第3話

「ね、お姉ちゃんは今こうして元気にまー君に抱きついてるんだよ。だからもう泣くのはおしまい。お父さんもお母さんも心配してるよ。」


ダメだ。涙が止まらない。

これ以上泣いて結衣お姉さんを心配させたらいけないのに、涙が乾いてくれない。


「もう、まー君はしょうがないなぁ。ちょっと待っててね。」


お姉さんは一旦部屋から出ていった。すぐに戻ってきたけど。


「な、なんて…言ってきたの…?」


「お父さんとお母さんに、ちょっと具合が悪いみたいだから、今日は私が見ててあげますね。って言ったの。」


「…まーくん君も怖い夢見て泣き出した、なんて、あんまり人に知られたくないだろうから。」


結衣お姉さん、やっぱり聖人すぎるな…。


「それにお姉さんがいなくなって泣いちゃうんなら、お姉さんがまー君の気が済むまで隣でいてあげればまー君も泣き止むと思うんだ。」


「行ってくるぞー!」「行ってきます!マサトを頼むわね。」


両親の声が聞こえた。もうそんな時間だったのか。

結局その日は昼前までお姉さんに抱っこされて泣いてしまった。迷惑かけてごめんなさい。


僕が泣き止んだことを確認したお姉さんは

「お昼ご飯を作ってきてあげるからね。」と言って自分の部屋に戻っていった。


1人になった僕は今の状況を整理した。

今日は2017年の4月16日、日曜日だ。

自分は小学5年生、結衣お姉さんがいなくなったあの春まで丸々2年ほどある。


「あの頃はまだ自分の感情をよくわかってなかったけど、今ならお姉さんにちゃんと言える。好k…」



ガチャ



「まー君!ご飯できたよ!」


危なかった。


お姉さんの作るご飯は美味しい。今日のお昼はチャーハンだった。やばい、また涙が…。


今回はさすがにこらえた。


「結衣お姉さん!これ美味しい!大好き!!」


とりあえず最大限の感謝を言った。


午後は一緒にゲームをしてあそんだり、テレビを見たりした。


そして午後7時、そろそろ母親が帰ってくる時間らしいのでお姉さんは帰ることになった。


「お姉さんはどこにも行かないからね。もう今日みたいにお父さんとお母さんを困らせちゃダメだよ。」


「うん。分かった。」


今度はどこにも行かせない。それでも行くなら僕も行く。

今度は絶対にお姉さんを繋ぎ止めてみせる…。


第3話 [完]

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