前は……」
「司令官、もう一度意識遮断の許可を」
「こればかりは仕方ないわね……許可します」
「あっ、おい……っ」
セラヴィが許可を出すと同時に光の壁が消え、グラッツが言い終えるより先に意識遮断を実行するアール。男は再び気を失い倒れた。
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