第16話 試行錯誤

「戻りましたー」

「おやおかえり!」


 買った物を片手に、村の散策を兼ねてぐるっと一周した僕は、そのままフローの家に帰った。

 

「おや、買い物してきたのかい?」

「はい。どうせならと思いまして。しばらく部屋でゆっくりしていますね」

「はいよ!」


 部屋に戻り、そのままベッドへダイブ。

 ぼふっと体が沈むがすぐに戻る。

 少し、というより結構硬めのベッドだが野宿よりはマシだ。

 というより王宮のベッドと比べるのがおかしい。

 野宿よりマシとか失礼すぎるだろ僕。


「んぅー鉱石魔法かぁ」


 鉱石系魔法、いわゆる地の魔法の派生。

 水、地の魔法には、それぞれに派生魔法というものがある。

 火や風は無い。

 火は火だし、風は風だ。

 水は氷結と霧。

 地は派生魔法が一番多い。

 魔法の種類は無数にあるけれど、エレメンタリオで重要視されているのは四元素。

 派生魔法は下位魔法としての扱いになるので、魔法的地位は低い。

 派生魔法使いの人権も低い。

 ゆえに魔導書なんかも数が少ない。

 迫害されるわけでは無いけれど、蔑まれることの方が多い。

 そのせいで、適性検査の末に派生魔法の適性が出てしまうと、それを隠してしまう人が多い。

 とかなんとかいう話をアリエスの授業で聞いた。

 だから僕の適性ランクがSだとしても、全く意味の無い事なのだ。

 差別とかいじめとか、良くないと思うんだよな。

 ちゃんと記録に残して、その後現れるかもしれない可愛い後輩に「これはこうなんだよー」って教えてあげないと、困る人が出てくるじゃないか。

 ほら、例えば、僕とかさ。

 現在進行形で困ってるよ本当に。

 地の派生魔法でいうと【砂】とか【岩】とか【泥】とかあるわけですよ。

 そこら辺はまだ人権があるから、魔導書なんかも多いさ。 

 それに比べて【鉱石】て。

 アリエスから「教本になるかも」と微妙な顔で渡されたのは【世界鉱石大辞典】だし。

 魔を知る事は世界の一端に触れるのと同義、キリッ。

 とキメ顔で言っていた王宮の大賢者様も、こればかりはどうにもならないらしい。

 

「鉱石とは、鉱床から採掘、精錬される有用な元素あるいは鉱物の集合体。金属鉱石、非金属鉱石があり宝石もこれに含まれる。ねぇ」


 僕は大賢者様からうけたまわった大辞典をバッグから取り出し、ベッドに寝転んでペラペラとページを捲る。

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