第65話 アレキサンドリアのゴルフトラブルと猫(ゴルフ場の猫達)
毎月恒例のマダム達情報交換会のお茶会も4人から3人になり、分担が増えて田中夫人がいかに色々と負担されていたかが身に染みてわかったてきた今日この頃(笑)
「皆さんもお聞き及びとは思いますが、来週視察団が来ます。アレキサンドリア視察も含まれており、アレキに1泊することなりました」
そう高田支社長夫人が言い、梨田夫人と夢乃にスケジュールを配る。それに目を通し、夢乃達は嘆息した。
「ゴルフですか」
「ええ、ゴルフです」
高田夫人は頷く。
「ここでその話が出たという事は、マダム同伴ゴルフになります。梨田マダムはお子さんがまだ小さいので宿泊は無理なので除外いたしますが、花岡マダムは…いかがかしら?参加できます?」
最近、高田夫人はこんな感じで「大丈夫か」と夢乃に聞くことが多い。以前なら、「花岡さんなら大丈夫よね!」な感じだったのに、なんだか違和感を感じつつもにっこりと言う。
「大丈夫です。主人からも昨夜打診されまして、OK言っておきましたので」
「わかりました。体調不良とか出ましたら、遠慮なく仰ってね?無理は絶対にいけませんからね?」
そんなに体調悪そうな顔しているのかなあ?と、家に帰った後に鏡と向かう夢乃。変わらない気がするが??
そして視察団が来エジプトしてきて、アレキサンドリア視察に向かう。和也達はチャーターバスで御一行様と視察場所を巡りホテルに戻り会食レストランに向かう。
高田夫人と夢乃はそれぞれ社用車でホテルに直接向かい、前に屋上から猫を沢山見たシーフードレストランで和也や御一行様と合流し夕食。
前にここで食べた時はとても美味しくて楽しかったのに、接待飯になるとどうしてあんまり記憶に残らない程味気なくなるのか不思議~~。
てな感想を持ちながら、愛想笑いを連発して太鼓持ちよろしく持ち上げて、ホテルへ戻り解散。
翌日早朝、ロビーに集合。アレキサンドリアのゴルフ場に向かう。
ここは何回かカイロ日本人会で着た事あるので慣れている。一人一人にキャディーがつく。夢乃のキャディーはサンディーと言う若い男性だった。
彼は 最初にいきなりバクシーシを要求してきて、既にバクシーシを含む料金は払うことになっているので拒否したら、露骨に態度を悪くしてきた。
後で聞いたら他のキャディーはそんな要求はしなかったらしいので、夢乃を甘くみて要求してきたのだろう。
いつものグループ分けで、ゴルフガチ・グル―プ(高田夫妻と和也含む)と、のんびり行きますグループで別れた。出張者の殆どがガチ・グループに入り、夢乃のグループは他の出張者3人とのんびりと行くことになった。
が、悪夢はここからスタートだった。
ガチ・グループが最初にスタートし、次に夢乃達グループがティーショットを打つために立つと、サンディーはいきなりクラブを夢乃に投げて来た。早くしろと言わんばかりに。
びっくりした。こんなことは初めてだったので。
周囲のキャディーが彼を諫めるが、彼はぞんざいに「マレーシュ」と言うが、それはエジプトあるある気持ちの入っていないムカつく「マレーシュ」だ。
むかつく。
先に進むと、いいショットでもないのに、彼はにこにこ笑顔で大げさにナイスショット!というように、手を叩いて「下手くそ―!バカじゃねー!」みたいな暴言をアラビア語でまくしたてる。
同行者はアラビア語を介さないので、表情だけで言葉を判断し、いいねえ!と親指を立てる。すると彼はしてやったりと満足そうに笑う。
腹立つ~~~!!絶対わかってしている!
こちらが接待側で事を荒立てられない事も!
同行者の男性達がアラビア語を理解しない事も!
夢乃だけがアラビア語と理解している事も!
だけど反撃できるほどアラビア語を使えない事も!!
怒り心頭とはこういうことを言うんだろうと、夢乃は屈辱的にわなわな震えた。
すると急に携帯電話が鳴り、見ると和也だった。
―夢乃!先のグリーンに猫が一列に並んで昼寝しているから気をつけなね。そっちはどう?
天の助けの声!!
夢乃は和也に現状を話した。
―わかった。夢乃が若いアジア人女性であるのも影響しているんだろう。こちらのキャディーにも説明しておく。怒っていいよ。夢乃。
和也の許可が出たので、夢乃はにっこり笑い、日本語で出張者に現状を説明する。一同が仰天したと同時に、夢乃は日本語の関西弁で、キャディーに怒りをまくしたてた!!
夢乃はもちろん関東生まれの関東育ちで関西出身ではない。
だが高田夫妻をはじめ、お付き合いしている方々は関西出身の方が多く、海外で「怒っている」という事を外国人相手に分からせるためには、慣れている日本語で、しかもインパクトの関西弁で怒鳴るのが効果的なのだと教えていただいた。
えーと、ここで書くと差しさわりがありそうなので書かないが、大阪、広島、京都等等いろんな言葉が混じってイントネーションは滅茶苦茶だけど、インパクトは破壊力あるので、キャディーはみるみる青くなった。
それを聞いていた一人の出張者がゲラゲラ笑いだし、いきなり正確な関西弁で彼に怒り出したのだ!なんと!大阪出身の方!その方は夢乃が下手くそな滅茶苦茶関西弁で怒り出した主旨を瞬時に理解し!援護射撃してくれたのだった!
かっこいい!!
客である女性が怒り出すのもインパクトあるが、男性が怒るのはインパクト度合いはその比較にはならない!
その方は更に周囲の他のキャディー達にも、英語で!サンディーの愚行を停めなかったことに言及し糾弾する。
そうなると、他のキャディー達は自分達にもとばっちりが来て報酬なくなるのは困るとばかりに、サンディーを糾弾し、サンディーは退場となった。
やれやれ。
その後は穏やかにゴルフを進め、和也の言っていた猫が1列に並んで寝ているフィールドまできた。
ホントにいろんな毛色の猫達が、芝生と言う名の雑草まみれのフィールドの上に1列で寝ている。
なんでだろう??
と、思うが猫の行動を推し量っても無意味なので可愛いで済ます。
その猫達に当たらないようにショットし、猫達を跨いで先に進む。
その日はヨーロッパからの北風が吹くエジプトにしては寒い日だったので、どうも猫達は芝生の上で日向ぼっことしていたらしい。自由気ままでいいねえ。
先に進むとガチ・グループが固まっていた。
どうも先の別グループがもたついていて、詰まってきているらしい。ガチ・グループの他に2組詰まっているので、これは午前中に回れるかどうかわからなくなってきたらしい。
「夢乃、お疲れさん。例のキャディーはどうした?」
「梅木さんが一緒になって怒ってくれたので、一発退場。私のクラブは梅木さんのキャディーが持ってくれているよ」
「あはははは。そうか。梅木さん!ありがとうございます!」
実は梅木さんはタイ駐在をしていたことがあり、似たような経験をしたことがあるそうだ。
海外でキャディーはプロを目指している人や、リタイアした人がしていることが多い。なので中には、外人の金持ち(でもないんだけどね)が下手くそに偉そうにプレイしているのを見て、イラついてああいう態度をとる者もたまにいるんだそうだ。八つ当たり?
でも大概、毅然とした態度を取れば次回からな舐めてこないと。
そんな話をしたり、仕事の話をしたり、2回程キャディーさん達が買いに行った飲み物を飲んだり、ラフに入った誰かのゴルフボールを拾ってきた子供達が売りに来たり、その中から自分達のボールを見つけて回収してバクシーシあげたりとかしたりしているうちに、やっと順番が回ってきた。
その後はガチグループは高速で、のんびりグループも後ろに5組ほど溜まっているので、大慌てで打ちまくってなんとかハーフを回り切った。
クラブに戻ると、日当たりのいい花壇の上に、猫達が1列に並んで寝ていた。
なんだろう??アレキの猫は1列が好きなのかなあ?と、首を傾げた夢乃であった。
追記:
ゴルフ接待って結構ありました。上手ではないし好きではないけど、知らない体験をするのは好きなので嫌ではなかったです。エジプトでブちぎれそうになったのは、夫婦喧嘩を覗いてそんなに何のですが、サンディーの態度はそのベスト3のマジで頭に来ました。
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