第71話 エジプト産婦人科クリニックと猫談義(グリュッセ ロシアンブルー)
猫好きお茶会で思わぬ事から妊娠が発覚し、本人がボケっとしている間に、ママ友マダムネットワークで、カイロ産婦人科情報がどっと集まり、そこからあっと言う間カイロ駐在歴が長い高田支社長夫人が個人クリニックを予約をしてくれた。
と、いう事で、和也とカイロ支社で秘書をしているMisタハと3人で、ちんまりと個人クリニックの待合室で順番を待っていた。
カイロでは大概、出産までの診察は個人経営クリニックで診て貰い、出産はそのドクターが勤務している大きな産科専門病院で出産するのが一般的らしい。
もちろん公営総合病院もあるけど、海外公営総合病院あるあるで、とにかく混んでいるし色々あるので、日本人は大概個人クリニックに行くのが普通らしい。
みんながチョイスしてくれたクリニックはモハンデシーンのビルの中にあり、とても綺麗ですっきりしていて安心した。
待合室の椅子が猫足なのは苦笑したけど。同じシリーズなのか?猫足の飾り棚には、各国のいろんな高級な陶器の置物が飾られている。
本当にクリニック?と、言う感じだけど。個人の金持ちの書斎な感じがする。
こういう個人クリニックは先生の趣味の内装になるらしいので、各クリニックで内装が全然違うらしい。
そしてドアが開いて中に入ると、重役か!!というような立派なアンティーク調の彫刻が施されたデスクの前に座った、キリリと髪の毛を結い上げた女性のドクターが、キリリとした黒目を笑わせて握手をしてきた。
まずはドクターの学歴、経歴、他に従事している大きな病院や大学病院の紹介から始まる。そしてクリニックの診察方針等の説明。
ドクターは大概欧米に留学し、欧米の最新医療を学んで資格を得ていることが多いらしい。壁にずらりと並んだ資格証を指さし、写真を指さし、一つ一つ説明してくれる。
要はこういう経歴を積んでいるから、自分を信用して任せてね!ということらしい。
次に看護師案内で、クリニック内の施設案内だ。もち和也同伴。
問診室、日本でよくある診察台のある診察室、検査室、トイレに着替えコーナーまで和也にも確認させ、和也に納得させる。
日本には絶対ないシステムだと思う。
マジで診察に入るまでが…長い長い…。
そしてやっと診察だ。
ドクターは同席している和也に、いちいちこういう検査をします、奥様のここを触ります見たいに確認をする。
すると和也は夢乃に「いいよね?」と確認する。
もちろん「いいよ」と夢乃がドクターに返す。
が、ドクターは和也に許可を求めるので、和也が返事を返す。
なんなんだ???
この二度手間三度手間みたいな無駄なコミュニュケーションは???
和也が
「直接、妻に質問してくださってOKです」
と言い、ドクターは不思議そうな顔で夢乃方を見たが、結局、和也に話す。
何故???
不可思議な顔をしている私達に、Missタハが説明してくれた。
要はね、イスラムの世界では奥さんは夫の財産=所有物みたいな物であり、夫の管理下に置かれる。当然、奥様の体に触れていいのは旦那のみになる。
なので、ドクターはいちいち、あなたの財産である奥様に触りますがいいですか?と、和也に聞くことになるらしい。
特にドクターが男性の場合は、夫が触診すら拒否することも未だにあるらしい。
え?
て、ことは!?
和也が同伴で病院に来たのは!
父親になるので当然の義務と責任で同伴で病院に来ているのではなく!!ドクターに診察許可を出す為に同伴しているの!?
(ドクターや病院や方針により色々違うらしいけど)
いや、カルチャーショックでした!!!
てなことで、やっと検査と診察。
尿検査だのなんだの、やっと通常コースになる。診察室ではピカピカのドイツ製最新機器をドクターは自慢するする。和也にね(笑)
そして、エコーで映し出されたのは、小さな袋と小さな点みたいな虫みたいな‥ベビーだった。
いやびっくり!
そして何枚も何枚も同じエコー写真をいただき、今後の妊娠生活での諸注意を聞こうとワクワクしていると。
「ところで、Mrs花岡」
「はい!なんですか?」
「あなたはロシアンブルーの猫を飼っているそうですね」
「は??え?あー???はい??」
「猫、飼っていますね?」
え??なんだろう。よくある猫がトキソプラズマに感染していたら、妊婦にはマズイ!!ってあれで、猫を捨てろ!とかいう、妊婦あるあるのあれですか!?
猫が神様の国でも!?
と、ドキドキしていると、ドクターはにこりと微笑んで、ゴールドのIpadを取り出して見せて来た。
そこには福福としたロシアンブルーの猫が、ゴールドキラキラの首輪をして、まるでファラオの猫のように頭を毅然とあげている写真が…。
「え?」
「私の猫、グリュックです」
「…はあ?」
「可愛いでしょう!」
「え…ええ…可愛いです」
で?それが????
「グリュックはドイツの知り合いから紹介されたブリーダーから…」
‥‥てなことで、延々とドクターの猫自慢と、うちのファリーダ自慢で予約していた診察時間は終了し、妊婦のパンフレットをもらい(アラビア語)、参考サイト(英語とドイツ語)を紹介してもらい、次は何週目にと予約を入れて、「ではお大事に」と終了した。
妊娠確認ができたのと、順調であると言われたのは幸いであったが、診察にきたのか猫談義にきたのかよくわからない…
いやー・・・
色々カルチャーショック満載な1日でした。
てなことで、家についたらどっと疲れがでて、ファリーダと一緒に寝込んだ夢乃なのでありました。
追記:
エジプト人って猫好きと知るや否や猫談義が始まるのは…単に私の周りの人達だけなんだろうか???
それなりクラス以上~上流階級では犬好きも多いので、犬談義もできますよー。
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