第57話 プロペラ機とシャルメルシェイクと猫 (白黒猫モモとファリーダ)
「明後日の金曜~土曜に掛けてシャルメルシェイクに行かない?」
「シャルメルシェイク?急だね?またなんで?」
「シャルメルシェイクに日本人がお店を出したらしくて、その応援に行こうということになった」
「へえ。レストラン?」
日本人がお店を出したは、大概レストランが多い。
「レストラン兼、ダイビングショップ兼、cafe?」
何となく想像がつく。
「突然なのはなぜ?」
「元々は2~3人で行く予定が、間違いでホテルに10人予約したらしんだ」
「2~3人がなんで10人?」
わけわかんない。
「家族も一緒とか、会社の人も一緒とか勘違いしたらしい」
「成程」
全然理解できないけど、成程と言わないと話は進まない。
原因はどうあれ、残り7人の宿泊客を集めないとキャンセル料等出るのね。恐らくそれに合わせたレストランの予約だのなんだの…金銭的な問題か、メンツの問題か、日本人の沽券に関わるか…等等ね。
そしてうちは子供がいなくて身軽で行動が楽!と、思われているから、こういう話しがよく回ってくるシステムなのだ。
まあ旅行は好きなので行くのはいいけど、いつも突然なのが困るなあ。
嫌でも、和也がこうして話を持ってきたときは、100%決定なので余程具合悪くなければ同行になる。そして悲しいかな…夢乃はここの気候があっているのか?慣れたのか?そんなに具合悪くなることはすくないのだ。
「じゃあ、ヤシラにファリーダをお願いしていかないとね」
「あ、ファリーダも行けるよ」
「え?」
「うちは猫がいるから、妻はいけないと言ったら(一応、私の分は断りいれてくれていたのね)飛行機はほぼ貸し切り状態だから、猫もOKと言われたんだ。ホテルもOKだって」
「何か手続きとかいるんじゃないの?間に合うの?」
「ゲージにいれてそのまま飛行場に来いって」
「?」
てなことで半信半疑で「猫の搭乗拒否」で帰宅も考慮に入れて、夢乃達は当日空港にファリーダを伴い向かった。
なんと他にも猫連れの方がいて驚いた。(初対面)その方は、カイロから少し離れた小さな町で暮らしている日本人なんだそうだ。カイロ以外で生活している日本人の方って、意外といるんですよ。うんうん。
なのでメンバーの殆どが初対面の団体ツアー。
飛行機はプロペラ機で、暑いを通り過ごした熱い空港を歩いて飛行機まで行き、タラップで乗り込む感じ。
プロペラ機は初めてなのでわくわくする。
機内は1×2シートで、古い飛行機の臭い、機械の臭い、オイルの臭いウア空港の雑多な臭いに、いろんな人達の体臭の臭いが混じってて、そこに客室乗務員がスプレーでジャスミンの香りを撒いていくので、無臭に慣れている日本人にはカオスの世界。でも嫌いじゃないよ。うん。ホント。
ファリーダと白黒猫のモモ(もう1匹の猫の名前)は夢乃達の横の空いている席の下に置くように言われた。ベルトで止めていかれる。
ファリーダは空港に着いた時から、もうこういう時は騒いでも無駄と悟っている旅に慣れている猫なので、隅に丸くなり目を閉じじっとしている。
まるで「私は石」と念じているようだ。
モモはパニック状態で、声の限りに叫び続けているので(周囲の人達は全然平気のガン無視)ホテルに着くころには声が枯れているのではないかと心配。飼い主さんは離れた席でまったりお茶を飲んでいる。慣れているなあ。
お客は私達団体の他に観光客と仕事で行くエジプト人が数名。結構満員。
客室乗務員?が、指で「1、2、3…」と人数数えて(学校の点呼のようだ)、全員いることを確認したら、さっさかドア閉めて座ってシートベルト閉めると同時に、飛行機スタート!
凄まじいエンジン音に、モモの声が3倍大きくなった。ファリーダはきっと更に石化しているだろう。
大丈夫だよと傍に行きたいけど、移動はできない。
がんばって!!ファリーダ!モモ!!
てなことで、ちゃっちゃかプロペラ機は滑走路に出て、ちゃっちゃか離陸して、ふらふらしていた機体をあっと言う間に整えて一路シャルメルシェイクに向かった。
機内はジャンボ機よりエンジン音喧しい。でもちゃんと、水かジュースにお菓子が出るのがそうい所はきっちりしているのが流石。お手拭きはお決まりのきっついジャスミンの香りのお手拭きなのはお約束。
窓からの風景はジャンボから見るより地上が遥かに近くて、ナイル川の横に広がる農地で、農作業にいそしむ人の姿や、巨大な農作業機械、ヤギや白い牛の姿が見えて面白い。
ナイル川を行き交う船も優雅に悠々として見える。
やがて砂漠地帯に入り、いくらエアコンを掛けても機内は暑くなり、皆無言になる。死ぬほど暑いわけではなく、れいの機外からじりじり暑さが忍び込んでくるような暑さね。
途中で席を立っていいというのでファリーダの様子を見に行った。ファリーダはゲージの隅に入れておいたタオルの中に入り込んで見えなかった。
隣のモモもあきらめたのか?同じくバスタオルか何かに潜り込んでいた。
その時、ぷん…と、何か猫のおしっこの匂いがした。でもエジプトはどこでも猫のおしっこの匂いがするし、そういう臭いの体臭の人も結構いるので、まあその範疇の何かの匂いと思い気にしていなかった。
だが…
シャルメルシェイクの空港につき、ゲージを抱えて降りて、用意されたバスに乗り込んでホテルに着いて、コテージタイプの部屋に入った時に(要は雑多な臭いがなくなって)その臭いが何かわかった!!
なんと!ファリーダのゲージが臭い!!
最初はファリーダがおもらししたのかと思ったが、ファリーダも中のバスタオルも濡れていない。
臭いはキャリーケースの下部!
おしっこで濡れていて乾いてかぴかぴになっていた感じ?すっごく臭う!!!
とりあえずゲージとファリーダをバスルームで洗った。ファリーダには申し訳ないが、ホテル備え付けのシャンプーを薄めて洗った。猫用のバスタオルは破棄。ゲージは外に干し(すぐ乾くしね)、ファリーダはタオルドライ。ホテルに頼んで、追加タオル注文した。
ファリーダはちゃっちゃか外が見える窓際の椅子にのっかり、体をなめなめしつつ
窓の外を眺めていた。
窓からは白い砂浜と青い海が見える。波は穏やかで、遠くに小さくタンカーが何となく見える。蜃気楼かもしれないけど。
「あとで散歩に行こうね」
と、言うと、嬉しそうに喉をごろごろ鳴らした。
さて、ゲージが臭かった原因は、その夜の夕食会(例の日本人レストラン)でわかった。
なんと!モモちゃんが緊張とパニック極限で‥おもらししていたらしい。
モモちゃんは中のタオルもおしっこでびちょびちょになっていたらしい…(同じくホテルのバスタブで洗ったらしい)
うわああああ!!!
本当は飛行機から降ろす時から気づいていたが、客室乗務員?は、そんなのどーでもいいから早く降りて!だったらしいので、そのままホテルに来たと…。
「大丈夫かなあ?」と、心配している彼に、みんなが「客室乗務員がいいといったんだからいんだよ」と、ぽんぽんと肩を叩いて慰めている。
モモちゃんは飛行機とおもらしと知らない場所で洗われたショックで、ベットの中に籠城して出てこないらしい。旅慣れていない猫にはしょっぱなプロペラ機は可哀そうだったね。
彼はモモちゃんが心配で、早々にホテルに戻った。
私達とファリーダは、夜の静かな海岸を散歩し、朝の眩しい既に熱い海岸を散歩し…早々に部屋に戻った。
和也達は朝早くにダイビングに行き、私はファリーダとひなが一日、プールサイドや海岸のパラソルの下でのんびりした。
赤いリードをつけて、しっぽをぴん!と立てて優雅に歩くファリーダはどこでも写メに撮られて人気者だった。本当は犬じゃないの?と、言われたりもしたけど、そうかもしれないなあとも思う。
ジェフ達はファリーダとの旅はこんな感じで楽しかったんだろうなあ。
ジェフ達元気かなあ?
モモちゃんはとうとう最後まで、ご飯とトイレ以外はベットから出てこなかったそうだ。残念。
追記:
猫を飛行機に乗せるというのは日本ではハードルが高い気がするのですが、
エジプトでは荷物の一部というか気にしないというか
おおらかというかなんつーか。
お漏らしして機内汚しても気にしないというかなんというか。
おおらかです・笑
エジプトは広大なので飛行機で移動は車で移動感覚でしたね・笑。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます