第13話 メナ・ハウスの猫 (お邪魔猫沢山・しましま系)

 

 と!いうことで!やってきました!私の接待ゴルフデビュー!ぱちぱちぱち!


 …誰も拍手なんかしてくれないので、自分で自己奮起で拍手する。


 数日前に日本から出張でいらした団体さんは、どうもお偉いさんのようで、和也達はさらに数日前からピリピリしている。

 

 私のギャグ?完璧スルーで余裕がない。今朝の一言目が「粗相のないようね!」だよ。大丈夫?和也?


 カイロのゴルフは早朝も早朝スタートだ。暑いからね~~~。てなことで、気合満々の和也と、欠伸かみ殺して怒られる私は、ピラミッドのそばにあるメナ・ハウスオベロイのゴルフ場に向かいGO!


 私達は「メナ・ハウスオベロイ」とか、「メナ・ハウス」と呼んでいるけど、正確には「マリオット・メナハウス・オベロイ」と言うんだそうだ。元々宮殿だったそう

で、その建物は荘厳華麗で歴史的価値も高く、内装ももう歴史ある贅を尽くされていて素晴らしい!の一言らしい。


 因みに私は数回「奥様ランチ会」や、プールで来たことあるが一度は宿泊してみたいと思うホテルだ。


 ピラミッドエリアにあるので、まずはこの間のゲートの所で厳重チェックをうける。凄い。

 ピラミッドの傍なのに緑豊かで美しいクラシカルなアラブ風建物が点在し、緑の庭園やプールの先にピラミッドが見えて、何回も言うが、ここに宿泊出来たら最高だろうな~~と思う。

 和也、帰国までには1回でいいから泊まりたいよ!パレス側にね!


 私達はクラブ・ハウスに向かう。

 クラブハウスには既にゴルフやる気満々の日本人男性陣達が、も~~~~嬉しそうにきらきらしながら集まっていた。朝からテンション高すぎる。


 奥様達は苦笑ぎみだが、高田夫人は男性陣達と共にやる気満々できらきらしている。凄い~~。

 

 と、言うことで熱い太陽に照らされる前に、ちゃっちゃかと回ることになった。一人一人にキャディーが付き、グループに分かれてカートで回る。


 私は奥様初心者グループにいれられた。みんなそんなにゴルフに執着していないし、上手でないので、まったり回るグループだ。


 ただし…日本からいらしたVIPお客様はゴルフ大好きらしく、一番足をひっぱりそうな私達を一列に並べさせ、、

「とにかく回数を打ち、みなと回る速度を合わせるように!」

 と、本気で訓示を受けた。


 試合でもないのに…まじ怖いんですけど?

 賞金でるわけでもないのに、どーしてここまで熱くなるの?

 Cairoだから?違うか(笑)


 てなことで、VIP様グループがまずティーグラウンドからナイスショット!!


 素晴らしい~~~!!!ぱちぱちぱち~~~!!!

 と、全員が大絶賛の拍手喝采である。

 

 VIP様は遠くに軌跡を残して、トーン!トーン!と転がっていく白球を見て、満足そうに頷いている。更に褒めちぎりの言葉が飛びかい、VIPグループはカートで先に進んだ。


 あほらし…。


 とは、顔には絶対出さずに、下手くそグループが続きます。つまり…後ろから追いかけられるので、必然的に数を打ち先に進まないといけない!と言うトコロテン方式なのであった。接待ゴルフも大変だよ~~~!!


 私は細かく細かく、後方グループを確認しながら、とにかく打つ!打つ!打つ!

 ラフやバンカーや水ポチャして時間を取られないように、とにかくフェアウエイを細かく真っすぐ飛ばし続け、打つ!打つ!打つ!!!


 つ…疲れた…。


 第1コースのグリーンに来たときは、もう汗だくだくの腕も足もばっきばきの疲労マックスだった。慣れないことはするもんじゃない!!

 ここでリタイアしたい!!!できるわけないけどさ!!


 だが、VIP様達のいるグリーンに到達したら、なんか様子がおかしい。キャディー達がなんかわーわー言っていて騒いでいる。


 あ、猫だ。


 猫がピンの周囲でゆったり寝そべっている。しかも複数。団子になっている。


 その可愛い姿に、私は目を細めたが、VIP様はカンカンである。クラブを振り上げ紳士らしからぬ言葉と態度で追い払おうとして、キャディーに止めらている。

 

 自分の思い通りにするゴルフを中断されるのが、よほど嫌いなんだなあ…。


―カイロでゴルフはカッカしてはダメよ


 と、言う高田夫人の言葉がよみがえる。でも誰もそんな忠告などできるわけない。  

 結局、キャディーが1匹1匹だきあげ、ラフに猫達を移動させて、やっとプレイ再開。VIP様は1回で華麗にカップイン!して、自慢げに高々とクラブを掲げてまた拍手喝さいを受けている。


 私は暑さと疲労でもうバカバカしくて、拍手も惰性でする感じで、和也にごめんと心の中で謝った。私は接待ゴルフはむいていないや。


 VIP様が先に進むと、猫達がのそのそとまた戻ってきた。まったりグループは苦笑しながら、「可愛い~~~」と写メ撮りまくる。そっちの方が楽しい。


 私は少し離れた場所に、クラブを支えにして中腰スタイルになり、グリーンで寝そべる猫達のベストショットを狙った。


「まあ!芝の目を読むなんて!夢乃さん本格的ね!タイガーさんのレッスンを受けたそうですけど、すっかりゴルフお好きになられたのね?」


 芝の目を読む?なんですかそれ?

 私が読んでいるのは、オッタ様達のベストショットですよ~~!

 可愛い~~~!!


 ここには縞々猫が多いらしく、いろんな色の縞々猫が、うねうねした感じで固まり、カップインを阻むように寝ているのが可愛い。


 でもすぐにキャディー達が猫達をどかし、後方を見ながら、早く早く!と急かす。

 後ろを振り返ると第二VIP様御一行様が、腕を組んで睨んでいる!!!

 

 ぎゃああああ!急がないと!!

 

 私達は細かく細かく刻んで、カップインを決めると、そそくさと第二VIPグループにグリーンと猫を明け渡した。


 その後は「まったりグループ」はもう無理とリタイアし、涼しいクラブハウスでお茶とお菓子でまったりした。ランチまで時間があるので、ピラミッドに向かってショット!な写真が撮れるコースに、カートで観光気分で向かい、バレないうちに写真を撮り、ハウスに戻った。


 ハウスでのランチで、スコア発表されたが、そりゃーもうね!

 VIP様1位!

 第二VIP様2位、

 以下順当な感じで、私はなんと!ブービー賞を取り!(びりだと思っていたよ)、貴重な日本から持参してくださった高級ふりかけセット(高級器に入ったあれですよあれ!!)をいただき、VIP様も私も大満足でゴルフ接待が終了した。


 が、その夜の支社長宅のホームパーティー形式のお疲れ様会で、「まったりグループ」が、猫の写真を撮りまくり、ずるしてカートでピラミッドベストショットコーナーに行って写真撮りまくったのがバレ、


(誰だよバラしたの!!)


 ゴルフlovelovelove!!のVIP様に、「ゴルフとは!」と言う、ありがた~~~いお説教とお話を延々聞かされる羽目になった。


 とほほほほほほ…。


 もう!猫がいても絶対!二度とゴルフloveの奴の接待ゴルフなんてしない!!

 このクソ暑い中にゴルフを付き合ってあげたのになんだよこれ!

 むかつく!!

 早く日本に帰れ!!


 とは…もちろんおくびにも出さず、

 私はにこにこ笑顔を向け、VIP様を称えまつり上げながら、ゴルフ場の猫を待ち受けにした画面を見て、心を遠くに飛ばしていた。



追記:

 一時期閉鎖されていたそうですが、もう再開したのかなー?ピラミッドに向かて打つ!とか、ピラミッド背景に打つ!はゴルフする人にとってはとても魅力的ワードと聞きましたが…暑いんだよねー笑

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