第40話 停電とマイヤー君受難と猫 (まだ模様の子猫ちょっとだけ)  

 (題名を読んで、話の筋がわかった方は、きっとエジプト通?笑)


 カイロに住んでわかったけど、日本ってインフラが本当に発達してて完璧なんだなぁと思う!

 安定したガスに電力供給。蛇口をひねれば常に綺麗な水。停電なんて台風や大地震の時位じゃない?電車やバスの正確さや清潔度!公衆トイレの清潔度!道路や周辺のゴミのなさ!!!上げたらきりないけど…。


 はい。そーゆーことで!我が家は絶賛停電断水中です!

 暑い~~~~~~~!!!

 

 朝起きたら停電してて(暑くて起きた)。しかも同時に断水!!

 なぜ停電と断水がセットかというと、このビルは上水道をポンプで上にあるタンクに運ぶシステム?なので、電気が来なければポンプが止まるので、断水もセットになるらしい。

 

 とにかくトイレは1回目は流せるが、2回目が流せないので、バーブ―が各階にタンクに入ったお水を階段で!運んできてくれた。でもいつ復旧するかも原因もわかんないというので、大事に使わないと!!


 朝食は簡単にパンとジュースで済す。洗い物が増えても水が使えないのなら以下同文。

 

 和也は涼しいエアコンの効いた会社に行っちゃうし、ファリーダも涼しい場所見つけて潜り込んでるし。ヤシラも暑いのには慣れてるし、窓を開ければ風が入るので問題ないと元気。


 元気ないのは夢乃だけなので、和也の提案でスポーツクラブに行ってプールで泳いでこようと思う!


 タクシーに乗って(最近は慣れて来たのでタクシーにも乗るよ)スポーツクラブに行く。ここは会員制で、会社が互助の為に入会してるので、夢乃達も使えるのだ。

 大きな商業ビルに入っていて、目の前がナイル川!ナイル川を見ながら、ランニングができるの!素敵でしょ!

 設備や内装とか器具は日本と同じだと思う。詳しくは分からないけどね。


 会員カードを見せて、ロッカーのキーと、タオルとか一式貰い着替え室で着替え(ここは専用のユニフォームに着替える)。


 とりあえず、ナイル川見ながらランニングし、終わると暇そうにしているマシンの指導員達がおいでおいでするが、「ラー!」と、断りプールルームへ移動。

 専用の着替え室で水着に着替え(水着は貸出しもあるが、水着の規定を守っていれば自前OKなので自前を持参)、まったりコースでのんびり泳ぐ。


 ふと気づくと、数名の日本人マダムがいることに気づく。夢乃と同じく一人で黙々と泳ぐ者が数名。ナイル川が見えるスモーク色の窓際のチェアーにゆったりと座りながら、ひそひそ話しているグループが二つ。

 いずれとも夢乃は目を合わせないように黙々と泳いで、シャワーを浴びに行った。 

 その途中で、赤毛の女性と鉢合わせた。


 彼女は夢乃に

 「これくらいの男の子を見なかったか?」

 と、焦った様子で聞いてきた。

 夢乃の腰くらいの位置に手を置くので、幼稚園児くらい?観なかったと英語で返すと、彼女はがっかりした顔をし、もしも見かけたらフロントでママが待っていると伝えてとお願いされた。


 スポーツクラブで子供が迷子になってるのかなあ???キッズルームがあるはずだけど、抜け出したのかしら???


 ここはそんなに広いわけではないけど、プールや子供には危ない機器もあるので、見失ったら心配だろう。


 夢乃は更衣室に戻り着替え始めた。

 髪を乾かしていると、先程の女性が更衣室に顔を出して叫んだ。


「マイヤー!マイヤー!!」

 

 子供の名前は「マイヤー君」らしい。ドイツ人?


 だが返事もなく、みんなここにはいないよ?というように首を振るので、彼女はいらいらしたように「シュクラン!」と叫んでドアを荒々しく締めて行った。かなりてんぱっているようだ。

 マイヤー君はどこにいるのだろうかと、夢乃もススポーツクラブ館内図を見ながら考えるが、やはりそんなに入り組んだ感じはしないので見つからないのが不思議だった。


 身支度が済んで、フロントの方に向かう途中で「マイヤー!!!」という声が聞こえたので振り向くと、金髪の男の子と先程の赤毛の女性が何か言い争っていた。 

 そして二人の周囲には何故か?ペットボトルに入った水を持った、エジプト人スタッフが大勢、

「マイヤー」「マイヤー」

 と、言いながら二人に差し出している。


 え?どういう状況??


 夢乃も他の人達同様に、なんだなんだと野次馬の中に紛れ込んで様子をみていると、隣にいた女性が説明してくれるた。


「男の子は見つかったんだけど、彼女がマイヤー!マイヤー!叫んでいたので、エジプト人が「水」を探しているんだと思い、みんなで持ってきてくれたらしいのよ。

 彼女も最初は「ありがとう、水ではなくて探しているのは息子なの」と、説明していたんだけど、あまりにワーワー何度も来るので、とうとう切れちゃったらしいのよ」


 「水」のことをエジプトでは「マイヤ-」という発音で呼ぶ。


 成程…マイヤー君…それはそれは普段から大変な事になってそうだね。お母さんの切れる気持ちもよくわかる。

 

 と、同情する夢乃。


「マイヤー君はどこにいたの?」

 別の人がマイヤー君の腕に抱いている何かを指す。

 んん??と、夢乃は目を細めてそれを確認した。

 マイヤー君の腕には、まだら模様の子猫が抱かれていた。


「オッタ!?」


 説明を要約すると、誰かが子猫の里親探しか?で、ここに連れてきたらしい。

(何故連れ込めたの!?)

 

 マイヤー君は猫を見に行き

(どこへ??)


 そこでお母さんがマイヤー君をロストして慌てて探し回る。

 そしてエジプト人がマイヤーの言葉に反応し、「水」を探していると思い、水を持ってお母さんを取り囲む。


 マイヤー君は猫を飼いたくて猫を抱えて戻ってきたが

(どこから!?)


お母さんは激怒し返してきなさい!と叫ぶが、

(叫ぶ気持ちはよくわかる!)


猫を連れてきた人?は既にいなくなっていたらしい。

(どこに消えた!?そして他の猫はどーなった!?)


 色々と…色々と突っ込みたいこと沢山ある話だけど!!


 泣き叫ぶマイヤー君と猫がどうなるかは非常に!!気になるが!!帰らなくてはいけない時間なので、断腸の思いで帰路に着いた。


 その後、あの時いたであろう日本人マダム達の誰かが、マイヤー君の噂を流してくれないか待っていたが、マイヤー君と猫の話はとうとう流れてこなかった。

 残念。


 それ以来、水のボトルを見るたびに、あの猫ちゃんがマイヤー君と共に一緒に暮らしていることを祈る夢乃であった。


追記:

 今回のうちのビルの停電の原因だが、うちより上階のお宅で浴槽の水を溢れさせて、部屋中水浸しにし、その水が階下に浸水し、その時に何かの電源?電線?をショートさせたら、ビル全体もショートしたということらしい。


 因みにお風呂を溢れさせた持ち主は、浴槽の水が溢れたくらいで水びだしと階下に浸水するような構造のこのビルが悪いと逆切れし、停電の間に被った損害を請求してきたんだそうで…

結論として、喧嘩両成敗??で、双方被害金額を請求しないことになったらしい。


それ…全部マジ???

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