第33話 マジックのような排水管と猫 (ファリーダしかでませーん)
ちゃららららら~~~♪
目の前に洗面台の排水溝から、次から次へと出てくるものを見ながら、夢乃の頭の中にマジック・ショーの音楽が流れる。
出てくる出てくる。
細い管の中から、汚れたタオル、木片、コカ・コーラのペットボトル、バカラのペットボトル、石、コンクリート片、その他ゴミもろもろ。
よくもまあ、あんなに詰め込んだものだと感心するくらいに、排水管から、あり得ないゴミが出てくる。
と、言うことで、ここはマジック・ショーのステージではなくて、夢乃達のアパートメントのバスルームの一つだ。
カイロのアパートメントには普通2~3か所のバスルームがある。
大体は、ホテルと同じような仕様で、シャワー付きバスタブ+トイレ+洗面所で、必ず洗濯機や乾燥機置き場もつくのでかなり広い。
もしくは、バスタブ+シャワーブース+以下同文。
もしくはシャワーブース(バスタブなし)+以下同文、なパターンかな?
仕様はほぼ全面タイルか大理石タイルなので、ばーっ!と、洗剤かけて、ごしごししてシャワーで洗い流す様な、丸洗いOKみたいな感じなので、ひじょーに掃除が楽!
因みに、トイレにはイスラム式の洗浄用ホースというか小さなシャワーみたいなのも必ずついている。
(トイレットペーパーを使用しない場合の洗うようホースね。まあ外国人はまず使わない)
ウオシュレットを導入している所もあるらしいが、夢乃達のアパートメントのはビデまで標準装備のトイレだ。
さて、夢乃達の所には3か所バスルームがある。
まずは夢乃達が主に使用しているメインバスルームで、ここは大理石タイル仕様で、広くて明るくてオトナ3人は入れそうなバカでかいバスタブ、シャワーブースと、普通のトイレとビデ?専用?の使い道のわからないトイレ等等がある一番大きな所。
夢乃達の洗濯物は、ここの洗濯機で洗う。
次に、普通サイズのバスタブにシャワーがついた二回り小さいバスルーム。ここはめったに使用されない。
次に、シャワーとトイレと洗濯機置き場がせせこましくある、なんだか一気に仕様がグレードダウンしたバスルーム。
ここはメイドとか使用人?専用のバスルームで、ヤシラが使用している。
かなり年代物の日本製の洗濯機が置かれており(おそらく前任者の誰かの置いてったもの)ヤシラが雑巾とかもろもろを洗うのに利用しているらしい。
今回問題になっているのは、普段使用しないバスルーム。
ここは沢山お客様が来たときか、夢乃と和也がトイレがバッティングした時にしか使用していなかった。
が、先日、家でたこ焼きパーティーをした時、来客者から洗面台の流れが悪いと言われたので、オーナーに連絡して、そこからオーナーが業者を連れてきて、チェックして貰ったのだった。
ファリーダは来客者を遠巻きに見て監視している。意外とお客さん大好き猫なのよね。
業者がオーナーの目の前で、満々と水を洗面台に貯めて流すと、確かにちょろちよろとしか流れない。
調べると、トイレも流れが悪いらしい。
あーでもない、こーでもないと、色々いじくっているうちに、第二バスルームは水びだしになってしまった。
あ~~~カイロあるあるだね~~~。
まあ、部屋にまで逆流するほどではないので、リビングで待っていてくれとオーナーに言われ、ヤシラがシャイ(お茶)を入れてくれてリビングで待っていた。
こういう和也が不在で男性の来客とか業者が来るときには、ヤシラは絶対に夢乃を一人にしない。
イスラムの国では、夫や父親以外の男性と、女性が二人きりになるようなことは絶対的に許されないんだそうだ。
なので必ずヤシラは夢乃のそばにぴたりとついている。業者やオーナーが近づくときでも、がるるるると言う感じでそばに寄るな!オーラ―をバンバン出して盾になる。
凄い。徹底している。
玄関のドアもバーン!と開いているのが基本だ。締め切ってると同じく何を言われるかわからないし、信用してないので、いつでも逃げられる様になのだそうだ。
凄い。徹底している。
さてバスルーム。
1時間経っても、2時間経っても直らない。
その間、あーぎゃーわーわーなんだかオーナーと業者が延々怒鳴りあい、こっちが疲弊しそうだ。
ファリーダは怒鳴りあいは慣れているのか、ずっとバスルームで二人を監視?している。
頼もしいが危ないで、リビングにいてほしいのが本音。
暫くして、凄まじい水音とオーナー達の阿鼻叫喚が聞こえてきてた。
何事!?
慌てて駆け付けると、先に駆け付けたヤシラが激怒して何か叫び、夢乃に来るな!とストップをかける。
バスルームのドアが閉められ、3人の凄まじい怒号が響き渡った。
ひいいいいい~~!何?何?何が起こっているのおおおお???
びしょびしょになった3人がバスルームから出てきてた。
オーナーがヤシラにタオルを貸してほしいと言い、ヤシラはマダム達のタオルは貸せない!と応酬し、その怒号に疲弊した夢乃は普段使いのバスタオルをオーナーに渡した。
ヤシラはこんな奴らに貸す必要はない!勿体ない!と、どこからか古いタオルを(あれ、雑巾につかっているのじゃない?)持ってきて、夢乃宅のバスタオルを業者から取り上げた。
流石にオーナーのはとりあげなかった。
何が起こったかと言うと、業者がトイレの流れの悪さを調べていたら、れいのモスリム用シャワーホースをいじくって損傷して(何故??そこ関係ないんじゃない??)水が噴き出したらしい。
アホ?!
汚い水でなくてよかったねーというか…
よかったよー!!
と、言うことで、結局原因がわからないと言うので、その日の午後に別の業者を呼んで(何故、今の業者が対応できないのかはわからない)、洗面台とトイレを根こそぎ外して、配管を調べることになったのだ。
うわー!大工事じゃない?!
で…流石に大事になってきたので、和也に説明し、和也も仰天して午後は家に戻ってきてくれた。
そして午後に大掛かりな器具が運び込まれ、業者人数倍!で、がーがー!ごーごー!!凄まじい音を立てて、洗面台とトイレが外され、その下の配管を調べたら…
マジックの様に、配管からあり得ないゴミ??が大量に出て来たのだった。
いや、本当に。
冗談でもなんでもなく本当に。
あの細い配管(もしくは先は太いパイプなのかなー???)に、どうやって押し込んだ!?
要は建築廃材みたいなのが出るわ出るわ!!
さらに、汚物も出るので、バスルームは大変な事になり、ヤシラ大激怒!!!
ヤシラは、マダムに(夢乃に)こんな惨状を見せられない!と、一番奥のメインベットルームまで退避させらてしまった。
もちろんファリーダも。
ヤシラはお孫さんらしい子供に着替えを持ってきてもらい、メイド用バスルームで着替えたらしい。
オーナーは自宅に戻り着替えて来た。そしてマダムもやってきた。
うーわー。
最終的にはごみを全部取り出し、そしてビル管理会社の者まで来て、みんなでその山盛りゴミと、バスルームの惨状を確認してのワーワーギャーギャー!大騒ぎの論争。
あーもういいよ。そこ、使わないからみんな帰ってよ!!と、叫びたくなるほどのうるささだ。なんであんなにみんな大声で喚くの?!
ゴミを出したら、水は問題なく流れるようになり、バスルームもヤシラと業者により、ぴかぴかに磨き上げられ、あの惨状がウソのような元通りの綺麗なバスルームに戻った。
で…なんであんなごみが詰まっていたかの謎だったが、結論として、オーナーもビル管理会社もわからないとのこと。
(それでいいのかあああ!?)
恐らく、ビル建築時代の時の工事人が、ごみを捨てるのが面倒で押し込んだんじゃないかとか…。
(そんな事あり得るのか!?)
もしくは、上のどこかの階でリフォームした時に、業者がゴミ捨てるの面倒で配管に押し込み?
(そればっかりだよね?!それ、カイロの常識なの?!)
それが夢乃宅の配管で何故か? 詰まった???
等等、いろんな説を言ってくれたが…結論として、
「もう問題なく水が流れるから、問題なし~~!よかったね!」
と、言う事で意見一致したらしい。
それでいいのか!?
うちであったことは、他のお宅でもあり得るんじゃないのか!?
調べなくていいのか!?
等等津突っ込みどころ満載の回答と結果に、眩暈を起こしそうな夢乃だった。
とりあえず…
うん…第二バスルームはあまり使用しないようにしようということで和也と納得しあった。
あの惨状を見た後では使いづらいし…。
因みにファリーダは水吹き出しの時も先に察知して逃げたらしいしく濡れなかったらしい。
その後、普段使われないバスルームが気に入ったのか?涼しいタイルの上でよく寝ているようになったので、ファリーダ・バスルームと呼ぶようになった。
因みに、こーゆー水回りトラブルって良くある話で…次回のお茶会では各家のトラブル話しで盛り上がることになるのであった。
それにしても…
ペットボトルと角材の破片は…
どうやって押し込んだのか???
謎だ。
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