第44話 オアシスと聖カテリーナ村と猫と犬 (猫率30%犬30%)

 

 アイン・ムーサのメナ(モーセの泉)に、場違いな高級大型ベンツが停車し、そこから現れたのは、丸藤夫妻の上司夫妻、Bメーカー支社長の三輪夫妻。

 お尻の可愛いコーギーの愛犬サムと一緒に登場!


 因みにサムは支社長の元ゴルフ仲間の、帰国したオーストラリア人の某支社長夫妻から譲り受けたワンコ。

 オーストラリアは検疫が滅茶苦茶厳しくて、特に帰国当時に何かあったらしく国外からの犬の輸入(犬猫はモノ扱いなので輸出入品扱いになります)が不可だったらしく連れ帰れないので、ゴルフ仲間がゴルフ勝負して、見事三輪支社長が勝ち、サムを家族として迎えたそのだそうだ。

 サム!よかったね!


 因みにサムは丸藤夫人が大嫌いなんだそうだ。

 三輪夫人の気持ちを察しているのか?もしくは三輪宅を訪れた際に、丸藤夫人が何か虐めたんじゃないかと色々陰で言われている。

 

 サムは駆け寄る丸藤氏には無いしっぽを振るように嬉しそうな顔をし、少し及び腰の丸藤夫人には牙を見せて低く唸る。


 うお~~~!あんなに犬が嫌がる反応は、エジプトに来て初めてみたよ!!

 丸藤夫人が何かしたのではないかという噂も、あながち陰口でなく事実なのかもしれない。


「おおおお~!丸藤君!聡子さん!それにみなさんも!奇遇ですなあ!もしかしてシナイ山にご来光を見にいかれるのかね?」


 うわ~~!三輪支社長!大根すぎますー!セリフ、棒読みです~~!!

 

「あなた、お二人がシナイ山に行かれる報告を受けて、自分も行きたいと言い出したんじゃないですか。重ならないようにしたのですけど、日付、間違えましたのね?」

 

 そう穏やかに言う三輪夫人は、丸藤夫人が流した極悪マウント上司とは思えないほど、華奢で小さくて(身長が150センチないとお伺いしている)にこにこ笑う笑顔が板についている柔らかなオーラの夫人だ。


 この夫人が大嫌いになる程、何したんだ??丸藤夫人…。


 そして三輪夫妻は夢乃に気付くと、大げさに腕を広げて傍に来て、大げさにハグをする。いや、だから大根過ぎます、三輪夫妻(苦笑)。でもここはエジプトなので、大げさな方がしっくりするのがまた不思議。


「夢乃さん!あなたもご一緒でしたのね!」

「はい、ファリーダも来ていますよ」


 夢乃は大きなヤシの木の下のベンチの上で、リード付きで寝そべっているファリーダを指さした。


「まああ!ファリーダも?」


 いそいそと三輪夫人はファリーダのそばによる。そこでひそひとと話してきた。


「本当はホテルの夕食時に登場する予定だったんですけどね、主人が急げ急げとハッサンを急かしてね。ハッサンも面白がって凄いスピードを出すものだから、ここで追いついてしまったのよ。驚いた?」

「驚きました。そして助かりました」

 

 ちらりと三輪夫人はニコニコ笑いながら三輪氏と話す丸藤夫人をみた。

「うちの関係者がもうご迷惑かけてしまったのかしら?」

「はい。でも、ここまで各自車で移動だったので、別行動でいましたからそんなに‥」

「でもあったのよね。本当にごめんなさいね」

「いえ!三輪夫人のせいではないのでお気になさらないでください!」


 謝る三輪夫人に、三輪夫人が悪いわけではないので、夢乃は焦ってしまった。サムはぴょんぴょん撥ねるように、三輪夫人にじゃれついている。三輪夫人の気持ちを推し量って慰めているのかな?可愛い!


 そんなこんなで、一同はシナイ山に向かい移動を開始!

 海岸沿いをひたすら走る。


 途中、眩しいくらい太陽を反射する海の中に、なんかの櫓?何かの工事途中の鉄骨みたいなのが見えて、あれは何?と聞いたら、油田だよと教えてもらった。

 油田て、砂漠のど真ん中にあるイメージだったので、びっくり!エジプトって産油国でも有名なんだそうだ。


 やがて車は左に曲がり、スエズ湾とサヨナラして、白茶けた山あいの道をひたすら走る。乾いた土地に申し訳程度の草が生えているくらい、からっからに乾いている。

 

 険しいごつごつした山間の中に、ヤシの木が密生するオアシスの村が現れる。

 ここはワディ・フィランというオアシスで、モーセが杖で岩を打って水を出してたとされる伝説の残る場所なんだそうだ。モーセと民がはここに40年間居留していたらしい。こんななんにもない土漠と山の間でどういう生計を立てていたのか、不思議。


 なんにもない感じの村なんだけど、結構キリスト教徒の人達が訪れてはお祈りを捧げたり、盛んに写真をとったりしているそうだ。


 そしてまた延々とごつごつした山と乾燥しきった土漠の真ん中の黒いアスファルトの道をひたすら走る。

 

 眠たくなり眠っていたら、何時の間にかシナイ山麓のセント・カテリーナ村に到着した。


 標識のある十字路を真っすぐ行くとセント・カテリーナの町。

 左に行くとがセント・カテリーナ修道院。

 右に行くとが観光客等の停まるツーリスト・ビレッジ、要はホテルのある地区。


 ここら辺の建物は全部、周辺の石丸みを帯びた大きな石を積み上げ、セメントで固めたような石造りの建物ばかりだった。

 建物を繋ぐ道も、塀も全部、まるっこい大きな石を積み上げて作られたもの。

 草木は少なく、四方をごつごつした赤っぽい岩肌の山が迫っているし、空が異様に近い気がする。


 もの凄い異世界感があるり、不思議な感じ。


 そして寒い。

 さっきまで暑くて暑くて仕方なかったのに、上着がないと寒さが染みてくる感覚は凄い久しぶりな感じ。もうここは標高の高いところなんだと実感する。

 

 べドウイン風ロビー?お外のロビー??でチェックインを済ませ、鍵を貰い各自部屋に向かう。夕食は小高い上に立つ丸い形のレストランで、バイキング一択(笑)

 それを食べたら、全員で集まり翌日の確認をする。

 

 出発は夜の2時!

 なので今のうちに登山の準備をし、早々に寝る。

 起床は1時。

 全員が携帯電話等のタイマーをセットする。ホテル側でモーニングコールで、各部屋のドアを叩いていくらしいが、あてにはならないので自己責任でタイマー予約する。

 

 夢乃達も打ち合わせが終ると、早々に部屋に戻る。石造りの部屋は内装も石の壁。こういう山のホテルにしては、清潔感もあり、シャワーにトイレもちゃんと各個にあるので、いい感じだと思う。

 ファリーダはご飯を食べたら、さっさかベットの中に潜り込んで寝てしまっていが、私達が戻ると、しっぽを立ててぐるぐる喉を鳴らしながらまとわりついてきた。


 明日の準備でりリュックやダウンジャケット等を用意していると、窓を誰かがコツコツ叩く。

 見ると三輪夫妻がサムを散歩させているところだった。三輪夫妻は何度もここにきているので慣れているらしく、準備は既に終えたとのこと。ホテルの敷地内をサムと一緒に散歩して、部屋に戻り、シャワーを浴びて直ぐに就寝した。


 夜中にあちこちから様々な音楽の目覚ましコールが鳴り響き、私達の携帯電話もけたたまし起床をコールする。

 外は真っ暗だった。

 ファリーダも目を瞬いて起きて来た。


続く!

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