第75話 (ドイツ)ロマンチック街道と接客上手な猫(黒猫他)


 ミュンヘンに3日滞在する。和也の仕事があるからだ。


 おかしーなー?夏期休暇で来たはずが、何故に仕事なんだ?おい!和也!


 とは言っても仕方ないので、その間は一人で近隣を観光しようと思う。いつも通りだ。


 さて、ノイバンシュタイン城を見たので、次はロマンチック街道に行ってみたい。

 

 調べたら南のフュッセンから北のヴュルツブルクまで、1日1便くらい?相互にロマンチック街道の要所の街や教会を巡る、ロマンチックバスなるものがあるらしい。

 

 ミュンヘンから列車でフユッセンまで1時間ちょい。集合時間はフュッセンの8時だから逆算して、ちょい余裕をみて6時の列車に乗れば間に合う。


 いいねえ!

 調べたら、まだ3席余裕がある。


 だが、その話を松村さんにしたら、アジア人女性の一人旅に難色を示した。

 

 ドイツもご多分に漏れず、かなり治安が悪化しているらし、特に今は観光ハイシーズンなので、世界中から様々な人が入り込んでいるのでトラブルも多い。

 

 実際、数日前にアジア人女性の一人旅の方が犯罪に巻き込まれて命を落としたとのことだ。


 バスツアー自体は問題ないが、問題が観光地での単独行動。複数人に襲われたら確かにアブナイ。


 これをエジプトに置き換えれば、「不特定多数の参加者のバスツアーに日本人女性一人で参加します!」と知人女性に言われたら…

 自分も難色を示す。

 危険だ!

 いろんな意味で!!


「私が同行できるのが一番なんですが」

「いやいや、和也が同行できるのが一番当たり前です」


 それもそうかと、松村さんはがははははと笑うと、ぴん!と来た顔をした。


「他社の方ですが、フットワーク軽い友人がいますので…彼女に聞いてみます。まだミュンヘンにきて1年ですが、1回そのバスツアーに参加していますのでいい案内役になると思います」


「え!?それは申し訳ないですよ!!」


「大丈夫、大丈夫。なんなら今度私達がエジプトに行った時に、夢乃さんが案内してくださいよ。それでチャラで気にしないでください」


 松村さんがその方に電話をしたら、「エジプト旅行!」と、弾んだ声と共に「もちろんOKです!」と言う声のバックに子供を含む複数の声で、「やったあ~!」と言う声が響いてきた。

 

 松村さん!そして案内役の木村さん!ありがとうございます!


次の朝、早朝も早朝のミュンヘン駅に行くと、すでに松村さんとお友達の木村さんが待っていてくれた。


 自己紹介と挨拶をして、急いで電車にのり、和也と松村さんに車窓から手を振る。


 木村さんは某銀行系の旦那さんの仕事の都合でミュンヘンに駐在しているそうだ

 エジプトには1回旅行をしたかったそうで、家族がもうハイテンションで「お母さん頑張ってアテンドしてきてね!」と、元気に送り出されてきたと楽しそうに笑う。

 

 なんだか松村さんと似た感じの人でいい人だ。

 

 フュッセンに着くと、観光バス乗り合い場所には既に大勢の人達が集まっていた。

 

 いやもうフユッセン自体がおとぎ話の国というか、おもちゃ箱の中の町のようでカラフルで滅茶苦茶可愛いし素敵!!


 はしゃぐ夢乃に、気持ちわかる!と、木村さんもハイテンションで付き合ってくれる。


 ヴイース教会、アウスブルグ。


 可愛い家の前に色とりどりの花が咲く植木鉢が飾らていて、可愛い猫がそばで寝そべっている姿はもう!!きゅん!!です!


 撫でても平気なので、観光客慣れしているんだなあと感心した。

 もち!触っていい?と猫に確認してますよ!


 そしてバスは進み、ネルトリンゲン。

 

 ネルトリンゲンは某巨人との闘いの漫画の街に似ていると有名になったんだそうだ。確かにあの砦の街ににているね。


 ここは周囲をぐるりと囲む城壁の壁の横?上?が渡り廊下のようになっており、そこを歩けると言うのも面白い。


 ディンケルスビュール、ローテンブルグ。


 ローテンブルグはロマンチック街道のハイライトともいえる街!中世の宝石箱とも称されているそうで、木村さんのテンションも爆上がりであちこちの案内説明にも余念がない!

 あまりの見事な案内説明ぶりに、同じバスの人達まで着いてくる始末だ。ちゃっかりしている。

 

 木村さんは嫌な顔一つせず、英語でみんなに説明してあげている。

 いい人だ。


 木村さんが他の人達に説明している間、少し休憩でアルプスの少女ハイジに出てくるような、水場のそばに寄りかかるようにして待っていた。


 何かが後ろでカーディガンを引っ張る気がして振り向くと、大きな黒い猫がどいてくれと言わんばかりに見上げていた。


 どいてあげると、水場にひょい!と飛び乗り、水をぺろぺろ飲みだした。


「ごめんごめん、君の定番の位置だったのね」


 そう言うと猫は金色の目を細め、大きなふさふさしっぽを大きく揺らす。そして、ぴょい!と飛び降りると、石畳の道を歩いていく。

 

 まるでついておいでと言うように。

 

 なので当然、その後をついていく。松村さんに猫の後をついていくと、合図をして。松村さんはなんだかおかしそうに笑っている。


 猫は後ろを振り返り振り返り、ちゃんと着いて来るのを確認しながら歩く。そして1軒のおとぎ話の国の看板がかかる、可愛いお店に入って行った。


 そこはカラフルなドイツらしい生地で作られた沢山の猫の人形や、陶器の猫の絵付けがされた食器等が売られている店だった。


「可愛い~~!」「Cute!」「可愛!」


 ん??


 なんか自分の声に被さるように、複数の言語が被さり驚いて振り返ると、数人の各国の男女が店を見回し目を輝かせていた。


 え?


 猫はいっきに賑わう店内を見回し、満足そうに眼を細めると、ゼラニウムが揺れる窓辺に置かれた、可愛いクッションの上に丸く香箱座りをした。


 え?


 奥から優しい風貌の老女が出てきて、猫の頭をなでると、にこにことお客達を見まわした。



 暫くしてお店に来た木村さんが、猫をナデナデしながらおばさんとドイツ語で何か話した後、おかしそうに種明かしをしてくれた。


「このシュレムはこのお店の飼い猫なんですけどね、この店は少し奥まった場所にあるでしょう?それでおばあさんの為に、あの広場の水場に行っては愛嬌を振り撒き、各国の猫好きを集客してくるんだそうですよ」


「え?マジで?」

「マジで。私もあの水場で集客されれここに連れられてきましたから」


 あははははと木村さんは笑い、可愛い猫のカップを指さした。それが一番人気なんだそうだ。


 夢乃はファリーダに似たカップを2個と、ハーブの入ったネズミの可愛い布地のおばあさん手作りのおもちゃを幾つか買った。

 木村さんとはお揃いの赤いクリスマス模様の猫の人形のキーホルダーも。


 私達はそこでUターンして、またバスに乗りフユッセンに戻ると、列車に乗りミュンヘンに戻った。


 猫のキーホルダーは松村さんにも渡し、今度エジプトに来た時に3人でつけて芽ずるしにしましょうと笑いあった。


 松村さんと木村さんご家族がエジプトに来るのが、今からとても楽しみでわくわくた。



追記:

旅行の計画は夫がしていて、私はその後に着いていく感じでした。いろんな電車ののり、バスにのり、とても楽しい旅行でした。

ドイツは可愛い猫があちこちいて楽しかったです。



  


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