さつまいもごはんが食べたい!
.
さつまいもごはんが食べたい。
昔、一度だけ作ったことがある。
作り方は炊飯器に米と乱切りしたさつまいもをセットして炊くだけ。
材料は、白米2合、さつまいも1本。
調べたら塩、黒ごま、酒なども必要みたいだけど、
『わたししか食べないからいいや。シンプル・イズ・ベスト!』
と思い、材料は米とさつまいもだけ。
炊飯器に入れる水の量は米2合に必要な分だけにした。
失敗したら失敗したでいいや。
そんな気持ちで作ったさつまいもごはん。
炊飯器から炊飯完了のアラームが鳴る。
炊飯器をオープンすると、さつまいもの甘くて良い匂いがして食欲を刺激した。
しゃもじでさつまいもをなるべく潰さないように白米とまんべんなく混ぜて、茶碗に盛り付ける。
料理を作れない自分が、料理を一品完成させたことに感動した。
出来立てを食べると、さつまいもの甘味と白米がマッチして美味しかった。
炭水化物×炭水化物の組み合わせだから合うのかななんて、考えていた。
その時はおかずも無しにさつまいもごはんのみ。
米2合+さつまいも1本分の量を食べ切るのはきつかった。
だから、1合分は食べて、残りはおにぎりにして余ったさつまいもごはんは明日食べようと決めた。
………次の日、わたしがさつまいもごはんのおにぎりを食べることはなかった。
父が仕事場に持って行ってしまったから。
ちゃんと母のお手製弁当が用意されていたのに。
冷蔵庫の奥に見付からないように隠してたのに。
何の断りもなく父は勝手に持って行った。
そして、父は仕事から帰って来て、わたしに言った。
『歯が折れるかと思った。この俺に変なおにぎり食わせやがって。お前、まともに料理も作れねぇのな』
人の昼食を盗んでおいて、それはないだろう。
家の中にあるもの=全部俺のものと思っている父には、【盗んだ】という認識はない。
それは、さつまいもごはんに限らず、度々あることだった。
ショックでさつまいもごはんは二度と作らないと思った。
数年経って、ふと過った記憶。
父から『お前の作るものは全て不味い』と言われ続けた。
(…いや、待て待て。確かにわたしはそんなに料理上手じゃないし、味覚音痴は認めるけど。冷蔵庫に1日入れていたからカチカチに固まったさつまいもごはんのおにぎりをそのまま食べて美味しいわけがないだろう。歯が折れるかと思ったんなら、途中からでもおにぎりが固いと気付いたら、レンジでチンくらいすれば良い話だろう。温かいさつまいもごはんのおにぎりを食べてから感想を言え。だいたい、人から盗んだものにケチをつけるな。つーか、わたしより料理が全く出来ない父さんに言われたくないんだけど!)
そんなことを思った。
昔は父にボロクソ言われる度にショックを受けて傷ついてたけど、今はあの頃よりも少しは図太くなれたようだ。
そういえば、昔はよく買ってたさつまいも、ここ数年家の冷蔵庫で見掛けないな。
焼き芋やふかしいもやさつまいもスイーツは買っていても、家でさつまいも自体を購入していないことに気付いて驚いている。
.
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます