第47話 上からの落下物注意と猫 (ファリーダ)


 リビングで和也から頼まれた某サークルの資料作りをパソコンでしていたら、外の上の方から凄い音が聞こえて来た。


 ガシャーン!みたいな、金属の何かぶつかるような音。


 それと同時に何か黒い物体が窓の外を落下してきて、リビングの一部に面している窓の外に、ゼラニウムの鉢が置かれた植木棚?があったのだが、それを薙ぎ払い落下していった。


 いや、もうびっくりで声も出ないし、動くこともできずにポカーン!

 ファリーダは、何故か寝室で寝ていたのに驚いて走ってきて、私の足にぴったりくっついてる。

 え?私の足が安全地帯???

 嬉しくなって抱き上げると、腕の中で頭を下にして丸くなる。余程びっくりしたらしい。


 暫くすると、下の方でドガシャーン!と凄まじい音と、ギャー!ワー!の凄まじい悲鳴と車のクラクションの音。怒声に罵声。

 

 なんだ?なんだ?と窓を開けて覗こうとした瞬間に、ヤシラに「危ない!」と服を掴まれ、引き戻された。


「上からまだ何か落ちてくるかもしれない!危ない!!」


 確かにヤシラの言う通り!迂闊でした!!


 うちの植木鉢柵?も被害にあったので、ヤシラが何が起こったか確認に行くと出て行った。


 そして、マダム一人になるから、誰が来ても絶対に鍵を開けるな!と、言い残して。


 お留守番の子ヤギみたいなこと言われたなあと思いながら、鍵をかけてじっと待ってると、和也から電話が来て驚いた。


「ヤシラが俺とオーナーの所に電話をかけて来たんだ。どうも上の階のどこかで、網戸かなにを落としたらしい。

 うちだけでなく、他の家でも窓ガラス割れたり、駐車していた車が凹んだり結構大事になっているらしいから、夢乃は絶対外に出てはだめだよ。後でオーナーも来るらしいから」


「わかった。網戸??網戸だったんだ。人でなくてかったね」


「本当だよ。何かあったらまた連絡して」


「わかった」

 

 電話を切ってすぐにヤシラがカンカンに怒って戻ってきた。どうも網戸を落とした家の者は、自分のところでは無いと責任を認めようとしないらしい。

 窓の一つの網戸が無くなってるのに、そこは元から無い!と、言い張り、その落下した網戸がその家の物か証拠があるのか!と、反論してるらしい。


 あー。海外あるあるだねー。


 これは揉めそうだなぁと思ってると、オーナー夫妻が目を三角にしてやってきた。

 ひとしきり挨拶を交わすと、その被害にあった窓を見て、棚の残骸を見て、猛り狂ったようにまた出ていった。


 ヤシラは直ぐに四重の鍵をがっちり掛ける。

 うちは、ドアに付いている上下二つの鍵。そして内側から掛ける鍵が二つある。それでも足りないと、和也は防犯カメラに防犯センサーも付けてある。

 

 しばらくして、オーナーが戻ってきた。網戸の住人に抗議と破壊された棚や鉢の賠償請求に行ったらしいが、やはり認めなくて大喧嘩になったらしい。


 オーナーやヤシラが大声で怒鳴りまくるから、ファリーダは夢乃の腕の中で更に頭を体の中に押し込んで小さくアルマジュロみたいになってた。


 大声がこんなに苦手とは思わなかった。長距離の車移動も旅も平気なのにね。


 和也が早めに帰宅すると、ファリーダは少し落ち着いたようで、やっと夢乃のそばを離れた。でもビクビク及び腰で。尻尾も下がって、耳も下がって警戒モードだ。


「ファリーダが1番被害受けた感じだよ。ずっと怯えてる感じ」

「猫の聴覚的には衝撃的な音だったのかもね。ファリーダー、おいでー◯ュールあげるよー」

「あ!和也ずるい!あげるなら私があげる!」


 てなことで、チュールでご機嫌とって、やっと落ち着いたファリーダ。

 でも和也は少し心配そうな顔で今日の顛末を話す。


 要約すると、網戸を落とした家は断固として認めない。

 被害は網戸が落ちた所から、一直線に下のアパート全部に被害が出たらしい。

 うちの様に、棚?の破壊。

 それらを巻き込んで落下した先では、窓ガラスにヒビ入っり、割れたり。

 壁にもきずや破壊痕跡。

 真下に溜まってた車の屋根が凹んでフロントガラスヒビ。

 その周囲の車もいろんな破片直撃で、凹んだら傷がついたり。

 下を歩いていたら外国人を含む通行人とバーブーやが破片に当たり怪我。

 道路反対側の建物にも被害があったらしい。


「まあ、被害の交渉はオーナーに任せておけばいいんだが、問題はオーナーが苦情を言いに行ったから、ここの部屋がバレてる。

 こう言う場合、嫌がらせがうちに来る可能性があるので、暫く気をつける様にしたほうがいいらしいよ」


「え?!うちが文句言ったんじゃ無いのに?!」

「ここのオーナー、所有者が文句言ったから、同じことらしい」

「嫌がらせって、、何?」

「過去にはゴミとか汚物撒かれたりとか。ドア蹴破られたらとか、暴言書かれたりとか、玄関外の泥落としマット捨てられたりとか」


 軽犯罪から子供の嫌がらせか?!なのまでバリエーションあるんだねー。嫌だなぁ。


 とにかく何かされては嫌なので、和也は人感センサーライトもつけて、アラビア語で監視カメラ作動中!と言う紙を印刷して貼ったり、マットとか玄関外に置いてあった物は全部中にしまった。  


 そのおかげか?3日経っても何事も起きなかった。

 が、事は5日目に起こった。


 朝起きたら、玄関の前にマグロの頭みたいなのが、どーん!と、置かれてたのだ。

 上下階からもぎゃー!わー!声が聞こえてきたので、和也が見に行くと、複数の人達と一緒に戻ってきて、みんなで写真を撮り、また上に行く。


 戻ってきたら和也の説明によると、網戸落下被害にあった家の前に、色んなモノが置かれていたらしい。

 

 うちはマグロ?みたいな大きな魚の頭。下の階はなんかの不気味な安っぽい人形。他の階では、エビの食べかす。スイカの食べかす、鳥の丸焼きの食べかす(骨)、牛の脛の骨?干からびた鳥の死骸などなど。

  

 うーん。その中で言ったらマグロ?の頭がまだまし?いや臭いけどね。

 

 防犯カメラをみると、目の部分以外全部を隠した、ガラベーヤを着た太った男が写っていた。

 直ぐにオーナーに電話して、オーナーがきてマグロの頭を確認し、写真撮り、防犯カメラの映像をコピーして持ってった。


 ファリーダは私達の寝室のクローゼットの私の服の下に入り込んで出てこなかった。

 チュールも効かなくて、余程オーナー達の大声がトラウマになってしまったようだ。

 可哀想に!!


 網戸事件はどう対処したのかわからないけど、警察は一回も来なかった。

 後日、その網戸も持ち主の息子と名乗る男性が来て、なんか菓子折りみたいに高級チョコのでっかい箱の詰め合わせを持ってきた。

 どうやら決着がついたらしい。


 謝ると言うより、これあげるから、じゃーねーと言う感じ。

 

 オーナーに聞いたら、破壊された棚とかの代金は回収したので、そのチョコは食べていいよと言う。

 でもなんかねー。食べるのなんか、、だったので、ヤシラにあげたら喜んで持ち帰った。


 ファリーダはその後もエジプシャンの男性の大声が聞こえると、脱兎の如く逃げる様になってしまった。

 くそー!チョコくらいでは許せん!

 と、思ったけど、苦情を言うスキルないので、ファリーダの心の傷が癒える様にもっと甘やかそうと思う夢乃達であった。

 

 エジプトでは上から何が落ちてくるかわかんないので気をつけてねー!






 

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