第46話 鳩(ハマーム)とトイレ(ハンマーム)とオウム (極彩色オウムとファリーダと鳩)
夢乃はアラビア語をイギリス育ちのエジプシャン、マリアから習ってる。基本会話は英語。でも彼女の英語はイギリス英語なので、アメリカンイングリッシュ育ちのう夢乃とは、時々発音や話が噛み合わなくて、よく2人でおかしくて笑ってしまう。
アラビア語も発音が難しくて、夢乃の鳩(ハマーム)はトイレ(ハンマーム)と聞こえるらしくて、これもよく笑い合う。
ちゃんと言ってるんだけど、難しい。
「夢乃、あなたは鳩料理(ハマームマシム)好き?」
「好き好き!小骨多いけど、美味しいよね」
「はい、ハマーム」
「むう、、ハンマーム」
「あはははは!それではトイレですよ」
「ちゃんと言ってるんだけどなぁ」
てな感じで良く笑う。バカにしてるんじゃないよ?ふざけてる感じかな?
何故、鳩の発音になったかというと、マリアの家では鳩を飼ってる話から、発音がおかしいという事に気付いたのだ。
エジプト人は鳩を飼うのが好きらしい。
マリアのお父さんも、カイロに働きに出て来た時、田舎にある実家のピジョンタワーで飼ってた鳩を持ってきて、ずっと繁殖させて育ててるそうだ。飼う鳩は大概、真っ白な綺麗な鳩。その数、40羽!!
40羽!(想像もつかない)
食べるためじゃ無く、鳩レースに出すためらしい。食べる為にもレースに出すためにも飼っている人もいるらしいけど。
街中のアパートメントのベランダや屋上に、カラフルな小屋が見えるんだけど、それが鳩の小屋らしい。
カイロでは朝と夕方になると、どこからともなく、ざーーっ!!と言う感じて鳩が纏まって飛んでくる。
それは朝に鳩小屋を開けて外に出した時と、鳩小屋に戻ってくる時の鳩らしい。
戻ってきた鳩を、毎回確認するらしいが、時々知らない鳩が紛れ込んでることはままあるらしい。反対に帰ってこない?もしくはどかの鳩小屋に行ってしまう鳩もいるんだそうだ。
何故わかるかと言うと、識別できる目印が鳩にはついてるから。
お気に入りの鳩がいなくなると、必死で探すこともあるらしいけど、、どうやって探すんだろう??
ところで、うちのベランダには鳩ではなく、よくオウムが飛んでくることがある。
オーナーがベランダ用にと観葉植物を置いていってるんだけど、それ目当てで来るらしい?カポックとか幸福の木とか極楽鳥花のでっかい花が咲くのとかで、実はならないんだけど。
寝床にしているわけでもないけど、涼んでいるのか??謎。
で、そのオウムがまた派手で…。青にオレンジに黄色羽を持つやつなの。この鳥が来ると、フアリーダは大興奮して、カカカカカカ!と、変な声を出して匍匐前進する。
和也は面白がって、オウムとフアリーダの動画を呆れるほど沢山撮ってる。
私はフアリーダが飛びかかり、なんかの弾みでベランダの下にうっかり落ちないか心配なので、ピシャリ!と窓を閉めてしまう。
フアリーダは恨めしそうに私を見るけど、危ないから!ダメだから!
マリアはアパートメントに住むエジプトの猫は高いところに慣れてるから、そんなヘマはしないと、心配性だなぁと笑うけど、わかんないじゃない?!
オウムは夕方のコーランの時間になると一斉に飛び立ち、緑の森となっている公園やホテルや各国の大使公邸に生える大きな樹木の方に飛んでいく。
緑、白、カラフル青や赤や、いろんな色の鳥が飛んでいるのは凄い光景。野生なのか?それとも飼っていたのが逃げ出して繁殖したのか?
分からないけど、野生は病気を持っているここともあるので、日本人ご家庭の中には鳥よけをベランダに出していたり、ネットを張るお宅もあるらしい。
ヤシラはしても鳥は飛んでくるから意味ないと言うけど、毎日掃除してくれるからありがたいです。
ありがとうヤシラ。
ある日、マリアが香ばしい匂いのする袋をぶら下げて来た。
「マリア、それ何?」
「これは、ハマーム・マシム」
え!?夢乃は思わず一歩下がる。まさか!!それは鳩!love!のお父さんの!?
「え!?まさか…お父さんのハマーㇺ?」
マリアはゲラゲラ笑う。
「おじさんがハマーム・マシムのお店を開いたの。それで貰って来ました。食べますか?」
もちろん、アイワ!だ。
ヤシラに渡すと、マリアはヤシラ用にも持ってきたと別の袋を渡す。
マリアはヤシラと結構仲がいい。
階級的にアリアは大学教授している家庭出身で、ヤシラはメイドなどの使用人階級?出身で、全く違うんだけど。
エジプトは階級がはっきりしていて、関係性もきっぱりしている。未だに使用人に対して酷い言動をする雇人の話はよく聞くし、前の英語教師の先生は(白人〇ギリス人)ヤシラの事を顎で使って、夢乃は酷く不愉快な思いをしたことがある。
(帰国してくれて万々歳~~!)
マリア曰く、あまり差別感がないのは、欧米生活が長かったからかなあ?という。
え?でもあの〇ギリス人は??要はその人の人間性なんだね。
そして、ヤシラの人間性が好きだと言う。ヤシラは凄く正直でいい人だから大事にしなねと太鼓判をおしてくれた。
と、いう事で、その日の夕飯はハマーム・マシムに決まり~!
エジプト風雰囲気を出すために、ベランダで街の風景を見ながら食べようという事になった。
ベランダのガーデンテーブルにクロスを敷いて、お皿を並べて、エジプトビールにエジプトワインを用意。
ハマーム・マシムにヤシラが買ってきてくれた、エイシと手手作りタヒーナ。
スープはヤシラが、ファリーダ用にむしってあげた鳩の骨でとった出汁で作った、レンズ豆のスープ!(味、足りなかったので、ハイフ―(キューブのスープの素)を追加。
綺麗に洗った野菜のサラダ。
それらを並べていると、バサバサと羽音がする。
ん?と、見ると、あの極彩色のでかいオウムが、手すりに止まっている。ベランダのソファーに寝ていたファリーダが直ぐに反応して、カカカカカ!言いながら身を低くした。
その瞬間!!
切り分けて、小皿に取り分けておいたハマーム・マシムを、むんずと掴んで、ばっさばっさと飛び去った!
その間、数秒!!!
唖然として見ていた私達は慌ててベランダに出ると叫んだ。
「おーーーい!!それ!鶏肉!!共食いだよおおおおお!?」
でもオウムは知らんぷりで、階下の公園の森の中に消えてしまった…。
オウムが飛び去った下では、中に詰め込まれていたご飯類が落ちて来たらしく、ぎゃー!ワー!の叫び声と、言ってはいけない罵声が響いてきた…。
私達はそそくさとベランダから撤収し、家の中で全部温め直しして、洗い直しいて夕飯にしたのは言うまでもない…。
あのオウム・・・・マジで食べていないよね??エイシと間違えたんだよね?
まさかの…肉食か???
色々謎な、ハマーム・マシム事件であった。
因みにマリアのおじさんのハマーム・マシムは絶品だったので、知り合いに紹介してあげた(笑)
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