第15話 花屋の猫 スフィンクス・野良ネコ 灰色猫

 

 砂漠の国だけど、カイロではお花がとても安い!

 そしてお花屋さんも多い!


 品種はやっぱり日本とは違う、カラフルで香りのいい南国のお花が沢山売られている。グラジオラス、極楽鳥花、香りのいいバラ、大輪のバラ、芍薬、香りのいいジャスミン系。プルメリア、香りのいい大輪のユリ、蘭もいろんな種類でカラフル!

  

 小さな花束を抱えた、花売りの子供達も沢山いるのは少し複雑な気分だけど、屈託のない笑顔で外人とみればぼったくり値段で売りつけてくるので、なかなか商魂たくましい。


 ジャスミンのお花や香りのいい花をレイにして売っているのも沢山ある。


 サイード君は時々、車の間を縫って車に売りに来る花売りの子から、そういうレイみたいなのを買い、車の中にぶら下げることがある。


 何かおまじないみたいなことなのかなあ?と、聞いてみたら、芳香剤替わりなのだそうだ。

見た目も可愛いし綺麗だし、香りもいい。匂いがなくなれば簡単に捨てられるので、便利で安価でいいらしい。室内に飾るのもいいらしい。

 

 なので私も買って玄関ドアにぶら下げてみた。玄関フロアがいい香りになり、にんまりする。

 翌日になると萎れていたのでヤシラが新しいのと替えてくれたいた。以来、うちではヤシラがあちこちのドアにぶら下げるようになった。

 

 因みに、こういうヤシラが買う我が家でかかる細々した買い物の代金は、台所に置いてある、簡易買い物用お金入れの箱の中から出して買っている。

 この支払システムは、いちいち領収書をもらい代金払うのが面倒くさいと、何代か前の駐在員の方が、この方式にしたらしい。

 もちろん、ヤシラを信頼しての事だ。

 

 以来、代々引き継がれている決算方法で、特段問題はないのでうちも活用している。


 ヤシラは市場等で補充する物を買うとき、私に「これだけ持っていくよ」、「これはいくらだったから、これだけ箱に戻すよ」、と、律儀に報告してくれる。

 代々の駐在員とヤシラの築き上げた信頼のシステムなのだ!

 

 ところで、ドアにいい香りのレイをかを飾るのは、それがカイロの慣習なのかなあ?と、他の奥様達に聞いたら、どこもしていないらしい。


 恐らくヤシラが、私が飾ったことで、それが、「日本の慣習」と勘違いしているかもしれないと言われてた。


 おおう~~!迂闊なことはできないなあ…と、苦笑した。

 まあ、害になることではないし、家中いい香りになるのでいいけどね。


 が、そういう路地売りのお花は虫がいるので嫌だと梨田夫人が身震いした。確か医虫が嫌いな気持ちはよくわかるので、うちに日本人のお客さんを呼ぶときは外すことにした。

 因みにいい香りのルームフレグランスも欧米製のが沢山売られているし、うちも使っているので問題はない。


 お花は、私がめちゃくちゃ落ち込んだ時期(周期的にくる)に、和也がよくいい香りのバラを買ってきてくれて、以来、私もその花屋に買いに行くようになった。


 お花屋さんもいろいろあって、完全冷房完備の日本みたいな花屋から、ばーん!と開け放しの店内にクーラーは付いているけど、アレジメントのお花が所せましと売られている花屋。

 単体で生花をバケツにぶっさしておいて売る花屋。とか、まーいろいろな売り方があり面白い。

 

 私が行くのはアレジメントと単体売りが半々の日本といたタイプの売り方をするお店だ。なにより、そこには看板猫がいるから。


 ふふふふふふ♪


 その灰色の大きな猫はいつも、大小さまざまなアレジメントが置かれた棚で寝ている。(カイロの猫は基本寝ているよね)


 スフィンクスのように長い脚を前に揃えて出し、時々頭をもたげてお客を監視するように見るので「スフィンクス」と呼ばれている。性別はわからない。


 店主に聞いたら野良猫らしい。

 いつの間にかお花の間で寝るようになり、お店を閉める時刻にはいつの間にかいなくなるそうだ。


 通いネコ?


 今朝も花屋の前を通るとスフィンクスが片目を開けて、私をみてにゃーと鳴く。しょっちゅう来るから顔とか気配を覚えたらしく、こうして挨拶をしてくれる。

 

 こういう接客態度に胸どきゅん!された人が、結構足しげく花を買いにきているらしい。私もその一人だな。ハンハリー二のヘバといい、スフィンクスといい、カイロの看板猫は侮れない! 

 

 ある日、店主が軒先までて、腕を組みながら周囲をうろうろ見ているので、「どうしたの?」と聞いた。(翻訳アプリでね) 


「一昨日からスフィンクスがこないんだ。事故か喧嘩に巻き込まれてこれないんじゃないかと心配している」

 

 それを聞いて、私も周囲を見回すが、スフィンクスの姿はない。

 

 元々野良で、どこからかふらりと来てふらりと帰るので、仕方ないか…と、店主は肩の力を落として、頭をさすりながら店の中に戻った。

 

 アレジメントの中に、ひまわりを使った、ライオンのような猫のようなアレジメントが、スフィンクスがいつも座る棚の上に置かれていた。

 それを買おうとしたら、店主が新しいのをぱぱぱぱ!と作ってくれた。棚のはスフィンクスの代わりなんだそうだ。


 が、次の週に行ったら、スフィンクスが復活していた。

 

 なんと!朝、シャッターを開けたら、どこからともなくスフィンクスが子猫をくわえて現れたらしい。そして1匹を棚に置くと、またどこかに消え、そして子猫をくわえてくる。そうして3匹の猫を今は棚で育てているとの店主は目を細めて言う。


 ええええ!?スフィンクス!女の子だったのね!しかもママ!!


 棚を見ると、商品の大方がどけられ、タオルが敷かれた真新しい籠が置かれ、その中にスフィンクスが喉を鳴らしながら、子供達に授乳をしていた。


「うわああああ~~!可愛い!スフィンクス、偉いね、頑張ったね!」

 

 スフィンクスは喉を鳴らしながら、自慢げに私を見上げてウインクするように片目をつぶる。私は子猫達を見て堪能し、今日は奮発して少し大きめのアレジメントを買って帰った。


 スフィンクスが戻ってきてから、花屋に前を通ると必ずお客がいて、店主が子猫とスフインクスを撫でながら何か言っている光景をよく見かけるようになった。


 店主が簡易的に作った、ひまわりとバラの猫風アレジメントは飛ぶように売れているらしい。しかも看板をみたら、いつの間にか「サミーの花屋」が「猫のスフィンクスの花屋」に代わっていて、シンボルマークにスフィンクス(猫)の顔が描かれていた!


 もち、猫のスフインクスの花屋は商売繁盛になったのは言うまでもない。

 やはりカイロの看板猫!侮りがたし!! 


追記:

 エジプトは意外や意外と農産物大国ですので、お花の輸出も多く、お花が多く安く売られています。ただ、水が悪いのか?暑さのせいか?あまり花もちはしませんが安いので、どんどん買えるつーかなんつーか・笑

街中で花売りの子供も多いです。日本人は100%ぼったくられます・笑 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る