第20話 実態

 と僕が意気込んで拳を突き上げた所で。


「ガイアスさんや。飯が出来たよ!」

「あっはい。今行きます」


 ノックの音と共に、フローの食事を知らせる声が扉の向こうから聞こえてきた。


「ふー! 食べた食べた、王宮じゃ味わった事のないシンプルで素朴な味だったな」


 提供されたのはデイリーピッグのスパイス焼きに硬めのパン、なんだか分からない苦い葉っぱのサラダに、ほとんど具の入っていない塩分控えめなスープ。

 どれもこれも王宮では見たことのない料理で、ついテンションが上がって食べ過ぎてしまった。

 けどそのおかげで魔力もある程度回復した。

 食事をした後は、桶からお湯を汲んで体を流すというこれまた変わった入浴法の風呂に入った。

 ヘチマを乾燥させたタワシで体を洗うのだが、初めて使うものなのでフローに使い方を聞いた。

 ゴツゴツしていて、こんな物で体を擦ったら傷だらけじゃないか、と思ったのだけど、なんと水で濡らすと柔らかくなるのだ!

 なんて不思議なんだと騒いでいたら「アッハッハッハッハ! あんた本当に旅人かい?」と大笑いされてしまった。

 使った石鹸も実に獣臭くて新鮮だった。

 王宮では硬く、ハーブや果実が練り込まれた良い香りの石鹸を使っていたので、最初に匂いを嗅いだ時は鼻が曲がりそうだった。

 ぜひ記念に獣臭い石鹸と、不思議ヘチマを譲って欲しい、と頼むと、妙な顔をされたが快く譲ってくれた。

 

「珍しい物も譲ってもらえたし、後は魔法研究だな」


 さっそく増えた剣や槍、宝石を床に並べる。

 今の所、これら全てに共通する事は、形状がわかる事、名前を口に出した事、変化を口に出した事(宝石は変化させたわけではないのだが)。

 それから数時間、あれやこれやと思いつく限りの方法を試していった結果。

 鉱石魔法とはなんたるか、を幾らか理解出来た。

 と、思う。

 そんな数時間で全てを知れるほど、鉱石魔法は浅く無いけれど、とりあえず現段階で判明した事をノートにまとめた。

 まず剣と槍――というか鉄。

 鉄で出来た剣と槍は、僕のイメージで簡単に形状を変化させる事が出来る。

 ナイフ、メイス、棒、手斧、戦斧、ハルバード、ランス、槍などなど。

 僕が形状を把握していれば、どんな得物にも変化した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る