第54話 メイドと猫 (タマちゃん)
帰国が決まった田中家が最後のヨーロッパ旅行に10日間かけていくというので、愛猫のタマちゃんを預かることになった。
まあ家は広いので、相性悪くてもどこかの部屋をテリトリーにして過ごすだろうと、結構エジプトに住んでいると日本人も感覚が大らかになってくる(笑)
タマちゃんは白黒のブチ猫。カイロはゲジラ生まれのゲジラ育ち。
ゲジラ・スポーツクラブのプールで家族で遊んでいた時、何かに追われて逃げ込んできてプールに飛び込んで?溺れかけていたのを、田中氏に助けられて、そのまま飼い猫になったという、ドラマチックな経歴の猫ちゃんである。
よく預かる高田支社長の飼い猫ベルダンディー(アクアリウムに帰国する某国カップルに捨てられた所と高田マダムに助けられた猫)とは仲が悪いと田中マダムは言うが、実は仲がいいんだと思う。
恐らく猫好き猫なんだろうなあと思っていたら、タマちゃんはうちに連れてこられて、キャリーケースから出されると、家中をしっぽピン!して確認して回り、田中マダムが帰るときには、ファリーダと猫部屋でまったりとしていた。
因みにタマちゃんがお家探検をしている間、ファリーダは後ろからずっとタマちゃんのお尻の匂いを嗅ぎながらついて回っていた。謎行動である(笑)
でも可愛いので許す!
ファリーダとタマちゃんは本当に仲が良く、いつも一緒に固まって寝ていたし、いつも互いを舐め舐めしあい、ご飯も仲良く食べた。
そんな感じで穏やかに10日間が過ぎ、田中家が帰ってきたその日に迎えに行きたいというので、大変だからという事で田中家に連れていくことになった。
田中家につくと、家の中は賑やかな声であふれかえっていた。メイドがドアを開けてくれて、優雅な田中マダムにこにこしながら出迎えてくれた。が、メイドはタマちゃんが入ったキャリーケースをみるなり嫌な顔をしたのが気になった。
帰ってきて大変だろうからと、タマちゃんを渡して直ぐに帰ろうとしたが、お土産話をしたかったらしく、田中マダムに中に招き入れられた。
パリで買ったという繊細なお菓子やジャム等をお土産にいただき、写真を見ながら楽しい旅行話をお聞きしてていた。
千香子ちゃんはバレエに付き添った関係ですっかり打ち解けてきていて、夢乃の横に座り、いろんな思いで話をしてくれる。可愛い。
下の妹の真知子ちゃんはお転婆盛りの悪戯盛りの幼稚園児なので、何かジュースやお菓子をこぼして田中マダムに叱られていた。
その後始末を、まだ年若い感じのメイドさんが床にかがんで拭いていると、どこからともなくタマちゃんが走ってきて、どーん!!といきなりメイドさんの背中に飛び乗った!!
びっくりしていると、メイドさんは慣れているのか?、「ラ!(No!)ラー!!ラ!!ムシュ・クワイエス(ダメだよ)タマ!!」と叫んで、振り落とそうとするが、タマはどかない。
しかも立ち上がっても背中に爪をたててぶら下がり、メイドさんは悲鳴を上げる。田中マダムがタマちゃんを抱き上げるようにとり、床に置く。
が!
またメイドさんを狙うモードで追いかけ、背中に飛びつく!悲鳴!田中マダムがとる。床に置く。また狙うとエンドレスで繰り返す。
「びっくりしたでしょう?何故か分からないけど、どうもタマの中ではマージ(メイドさんの名前)はヒエラルキーが下らしくて…いつもこうして絡むの。下というか、マージの事が好きなのね。きっと」
「そ、そうなんですか(汗)メイドさんは大丈夫なんですか?あの、爪、立ててません?」
「いつものことなので大丈夫よー」
鷹揚に笑う田中マダム。本当に大丈夫なのか?と、ひくつく夢乃。
タマちゃんは嬉しそうにその後もメイドさんの後を追いかけて、ガラべーヤの中に潜り込んで足に絡んだり、また飛び乗ったりいろんな邪魔をしていた。
ううむ。
後日談だけど、田中御一家が帰国の時、メイドさんが1番別れを惜しんだのはタマちゃんだったらしい。
本当に。
やっぱり仲がよかったんだね。
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