第3話


 男が気を失ったことを再度確認したアールは、手早く魔法で拘束し大花盤ボートへ乗せて固定した。


「容疑者の意識遮断完了。本部へ連行します」

「盗まれていた魔珠も無事回収しました。こちらはどうされますか? 司令官」

『みんなお疲れさま。魔珠も一度本部に持って帰ってきてくれる? 異常がないか精査しないといけないから』

「わかりました。このまま帰還します」

「そしたらエレン、シェリー。俺の大花盤に一緒に乗ってくれ。何もないと思うが念のため、これの監視をしてほしい」


 そう言いながら、拘束してある男を指しながら二人に提案するアール。それにはエレンたちも納得して、彼の後方に乗り込んだ。その際、アールは自分たちの遙か後方に何かを感じ取ったのか、睨むように見つめるも直ぐに踵を返し、ガーデン本部への帰路についた。先ほどの気配に杞憂だったか、などと考えつつ、道中特に何も起こらずに三人は本部へ帰還した。


「お姉ちゃん、お帰りなさい!」

「ただいま、セーラ」

「アールさんにシェリーさんも、お帰りなさい!」

「あぁ、ただいま」

「セーラちゃんただいま~! お出迎え嬉しい♪」

「うわっその人、もしかして気絶させたんですか…?」

「まあな。少し危険な奴だったから、司令官に了承してもらったよ」


 明るい声と共に三人を出迎えたのは、エレンの妹・セーラだ。拘束されている男に気付くなり、わかりやすいくらいに引いている。意識が無いとはいえ、容疑者との対面に慣れないのか、エレンの後ろに隠れては男の様子を用心深く観察を始めた。


「セーラ、大丈夫よ。アールがしっかり意識遮断しているから、しばらくは起きないでしょうし、拘束魔法だってそんなすぐに解けな…」

「うわぁあああぁあ!! 目開いた!!」

「えっ!?」

「…なんだと?」


 突然叫んだセーラの言うとおり、今まで気絶していた男が目を覚ましていた。しかし、抵抗するわけでもなく、虚ろな目でゆらゆらと視線を泳がせている。その不気味な光景に身構えていると、男がゆっくりと言葉を発した。その声は本人のものではなく、明らかに誰かが男の体を使って発せられている声だった。


「…近いうちに……必ず、手に…入れる……写し、子…力……」

(この声…あいつか)

、って? アール?」

「…今は気にしなくていい。この件も含めて、司令官には俺から報告してくる。二人とも、早めに休んでおけよ」

「あっ…えぇ、わかったわ。ありがとう」

「…行っちゃったわね、アールさん。なんかあからさまに怪しいんですけど!」

「サラッとお姉ちゃんの訊いたこと受け流しましたよね!? 何ですかあれ!?」


 声が途切れた途端、また意識を失った男を手早く連行して行ったアールに対し、シェリーとセーラは不満を爆発させた。

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