第17話 僕と鉱物と宝石
鉄、銅、錫、銀、金その他にもエトセトラエトセトラ。
うつ伏せになって辞典を読みつつ足をパタパタさせ、ベッドに落としては上げ落としては上げを繰り返す。
今目を通しているのは宝石のページ。
宝石なんて王宮で腐るほど見てきたからなぁ。
「ルビー」
パタドサ。
「エメラルド、サファイア」
パタドサ、ドサ。
質の良い宝石は魔力の伝導率も高いので、よく魔導師の杖や魔道具なんかにも使われたりする。
宝石の色と四属性には親和性もあり、火属性にはルビーやガーネット、水属性にはサファイアやラピスラズリ、風属性にはエメラルドや翡翠、地属性にはブラウンジャスパーや琥珀を使う、というような定説がある。
「ふぁあー……アリエスさんの杖には……なんだっけ、属性系じゃなくて純粋に魔法力を高める為の……拳くらいの大きさの……なんだっけな、スターライトジルコンだっ……」
ゴスッ!
「けかぁっ!! ぐっふぉぉ……!」
僕の言葉が終わるか終わらないかのタイミングでそれは起こった。
ゴロゴロしていたせいなのか、少し気怠く、眠くなってきたその時。
何かが、硬質な何かが僕の腰あたりに落ちてきた。
あまりに突然、あまりに突拍子もなく。
あまりにも無防備、あまりにも無抵抗な僕の腰の骨にソレはウルトラダイレクトに着地した。
「いったぁ……! ぁあ……?!」
腰をさすろうと手を回し、首を回す。
そこに見えた光景に、僕は「たぁ……」と言って開いた口がさらに開いた。
「これ……アリエスさんのと同じ……?」
手で鷲掴みにしたソレをマジマジと眺める。
眺めれば眺めるほどに綺麗な宝石。
頭の中で思い描いた、拳大のスターライトジルコニアが、まるで「来ちゃった」とばかりに燦然と輝いていたのだった。
「はぁああぁああーーーー!? ってあれ!? ちょっと待て!?」
過大表現でも何でもなく、ベッドから飛び跳ねて起きた僕の足元、さっきまでパタパタやっていた所の周りには――。
「ルビー……サファイア……エメラルド……」
僕が辞典を読みながら呟いた宝石が、所在なさげに、部屋の明かりを反射して小さく煌めいていた。
煌めく宝石達を手に取りしげしげと眺める。
宝石を王宮で腐るほど見て来た僕だからわかる。
これはどれも、王宮にある宝石と同じレベルの質の良さだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます