第22話 迷い猫侵入! (ミミ・白茶猫 飼い猫)
カイロの夏ははうだるように暑い!!熱い!。道路や建物の輻射熱で平気で平熱超える気温になるし!
誰かが冗談で、路上に置いておいたフライパンに卵落としたら目玉焼きになったと聞いた事あるけど、マジ作れると思うくらい暑い!
ピンヒールで歩いていたら、熱で溶けたアスファルトに穴が開いたとか、嘘か誠か有り得る話もあるし。
あ!サンダルかアスファルトかどっちかが熱で溶けて、へばりついて難儀してる人は見た事ある!和也曰く、安いサンダルだと溶けてアスファルトにくっついたりするらしい。
マジか!!
なので、できるだけ日中は出ない様に心がけてる夢乃だった。
それに夏になるとサマーバケーションでみんなヨーロッパとかに海外に旅行に行ってしまうので、日本人社会はどっと密度が減るので、お付き合いも減ってのんびりできる。
昼間は家の中でアラビア語の勉強したり、バザーに出すクッションの刺繍したり、ネット通話で友達や親と話したり、ファリーダと昼寝したり、ヤシラからエジプト料理を教わったりしていた。
夜は熱気がまだ籠るベランダに置かれてる藤製ソファーに座り、キラキラオレンジに輝くカイロの街を見ながら、ステラを飲んだりまったりする。
ファリーダはガーデンテーブルの上に、おつまみの間に寝そべりながら、街を見下ろしている。
どこからか楽団の賑やかな音が遠くから響く様に聞こえる。街の喧騒もこれからって感じです。
不意にファリーダが体を起こして、ベランダの端を見た。
「きやー!やめてー!ファリーダ!あなたがそーゆー風に一点を急に見る時は虫と、爬虫類とかいるときなんだからぁ!!」
と、身構え和也に確認してー!と抱きついてると、そこには金色の目が二つあることに気づいた。
「ん?!」
夢乃は虫も爬虫類も忘れてベランダの側によった。そこには少し薄汚れた白っぽい猫が蹲ってた。
猫?なんで?
ここ、11階だよ????
どっから来たの?この子??
それとも幻?人形?
と、色々考えてると、金色の目は、シャーッと真っ白な牙を剥き出して威嚇する。
可愛いいい!!
「和也、猫だよ?もしかして和也が連れてきたの?」
「まさか。ヤシラが連れてきて忘れて行ったんじゃないか?」
「ヤシラは猫なんて連れてきてないよ?」
夢乃と和也は、見知らぬ猫を前に、うーむと唸る。和也がベランダの手すりから向こうを見るが、どことも繋がってないので、ベランダ伝いで別の部屋から来たわけでは無さそうだ。
では下?上?
夢乃は立ち上がりバスルームへ走ると、大判のバスタオルを持ってきて、いきなり猫をバサリとかけて抱き上げた。
ふーしゃー!
叫ぶ猫をそのままバスルームに運ぶと、バスタブにいれていきなり洗い出した。和也が仰天して叫ぶ。
「夢乃!!何してんだよ!!」
「え?ベランダに置きっぱなしはできないから、とりあえず洗う」
「あらう―!?靴じゃないんだぞ!!」
「でもノミとかいたら嫌じゃない」
てなことで、フー!シャー!喚くだけで暴れないので、ちゃかちゃか夢乃は猫を洗い、タオルドライで乾かした。
解放された猫は呆然とした顔で、よたよたファリーダの猫リビングのカーペットの上で、なめなめしだした。
「意外と飼い猫かもね。室内なれているし、シャンプー慣れている感じだし」
「そうかあ?」
「野良猫がここまで来ないでしょ?」
「まあなあ…。一番可能性が高いのは、玄関の開けた時に中に入った、だろうなあ」
「そうだよね。ヤモリみたいに壁を伝わってとかは…可能性低いものね」
とりあえず猫は一晩泊めてあげて、明日の朝にヤシラ経由で、このビルの中で飼い猫を探しているお宅をバーブ―に聞くことにした。
朝起きると、いつも私の頭のそばで寝ているファリーダがいない。朝4時に起こすのに、もう6時だ。一番近いモスクのコーランの声で目覚めた感じ。
猫リビング行くと、猫ベットの中で、2匹仲良く寄り添うようにこちらを見て来た。
「あらー仲良くなったのね」
やはり飼い猫だろうなあ・・・と、思う。
ファリーダは黄緑の目を細め、ぐるぐる喉を鳴らしながら、白と微妙に茶色が点在する猫をなめなめした。白猫もファリーダを舐め返す。あまりに仲がいいので、このまま2匹で飼ってもいいかなあ…とも思う。
そして帰国する時は、2匹だとどれくらいかかるのかなあ?と計算をしたりもして、少しわくわくして過ごした。
迷い猫の飼い主は午後には判明した。
やはり同じビルの中の住人の猫で、昨日掃除で大きく開放していたドアから出て行ったらしく行方不明になっていたらしい。
家族は探したがいないので、階段でエントランスフロアまで行って、外に行ってしまったのかもしれないと、半分諦めていたそうだ。
家はうちより3F上の家。
いろいろ時間調整して、夕方に家族で迎えに来た。
ちょい残念。
スウエーデンからの駐在員家族で、小学生くらいの可愛いお嬢さんと優しそうな両親が一緒に来た。
お嬢さんはうちの中を見た途端に、ぽかんとしたように見回す。ご両親も、「あらまあ?」と言う感じ。なんだろう?と思いながら、猫リビングに案内すると、猫達はキャットタワーの上から睥睨してきた。仲良く。
「ミミ!!」
お嬢さんが叫ぶと、ミミはにゃー!と鳴く。やはり飼い猫だったんだねえ。
でもミミは降りてこないので、暫く待つことにした。
リビングでお茶を出してると、お嬢さんが言う。
「ここ、うちとお同じね!!」
きょとんとしていると、お母さんが説明してくれた。
なんと!そのお宅は間取りも家具も内装もほぼ同じなんだそうだ。うちはピンクというか暖色系がメインの家だが、そのお宅はブルー系がメインが違うだけで、全く同じらしい。
へええ!と、言うことで、お宅訪問をした!
エジプトのアパートメントは、同じビルで平米が同じでも、オーナーにより内装も間取りも全く違う。
水回りの位置とかは基本変わらないが、内装がちがうので全く別の空間となるのが普通だ。
日本みたいにほぼ同じ間取りで販売とかいうことはあまりないらしい。
なのに、そのお宅は確かに自分の家に入ったかのように、カーテンやファブリックの基本配色が違うだけで、シンクロしていてびっくりした!!
しかも置いてある香りも、同じイケアの同じものだったので、臭いまで同じ!!
なんとなくあの猫、ミミが入り込んだ理由が分かった気がした。
解放されていた玄関からうっかり外に出たミミ。玄関の先も自分の家の一部と勘違いしたんだろうねえ。ここのビルの掃除は完璧に行き届いていて、廊下も階段の大理石タイル床も壁もピカピカだから。
階段を下りて行ったら、自分の家の匂いがなくなりパニックになり、下へ下へいったら、たまたま開いていた玄関から同じ匂いがしてきたので入り込んだ。
それがうち。
もしかしたらファリーダが気づいて出迎えて、びっくりして逃げ惑ううちにベランダに出た?もしくはメインベットルームの下に隠れていて、私達がベランダに出た時に一緒に出た???
そして私達に見つかったと。
と、言うことで可愛い迷い猫は短い滞在を終了して、元の家に無事に戻る事ができた。同じ間取りの同じ匂いの家に。
本音を言えばかなーーり残念。
ファリーダも暫くはミミを探して、あおーんあおーん鳴いて探し回り寂しそうだった。ごめんね、ファリーダ。
因みにあとでわかった事だが、なんで間取りや内装に家具まで同じだったかと言うと、そう(笑)、オーナーが同じだったのだ!
よくよく聞くと、オーナーはこのビルの4軒持ちアパートがあるんだそうだ!
知らなかった!!
と?いうことは?
あと2軒色違いの同じ部屋があるのだろう。ちょっと覗いてみたいような気がした。
更に余談だが、ミミの飼い主の所に、オーナーがオーナーチェックき来た時、そのミミ脱走の話をしてたらしい。
で、うちで見た猫リビングがいいねえと話したら、翌日にいきなり押しかけてきて、同じように小リビングをあっと言う間に猫リビングに改装してびっくりしたそうだ。
「更に同じ間取りになったわよ」と、ミミのママが写真を見せくれて、私達は大笑いした。
恐るべし!カイロのオーナー!!
そしてオーナーの猫愛!
追記:
マジ…オーナー無双だなあと思いました。普通、ここまでするオーナーはいないようですよ。変わったオーナーですよね。
勿論、改装代はオーナーもちです。
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