手首 (you're not by my side)
Unknown
手首 (you're not by my side)
部屋を網戸にすると夏の香りが入り込んでくる。青く揺れる木々、川のせせらぎ、セミの声。どこか懐かしさを覚える。
俺は無表情でタバコを吸っている。扇風機が回ってる。夕日が部屋に差し込んだから、精神薬を4種類飲んだ。もう何年も飲み続けている。
抗うつ薬と睡眠薬。でも飲む意味があるのかは知らない。睡眠薬を飲んでもあまり寝られない。高校時代から不眠症で、26歳の今も治らない。決まった時間に起きる必要のない生活をしてるから、不眠症でも問題ないんだけど、ベッドで目を閉じている時間は退屈だ。
金が無いから最近は酒を飲んでない。麦茶だけ飲んでる。でもタバコは吸いまくり。しばらく前にアイコスに変えたから、ぬいぐるみや壁がヤニで汚れなくて良い。
俺のアパートのそばに野菜の直売所がある。今度そこで野菜を買って、夏野菜カレーを作ろうと思う。ナスとかトマトとかパプリカとかオクラとかカボチャとかズッキーニとか、色んな夏野菜をゴロゴロ入れたい!
もうすぐ俺が一人暮らしを始めてから一年が過ぎる。家事スキルはかなり上がった。実家に暮らしてた時は洗濯機を回したことも、洗濯物を干したことも、米を炊いたことも無かった。
時間の流れだけが早くて、俺の歩みはかなり遅い。いつの間にか大人になっていた。色々足りない大人になった。主に、頭が足りない。子供の頃から「変わった奴」と言われてきたから、大人になっても「変わった奴」だった。
足りない頭を揺らしながら、ベランダに出て、夕暮れを眺めながら、無表情で1人タバコを吸っている。
もう俺も大人だ。「俺はメンヘラだ」なんて言ってられない。
「死にたい」と言われる側の気持ちも想像できるような人間になりたい。死にたいと言って大切な人を心配させたり困らせたり、俺はもうそういうのを辞めたい。
生きれば生きるほどボロボロになっていく手首。俺のそばにはもうあなたがいない。
でも、まぶたを閉じたらあなたの顔が浮かぶ。
あなたは元気にやってるかい。今も死にたくなって泣いたりしてるのかな。
俺は自分の人生がもうどうでもよく感じている。だからあなたが幸せになってくれたらそれでいい。とか言ったら、かっこつけすぎか? だが実際俺はかっこいいので、かっこつけてもよい。
昔よりは落ち着いて生活できるようになってきた。ちゃんと退屈を感じられる。やりたいことが特にない。今日は「ニーアオートマタ」というアニメを見ていた。ゲームが原作のアニメで、俺はこのゲームを遊んだことがある。最後のルートのエンディングで感動して泣いた記憶がある。あと、主人公のケツがエロい。
俺が会社員で働いていた時、黒田さんというメガネの女性社員のケツがエロかったのを思い出す。いつも黒いスキニーを履いていた。
生きることの無意味さ、価値のなさに社会人の時に気付いた。それでニートになった。若くしてアル中と診断もされた。
でも俺の妹なんかは「お兄ちゃんが生きててくれるだけでいい」って言ってくれるから、もう少し頑張ってみようかな、と思っている。
俺の命は俺だけのものじゃない。
たまにそれを忘れそうになる。
◆
宣言通り、直売所で野菜をたくさん買ってきて、夏野菜カレーを作りました。うまい。特にナスとトマトがうまい。
おまえたちにも俺の夏野菜カレーを食わせてやりたい。「Unknownの炊き出しコーナー」を俺のアパートの前で開くので、食いたい奴は来てくれ。場所は俺がテレパシーで発信する。
俺はネットリテラシーがあんまり無いので、普通にカクヨムに住んでる地域を書いたり、自分の顔の写真を載せたり、本名を載せたりした。
俺は有名じゃないし、読者もみんないい人だから、悪用はされないと確信を持っている。
というか、リアルでの人との関わりがないから、特定されようがない。学生時代の時の同級生とも関わってないし、ラインもブロックした。
ちなみに妹は既に俺がカクヨムで活動してる事も知ってるし、俺のアカウントも知ってる。
「シャーペンカチカチ無双が超面白かった! 周りの人に勧めたくなるくらい面白かった」らしい。俺が何年も前に書いた小説です。一応カクヨムでの代表作に設定している。
なんかもう妹にカクヨムのアカウントがバレてるのは、どうでもいいや。家族にオナニーを目撃された時に近い恥ずかしさはあったが、もう慣れた。
オナニーなんて人類みんなするし、恥ずかしがる事ないんだぜ。
今俺は、エアコンの効いた部屋で夏野菜カレーを食っている。おいしいものを食べてる時が1番幸せかもしれない。
うつ状態が酷い時は味覚が無くなって、食べ物が全くおいしく感じないのだが、最近の俺は食べ物をめっちゃおいしく感じている。ってことは精神状態も安定してる。
食欲がなかったら自分でカレー作ろうと思わないしな。
とある悪役プロレスラーが「人間はうまいもん食って暖かい布団で寝られたら幸せなんだ。そこに少しでも刺激が欲しいやつはプロレスを観に来い。楽しませてやる」みたいな発言をツイッターでしていて、おれは「良い言葉だなあ」と思った。
住む場所があって、食うものがあって、ちゃんと寝られたら、前提として人間はそれで幸せだ。
幸福は自分の身近なところにまずある。当たり前の生活を当たり前に送れること自体が幸せだと思う。
そこにほんの少しの彩りをもたらすのが、娯楽の存在意義なんだと思う。音楽、スポーツ、芸術、文学、その他いろいろ。
俺は1人での生活が寂しいから彼女が欲しいと常々思ってるが、1人の生活も割と楽しんでる。
戦争が起こった国では自殺が減るというデータを見たことがある。死にたいと思ってる場合じゃなくなるからだと思う。戦わなきゃみんな殺される。だから戦うしかない。
でも俺は、ロシア兵が銃で自らの頭部を撃ち抜いて死んでる動画を見たことがある。彼は笑顔だった。
俺のアパートの外から聞こえるのは、風の音と川の音とセミの声だけで、銃声や空爆の音なんて全く聞こえない。
夏の音だけが聞こえてくる。
俺の最近の日々はとても平和で、それを少し愛しく思う。
誰からも何も言われず、自由に暮らしている。金は無いけど、不便だとは思ってない。欲しい物は全部買ってる。
俺の部屋に銃声は響かない。
でも俺は今日も何かから逃げて、部屋で過ごしている。
人が怖いのは、俺にとっては当たり前。
俺はいつからか、かなり臆病になってしまった。恐怖心と劣等感は大人になっても拭えない。
過去はどうでもいい。未来が大切。
◆
酒が飲みたくなってイライラしてきた。脳が酒を求めてイライラが止まらない。アル中は人格も歪むから困る。酒が俺の人生の全てみたいになってて悲しい。
結局、スーパーで缶チューハイを何本か買ってきた。
俺はハタチからアル中だ。絶対に長生きできない。
◆
ART-SCHOOLの木下理樹の生誕祭にsyrup16gが出るらしいから、行こうか迷ったけど、たぶん行かないと思う。
ART-SCHOOLも大好きだし、もちろんシロップはクソ好き。でも生誕祭に参加するもう一つのバンドを全く知らないし、試しに聴いてみたら俺の好きな音楽ではなかった。
どうしようかなあ。
アートもシロップも、それぞれ単独のライブで観たいって気持ちが強い。
ART-SCHOOLとsyrup16gは昔から仲いい。昔はBUMP OF CHICKENとsyrup16gの関わりもあって、水色の風という曲のコーラスには若い頃の藤原基央が参加している。
BUMPも好きだ。
紅白歌合戦にBUMPが出た年は、BUMPだけを見て年越し蕎麦食ってクソして寝た。
ART-SCHOOLではダントツで「ロリータ キルズ ミー」って曲が好き。「水の中のナイフ」も好き。かっこよすぎる。最近の曲だと「Bug」の歌詞がめっちゃ好き。Bugめっちゃ良い曲なので聴いてみて。
とりあえず木下理樹、誕生日おめでとう。
そういえば、ART-SCHOOLも最近アルバム出したし、syrup16gもアルバム出したし、people in the boxもアルバム出したし、バズマザーズも活動再開しそうな雰囲気があるし、俺の好きなバンド達が精力的に活動してる。
バズマザーズがライブを再開したら、すぐ行きたいと思ってる。
ちなみに今俺はバズマザーズのTシャツを着ている。
かつて俺の友達が「あんのうんさんってバンドTとか持ってなさそう」と言ったことがあるが、俺は割と持ってるぞ。言わないだけで。
俺は音楽の中でも「バンド」って形態にかなりこだわって聴く。
最近はボーカロイドみたいにパソコンで1人で作る音楽が流行ってて、流行りの音楽シーンにもバンドなんてほとんど出てこない。
でも俺は、人間が集まって人間が鳴らす音楽が好きです。古臭いかもしれませんが、俺がやるなら絶対バンドです。仲間と音楽やりたい。
音楽は変容している。
でも俺はバンドにこだわる。
時代についていく気なんて最初から全くない。
めっちゃ若いバンドで俺に突き刺さるバンドは本当に無い。俺のアンテナが立ってないだけかもしれないけど、昨今のバンドは本当に俺に刺さらない。
おっさんのバンドの方がいいんだよな、なんでかは分からない。
それではまた、明日か明後日くらいに会いましょう。
カレーうまかった。
俺に失うものは何も無い。でも、俺を失って悲しむ人が1人でも居るうちは、生きる義務があるんじゃねえか??????
あと、俺は俺の読者が死んだら悲しい。だから死ぬんじゃねえ。俺も死なねえから。
俺も反省している。あまりに軽率に死のうとする事を。優しい人の気持ちを想像できない事を。
終わり
手首 (you're not by my side) Unknown @unknown_saigo
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