第20話 アレキサンドリアのレストランの猫 (猫いっぱい)
海に行きたいなーと、ポツッと呟いたら、和也が「アレキサンドリアに行かないか?」と、言ってきた。
アレキサンドリア!!
地中海の真珠だっけ?美しい地中海の街だよね!
古い遺跡とかも沢山あって見所満載の!!
「行きたい!あ、でも、ファリーダはどうする?」
まだ小さいし、ホテルに預けるのも誰かに預けるのも嫌だ。
「ペットOKのホテルもあるから大丈夫だよ。よーし!早速予約するよ。海沿いのプライベートビーチのあるところがいいよね」
てな事で、私達は今、カイロからアレキサンドリアに向かって、サイード君運転する社用レクサスでデザートロードを爆走している。
まさしく爆走!
メーターみると日本では絶対出せないスピードで、ガンガン走ってるよ!!
でも、サイード君は涼しい顔で、かえって気分良さそうに運転をしてる。もしかしてスピード出すの好きなタイプ??
デザートロード(砂漠道路)は、アレキサンドリアとカイロを繋ぐ高速道路みたいなもの。入り口になんか石像があるのがエジプトっぽい。なんの石像だろ?あれ?
そしてそこからまっっすぐ!な感じに、砂漠の真ん中にアスファルトの道が、だーーーーーーーーっ!!と、走ってる。
最初は周囲に防砂用?みたいな木々が生えていて、緑豊かだったのが(ゴミもね)いつの間にか、両側が一面の砂漠になるのは圧巻だった!
凄い!
サイード君の話では、昔はもっと砂漠砂漠してたけど、どんどん緑地化が進んで、結構緑が多くなったと言う。
彼が子供の頃は、この道を走ると砂が飛んできて盛り上がって、ぶつかって事故ってって車が周囲に死屍累々と転がってたらしいけど、今は整備が進んであまり見かけなくなったと。
と、言ってる側で錆びて朽ちたバンが砂に埋もれてるのが見えた。
「あれは?オブジェ?啓蒙用で置いてあるの??」
サイード君はげらげら笑って肩をすくめた。
ファリーダは最初は猫用キャリーの中にいれていたが、車が走り出すと、「出せ出せ」と、にゃーにゃー鳴くので、リードを短くつけて出してみた。
本当は危ないから良くないんだけどね。
恐らく、ジェフ達と旅をしてた時は自由に車の中を移動してたのかもしれない。
ファリーダは慣れた様子で窓に行き、足をついて外の風景を見たり、後ろの窓から後続車をみたり、昼寝したり、実に堂々と自由にしてた。
私より旅慣れてない?
途中ドライブインで休憩。
ドライブインの中は冷房が効いていて涼しい。そして、ファリーダはリードで抱っこで連れて行ったが(サイード君が店主に許可貰ってた)、全然平気で、慣れた様子でプラスチックの椅子の上で寝ている。
やぱり旅慣れてるなぁ。
そこから先は砂漠、牧歌的風景が断続的に続く。
連なる木々の後ろにはピジョンタワーのあるエジプト風建物が見え隠れし、周囲の畑はレタスだとサイード君が説明してくれる。
そして、その畑にはぽつぽつとナツメヤシの木が風に揺れている。なんだかとてもエジプトっぽい風景だと思った。
砂漠を見ていたら、じわじわくる暑さと疲れで、ファリーダと一緒にグースカ爆睡してしまったらしい。和也に起こされたら、もう海がキラキラと光って見えていて、窓を開けると潮風が入ってきた!
海だ!地中海だ!
雰囲気満点!!
車は海沿いに建つ一軒家風のレストランの前に停まった。目の前は大きな湾になっていて沢山の船が停泊しているのが見える。
ファリーダはサイード君と運転手達が休憩するスペースで待機。そこでも軽く食事ができるらしい。ファリーダも何か貰えるらしい。美味しいお魚だよね、きっと!
店の中に入ると海が一望できるテラス席に案内された。
真っ白な壁と天井に柱とかは鮮やかなブルー。そしてテーブルにも真っ白なクロスと、鮮やかなブルーのクロスが掛けらていて、グラスも食器も意外なことに綺麗に磨かれていて雰囲気いい。
団体観光客も結構いる。賑わってるね。
注文はメニューみてもできるけど、店内にどーん!と置いてある氷の上に置かれた新鮮な魚や貝や甲殻類から選んで料理を頼むこともできる。
和也は手慣れた様子で、大きなエビと小さいエビと綺麗な色の見たこともない魚を指さして注文していた。(あれ、食べれるの??)
席に座ると、すぐにエジプト産白ワインが注がれ、ぱんぱんに焼きあがったエイシとタヒーナとサラダが運ばれてくる。このぱりぱりエイシをぱりぱり割って、タヒーナをたっぷりつけて食べるの大好きなんだよね~~。ライム多めに絞ろう!
食事は地中海料理だね!うん!とても美味しかった!
久しぶりに海鮮を食べた感じがする。もちろん、カイロでも海鮮は食べれるけど、海の傍で海や船を見ながら食べる食事はまた違うよね。
食事の後にレストラン屋上?からアレキサンドリアと一望できるというので、他のお客たちとワイワイ上に上る。
白と青のストライプの日よけがはたはたはためく、四角い屋上からは、美しいグラデーションで輝く地中海と穏やかな湾の海や街が一望できる。漁船やクルーザー等が点在し、青い海を背景に真っ白なカーイト・ベイが眩しいくらいに輝ている。
こうい綺麗な絵、あるよね。絵葉書とかでも。
素敵!カイロとは全然違う!
うっとりとみていると、目の前のオレンジ色の瓦屋根の上に猫達が歩いてきた。何かの映画みたいに尻尾をピン!立てて、一列に歩いている姿がかわいい。
ちちちち~と、誰かが猫を呼ぶ。
猫はこちらを見て、そしてダダダダ!と走ってきた。何か貰えると思ったらしい。
誰かが下に行き、テーブルに残っていた魚とかをぽい!と投げる。するとどこからかわっ!と沢山の猫が集まってきた!
白、黒、、ブチ、はち割れ、白黒、三毛に、しましま。いろんな猫が大小ごちゃごちゃにいる。放り投げた魚とかをあむあむ言いながら食べたり、咥えてどこかに逃げていく子や、それを追う子で大混乱になっている。
凄い!!
だが、来たとき同様に食べる物が無くなると途端に、ダダダダ!とどこともなく消えていく!
え?何?演出?これ?もレストランのサービスの余興?
んなわけないか!
私達はおかしくて大笑いし、その声が海の方に風に飛ばされていった。
店を出ると木陰の下、軒先、あちこちに猫がいる。みんなのんびりだらーんとしているのがかわいい。でも近寄ると、さら~~~っと自然にどこかに消えていく。うーん海風は湿気はあるけど猫はドライだ。
待合室に行くと、ファリーダは白身魚の湯がいたのを貰ったそうで、サイード君の膝の上でのびーん!と伸びて気持ちよさそうに寝ていた。抱き上げると、美味しかったようにというように目を細めて笑ったような気がした。
因みに後で聞いた話では、ファリーダの魚代も料金に加算されていたそうだ!しっかりしているよ!(苦笑)
ゆっくり海沿いの道を走り、海沿いのプライベートビーチのあるホテルに着くと、猫もOKの部屋に案内される。
どんな部屋かドキドキしていたら、普通の部屋だった。特段に何か猫用があるわけではないが、地中海がのぞめる居心地のいい部屋だった。
ファリーダは部屋中をくんくん臭いを嗅いでチェック。犬っぽい?
そして海が見えるテラスに出て、何かを一生懸命感じるように臭いを嗅いでいた。
ひげをぴん!と立てて、海の潮騒を聞き、街の喧騒を聞き、何かを思い出そうとしているような気がした。
「もしかして…アレキサンドリアでジェフ達のカバンに入り込んだのかな?」
私と和也はファリーダのぴしりと伸びた灰色の背中を見ながらひそひそ話す。
「にゃん!」
と、鳴いて、ととととと!と私たちの所へ走ってきた。
まるで過去はもういいというように、私達の方がいいというように。
私と和也はファリーダの少し大きくなった体をぎゅっと抱きしめた。
潮風と波の音。港町の喧騒が遠くから聞こえ、モスクからのコーランの声も聞こえてくる。私達2人と1匹は、その心地よい音を聞きながら、夕方までぐっすり寝てしまった。
とても気持ちよく。
追記:
アレキサンドリアは列車でもバスでも行けます~。
カイロと全く違うのでぜひいってみてください~!
ホテルは海で泳ぎたいなら、街中から外れたホテルがお勧めかなー?
街中にも小屋?部屋?みたいなの借りれてはいれるところもあるけど・・・
うん!あまりきれいではないので・笑
あとねー海の中にも痴漢いるので気を付けてねー笑
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