三章 血
彼らとの生活は新しい発見があった。
同じ『ゲレ』を祖先に持っていたとしても容姿や能力、性格も様々。遺伝の伝達がいかに複雑かがみてとれた。
一つだけ彼らと同調できるものは、校長こと、大叔父さんの長い話。これには俺も彼らもうんざりだった。
「三ヶ日、お前も坊主にしろよ! 連対責任だろ!」
AGC(オグリ)が
そもそも頭を刈られたのは髪の色を染めてたからであって、グラウンドを勝手に使ったことの罰ではない。
「俺は関係ないだろ!」
「まあ、坊主もサッカー強豪校みたいでいいけど」
勝手に喚いて、勝手に納得する。単細胞生物だ。同じ祖先を持つと思うとゾッとする。
遺伝なんて本当にあるのか?
実際、アスリートの二世として活躍している選手は、そう多くはない。やはり環境や性格、他の要素の影響が強いのではないか?
彼らとの生活も一年が経ち、進級テストがおこなわれた。あきらかに能力が低いもの。遺伝の伝達が弱いものはここで退学となった。なによりもポテンシャルが重要視された。
二年生になり一人の生徒に注目する。深井。彼は「イーグルアイ」。俯瞰でフィールドを見渡す能力を持っている。 2Dではなく3D。いや、4D。高次元から立体的に組み立てる。走るチェスといわれるサッカーにおいて最も重要な能力だ。
これは右脳と左脳が同時に働かないと機能しない。通常の人間は右脳が働いている場合、左脳が休む。必ずどちらかに偏る。思考に深みがなく物事を短絡的に捉える。
メディカルチェックからの情報で、彼は左右の脳を繋ぐ
創造力の右脳。判断力の左脳。両方が同時に稼働することで独創的な思考が生まれる。
研究によって秀でたアスリート達は脳梁が太いことがあきらかにされているらしい。右脳は左半身。左脳は右半身の神経を司ることも影響があるのかもしれない。
彼の遺伝情報を大叔父さんに調べてもらった。
父は「ゴッド」の遺伝子を持つサンデーグループの一員。母は「キング」の娘。そこである疑問が湧いた。「ゴッドの血」×「キングの血」この配合例は今までにあるのか?
大叔父さんは答えた。
「キングこと浦乃和良。サッカーを誰よりも愛し、家族を誰よりも愛した選手。幾度となくハニートラップを仕掛けたものの、キングの遺伝子は入手できなかった」
初老と呼ばれる年齢にも関わらず、今もなお現役にこだわり続けるキングの姿は俺らでも知っている。キングのサッカー人生は彼の愚直な性格が垣間見れる。
「なるほどね」
すべてに納得がいった。
「ゴッド」×「キング」の血を持つ深井。引き続き注視したい。
三年生に上がる進級テスト。
インブリード11人を造り出すためのGキャリアー30人を選ぶ。戸籍上では仮にも俺の「義理の父」になる人間達だ。まあ、Gプロジェクトにはそもそも戸籍など存在しないのだが。
「お前は俺の義理の息子だからな! 絶対に!」
AGC(オグリ)が馴れ馴れしく肩を組んでくるのが目にみえる。彼が俺の義理の父? 申し訳ないが想像できない。
「なに?
俺は迷うことなくリストを黒く塗り潰した。
三年生のカリキュラムは勝ち負けにこだわることを提案した。極限状態での真価を問うためだ。
2勝5敗。これで終わってしまうのは心もとない。彼らの能力をもっと見極めたい。特に発育途上である深井の潜在能力はまだまだ精査する必要がある。
意図的に二連敗を贈り4勝5敗とした。残り一戦。
いよいよ最終決戦。
卒業がかかった最終局面で真価を問う。
ここは俺も本気でいかせてもらう。
みせてくれ。
血の力とやらを!
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