第36話 (イギリス)健康診断とイギリスの猫


 海外駐在の場合でも、年に1回は必ず人間ドック=健康診断する決まりが、大体の会社ではある。

 和也の会社では、イギリスとフランスとドイツに提携している指定病院があり、そこに予約をして受診をすることになるらしい。

 もちろん帰国して日本でも健康診断OKだけど、数時間でいけるヨーロッパで受診の方が楽なので、大概みんなヨーロッパで受けるらしい。


 イギリスかフランスかドイツか?どれにする?と和也に言われ、どこでもいいと答える夢乃。

 なので、和也の大学時代の友人がロンドン駐在しているということで、イギリスに行く事になった。


 ファリーダはその間、副支社長の山下さん宅で預かって貰うことになった。何故かというと、うちでお好み焼きパーティーをした時に来た山下さんに、何故かファリーダが凄く慣れて、ずっと山下さんの膝の上にいた為、山下さんも凄く気に入ったらしい。

 ファリーダを預けに行くと、初めての家なのに、ファリーダはさっさかお部屋探索に行ってしまい、拍子抜けした。もっとこう・・・ここイヤー!みたいな反応あるかと思ったのになあ・・・。


 ちょいさみしい・・・。


 さて、ファリーダを預けたその足で、カイロ国際空港に向かい、BAでロンドンに向かう。フライト時間は約5時間!あっという間!!


 そして着いたロンドンは・・・寒かった・・・。

 

 予測はしていたが・・・灼熱の国から霧雨降る国は・・・寒い。めちゃくちゃ寒い!!風邪を引く!!

 私達は慌ててコートを出して着込んだ。和也の友人がコートか薄手ダウン必須と教えてくれて、駐在員の言うことをちゃんと聞く私達、Good Job!

 

 空港には和也の友人の市川直雄さんが車で迎えにきてくれていた。二人はがっつりハグをして、陽気に再会を喜び合う。和也が凄く嬉しそうで、こっちも嬉しくなる。


 市川さんの運転でまずはホテルに向かい(会社指定の提携ホテル)チェックインを済ませて、荷物を置く。

 そしてロビーで集合。

 明日の病院の場所確認する為に、車で向かう。地下鉄で移動できるらしいが、場所確認は大事だよと和也は言う。


 車窓からの風景はエジプトとも東京とも全く違い、それだけで楽しい。

 空は霧雨のせいかどんよりしている灰色。そのせいか?街中もくすんだセピア色の感じがする。


 少し古びた建物や真新しい建物が混在。レンガとせせこましい路。寒空に服をきっちり着込んだ人々や車が足早に行き交う街だった。

 匂いも風も空気もスピードも時間の流れも違う感じ。

 

 町中に猫はいないが、行き過ぎるアパートメント?の窓に、時々猫の姿が見えるの。人形?写真?本物??

 

 なんだか絵になる光景だなあと夢乃は思う。


 病院は直ぐに見つかり、和也はアプリで地下鉄の駅からのルートを確認する。以外と和也はこういう所がきっちりしているんだよね。

 

 夢乃的によかったのは、霧雨の中を散歩??している猫の写真がとれたこと。

 小雨の中、黒茶白の毛足の長い猫が、すたすた歩いている姿が、流石ロンドンの猫!!と言う貫禄だった。

 

 病院確認後、市川さんおすすめのレストランに夕飯に向かう。

 ちゃんとした和食のお店なんだって!ロンドンで和食!?凄く驚いたけど、ラーメンにとんかつに日本式カレーや日本のお寿司もかなーり普及しているんだって。

 お値段は凄いらしいけど・・・。


 住宅街みたいな落ち着いた雰囲気の一角にある、こじんまりとした和食レストランで、懐かしい和食を堪能し(自分で作るのはまた違うよね!)ホテルに戻る。

 明日の検診に向けて、旅の疲れもあり草々に寝ることにした。


 携帯電話を見ると、なんと!山下さんから23件のSNSが入っている!!

 全部ファリーダの写真だ!!

 

 ご飯を食べるファリーダ。TVを見るファリーダ。ベランダの柵の間から下を見るファリーダ。山下家のメイドとファリーダ。ペルシャ絨毯で寝そべるファリーダ。トイレで踏ん張るファリーダ。水を飲むファリーダ。


 とにかくファリーダ三昧写真だ!凄い!嬉しい!!


 お礼にと、病院近くで霧雨の中を歩いていた猫の写真を送った。直ぐに「イイネ!」が返ってきて、和也と大笑いした。


 翌日は快晴とまではいかないが建物の間の狭い空間から青空が見えて、少しほっとする。でも寒いは寒い。

 

 予約時間に地下鉄を乗り継いで病院に行き、待合室で問診票等かきながら待つ。

 日本語OKの病院だし、会社と提携している病院だから日本人だらけかと思ったら、日本人とそのほかの国の人達半々な感じだった。

 

 人間ドックは日本でするのとほぼ同じ。

 半裸状態に指定の簡易ガウンを着て、ぐるぐる色んな機器で計測したり撮ったり、採血採取に問診等など。その場で気になる問題点はなかったようで安堵したが、まるまる半日かりくたくたに疲れた。


 しかもなんだかせかせか急かされたり、無愛想だったり・・・多分これが普通なんだろうけど、愛想のいい人ばかりのエジプトにいたせいか、無性にあのルーズな時間の流れるカイロが恋しくなった。

 1日でカイロホームシック!?


 その日のお夕飯は待望の日本のラーメンと餃子!めちゃくちゃ混んでいたけど美味しかった!!


 ラーメン屋を出ると、雨を確認するように上を見上げるのが癖になっていた。すると、の向いのアパートメントの3Fの窓に、白黒の大きな猫が下界を見下ろしていた。可愛い。

 手を振ると、ふさふさ尻尾が揺れた。


 可愛い~~!!!


 あちこちの窓を見上げると、以外といろんな猫が下界を睥睨しているのが見える。

 どれもが一枚の絵のように窓枠やカーテンなどにマッチしていて可愛い。


 翌日からの市内観光や、少し足を伸ばしての観光、日本食を売っているスーパーでの爆買いとかしているうちに、あっという間に滞在期間は終了した。


 それと同時に、夢乃の携帯電話の写真の中は、窓にたたずむ猫、緑綺麗な公園を歩く猫、風情ある町中を歩く猫、店先の猫等などの写真でいっぱいになっていた。


 が・・・それよりやばかったのは、山下さんの毎日のファリーダ写真大量送信だった。

 

 山下さん・・・ファリーダが可愛いと思ってくれるのは嬉しいが・・・毎日2~30枚の写真は多過ぎです・・・。

 でも全部貰います。ありがとう!山下さん!


追記:

ロンドンは猫グッズが沢山売られていて、あまり猫の絵柄のグッズは買わない夢乃だったが、デザイン性がいいのか、気づいたら沢山購入していた。


猫顔の大きなスープかカフェオレ用のマグカップ。猫柄マグカップ(模様違いで2個)。猫の形のドアストッパー。猫模様のクッション。猫柄のキッチンタオル。猫のトング。猫のスリッパ。猫人形。猫柄の猫餌皿。猫の形のケトル。猫のTシャツ。猫の傘。猫の紅茶缶。


 ロンドン恐るべし!!



追記:

カイロの猫はフレンドリー!でしたが、ロンドンの猫は一味違いました。

年に1回の健康診断旅行・笑。日本語OKの病院指定なのに、英語圏の方がいいような気がして毎回ロンドンでした。猫グッズが沢山あるので…ロンドン危険です・笑

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