第79話 犬と猫の散歩とNEKOは禁句(コーギーと野良猫)
エジプトというか、イスラム教の国では、犬も豚と同様に不浄の動物とされています。
マジで。
理由は諸説あるようですが、狂犬病を恐れて不浄の動物とされていた説が有力らしいとお聞きしました。
犬のそばに寄るな。
犬に触るな。
犬の唾液に触れたら真水で7回以上洗え。等等…。
確かに現代の狂犬病対策と同じ!
現代でも発病したら致死率の高い感染病なので、成程と思う。
でもね~、子供の頃から徹底して教えられているので、尋常じゃなく犬を畏怖している方も多い為、危険な野犬だけでなく、全ての犬への当たりが厳しくなるのも事実。
国によっては戒律なので徹底厳守して、犬の飼育や犬モチーフ所持だけでも厳しく罰せられるというから気をつけないといけない。
エジプトは観光大国だし、外国人も多いので比較的ゆるい国だし、上流階級では超!高級犬を飼うのをステータスとしているし、ブリーダーもいる(恐らくイスラム教徒ではないんだろうなあと思う)けど…。
それでも犬への当たりが強い人もいるので、犬の散歩は注意が必要!と、みなさん口を揃えて言いますね。
うちのアパートメントにも犬を飼っている人は多くて、エレベーターでばったりすることがある。
大型犬が比較的多い気がするけど、最近は日本犬種も多い。柴犬とかみると心和む~~。コーギーのぷりぷりお尻も可愛い~~。
そしてみんな車に乗ってどこかに行く。
え?そのまま散歩じゃないの???
バーブ―に聞いたら、会員制のドックランとか、後はスポーツクラブは犬連れOKな所も多いので、そこに連れて行くらしい。
トイレに。散歩に。運動に。犬好きが集まり情報交換や、交流をして楽しいらしい。いいねえ。
道を散歩している犬もいるけど、やはり色々揉め事の原因になるので、だったら最初からそういう限定された場所に行く方が安全で速いという事らしい。
成程。
揉め事とは、
同じ道を歩かない=覚えられて待ち伏せして嫌がらせする。
ビルのそばを歩かない=上から汚い水を掛けられる(これは犬に限らずあるあるなので、気を付けるのは皆同じ)
車が来たら気を付ける=幅寄せして轢き殺そうとする輩もいる。
排泄部処理は徹底する=放置してしまう人が多いのでそれが揉め事の原因になりがち。
「そう言えば、うち子達の〇んちを処理していたら、他の犬がしたらしい物も処理しろ!と、凄い勢いで怒鳴られたことあるわ。まあ、そういのは日本でもあることだから、犬嫌いな人は何でも嫌なのよねえ」
とは、スピッツを飼っている某メーカー勤務の大町さんだ。大町さんは独身女性のちゃきちゃきした方。猫も飼っているので、猫好きサークルに入っている。
「処理したんですか?」
「しないわ。義務ないし、どんな犬がしてどんな病原菌あるか分からない物を、なんでわたくしがしないといけないの?
私、アラビア語わかりませ~~ん??と、無視したわ」
「わあ!凄い!流石大町さん!」
「当たり前でしょう!それに、待ち伏せされても嫌なので、その道はもう二度と通らないようにしているわ」
「どこの道?」
とは、同じくコーギー飼いの安田夫人。安田夫人も別メーカー勤務の旦那さんと二人で赴任している。
「ホテルに向かうのに、抜けるのにちょうどいい小道があるじゃない。角に××のある××ストーリよ」
「あ~~~あそこね。あそこは結構うるさい人が多く住んでいるのよ。私も前に太郎と花子を連れて歩いていたら、花子にはガミーラと言うんだけど、太郎には棒を振り回してね」
「棒!?」
「ええ。杖?かもしれないわねえ。おじいさんに見えたから」
「うわ~あるあるですね。偏屈じいさんがいるんですね」
「偏屈ばばあもいるわよ。超太ったマダム?マダムよねえ?多分。まあその女性、が、犬が通るの待ち構えて、白人女性に4Fから水を掛けるのをみたわ」
「ええええええ!?」
全員が叫ぶ。4Fから水なんて殆ど凶器に近いんじゃないの?
「白人だから?」
「犬連れだからじゃない?可哀そうに、その女性より、連れていたシェパードがずぶ濡れになってねえ」
「まああ~~~」
「とにかくそこは通らない方がいいわよ。全体的に少し変わった人が多いの」
全員が頷いた。こういう情報交換はホント、大事。
「ところで、花子ちゃんも連れて散歩しているんですか?」
「ええ。太郎を連れて毎日どこかに出かけるのが不服だったらしくてね。ある日、肩にぽん!と乗ってきたの。だからリードをつけて毎日散歩を同伴しているわよ」
えええ!?何それ可愛い絵面じゃない~~!
「安田マダム、何時ごろお散歩しますか?花子ちゃん見に行ってもいいですか?」
前のめりに聞く夢乃にみんなが笑い出し、みんなで花子ちゃんを見に行くことになった。花子ちゃんとは、エジプトで拾ったという、茶色のしましま猫ちゃんである。
猫の散歩は夢乃の野望の一つなので実に羨ましい。
そういう事で、みんなで散歩同伴をしてた時、れいの道を見てみようという事になった。みんなで通れば怖くないである。
そこは某ホテルに行くのにちょうどいいショートカットの小道で、車が通るのがギリギリなので、車もスピードを出してこないし静かないい小道だった。
だが、いた。
丁度中央あたりのビルの前に、古ぼけた椅子に座り道路を凝視している、白いガラベーヤを着たおじいさんらしき人。手には杖だか棒を握っている。
その隣のビルの前には、黒いヒジャブを目深に被った全身黒づくめの女性達が数人、複数の子供達を遊ばせている。
上を見ると、窓際に女性が見える。あちこちの窓に。
うううむ。なんだか緊張する。
私達は賑やかにおしゃべりしながら、花子ちゃんをメインに歩いていく。太郎は嫌な思い出があるのだろう、尻尾が垂れている。でもみんながいるので、みんなの真ん中を歩くように歩いているのが、なんかおかしい。
すると、子供達の遊ぶ中に数匹の子猫が見えた。可愛い子猫だ。
すると、最近日本からいらした上榁さんが大声で叫んで駆け寄った。
「可愛い~~!!猫ですよ猫~~!子猫だ~!猫~~~~!!!」
私達全員がぎょっ!!として、慌てて上榁さんの口を封じたが遅かった!!
おじいさんも、道端のおばさん達も全員がぎょっ!とした顔になり、女性達は悲鳴を上げて子供達の耳をふさぎ、怒号を上げて建物の中に追い立てる。
おじいさんも真っ青な顔で、上榁さんを見ている。
上榁さんはきょとんとした顔で言う。
「え?私、何か不味いことしました?」
夢乃は慌てて小声で耳打ちする。
「猫よ、ねこ、NEKOとか、NとEとOが続く言葉はアラビア語で隠語と同じ響きになるから絶対行っちゃダメと話したわよね?」
「ああ!!峰子(MINEKO)さんや猫田(NEKOTA)さんが、名前を言えなくて困って、少し名前を変えて自己紹介しているというあれですね!あははは~可愛い猫(NEKO)だから、つい猫(NEKO)猫(NEKO)と言っちゃいました~」
「上榁さんんんんんん!!!!!!」
まだ来カイロの浅い上榁マダムは、自分がとんでもない言葉を連呼しているのを全然理解していなくて、私達の方が大焦りに焦りながら、ほほほほ~~と苦笑しながらその場を脱兎のごとく逃げた。
ええ…あの道はもう通れません。
いろんな意味で‥‥もう通れなくなりました~~~。
後日、上榁さんは流れて来た話を聞きつけた上司夫人と旦那さんいこっぴどく怒られ、猫好きサークルで平身低頭で謝ってきたのは言うまでもない。
でもまあね…猫好きは必ず1回はするミスなのよ。夢乃も数回・・・うっかりしてしまいました。
猫はオッタ。猫はオッタ。オッタがおった!
上榁事件以来、猫好きサークルでは、毎回それを唱えて戒めることにしたのでした。戒律のように。
追記:
日本語のよくある発音が諸外国では禁句の言葉の発音と同じというのはあるあるなので皆様も、海外行くときは必ずネットでその国の注意事項を読まれていくといいですよ~~。
エジプト(アラビア語の国?)では「猫」は禁句です。()の中にご想像の隠語を淹れて想像してみてください。どんだけ危険で危ういことをしたかよくお分かりになると思います~~。
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