第11話 飼い猫探しの旅 (イレーヌ・ヒマラヤンと雑種の子猫色々)
「夢乃!明日、ペットショップにいかないか?」
朝、
味噌汁(豆腐・アジアスーパーで購入、ネギ・フリーズドライ)、
焼き鮭(真空パック)、
納豆(アジア系スーパーで購入)、
ノリ(日本から持参)、
ほうれん草のお浸し(夕べの残り。アルファースーパーで購入)、
卵焼き(ヤシラが市場で購入 味付けは日本から持参の出汁醤油 )
と、言うバリバリ日本食朝食を食べていたら、和也が嬉しそうに言ってきた。
「え!?ホント!?猫見つかったの!?」
「ああ、ムハンマドとサイード君があちこちで聞いてきてくれたんだよ。夢乃ご希望のロシアンブルー!なんと!血統書付きもいるらしいよ」
「凄い!!ありがとう!!和也!」
私は納豆を混ぜ混ぜしている和也に抱き着いて、危うく納豆まみれになるところだった。危ない危ない。
と、言うことでその日は朝からテンションマックスで、教えてもらった数件のペットショップのサイトを見ていた。
へえええ~~~日本とほぼ同じような感じなんだね。綺麗なお店が多い。ドライフードにウエットフード、いろんなグッズも売っている。価格的には輸入品が多いせいか、少し高めだなあ。
和也の話では、明日、ロシアンブルー系の猫を用意しておくらしいよと言われた。
用意しておく???
なんか引っかかるが、私は子猫を飼える喜びでルンルンだった。
ヤシラにも「オッタ」が来るんだよと言うと、ヤシラは嬉しそうに笑う。猫は神様だから飼うの凄くいいことだと、簡単なアラビア語と身振り手振りで教えてくれる。
いい店を知っているから、猫のグッズを買ってきてもいいよと言う。
ヤシラ!万能!!
最近、ヤシラとも翻訳アプリとかを駆使してかなり会話をするようになっている。ヤシラは40代なんだけど、もうひ孫までいるんだって!びっくりだよ!!
ところで、猫を飼うに当たっては、もちろん住んでいるアパートのオーナーの許可がいる。猫探しの前に、打診をしたときはドキドキだったが、二つ返事でOKが来た。ただし、二つ条件がついた。
1・オス猫はダメ。スプレーするから。
2・飼った猫を必ず見せてほしい。確認にいかせてくれ。
うん。気持ちはわかる。オス猫のスプレーは不妊手術で予防もできるが、100%ではないし、臭いとれないからね。こんなきれいなアパートの部屋を汚されたりしたくないもんね。
どんな猫か、ちゃんと飼えるのか、どう飼育するのか、私達と猫をチェックに来たいのも分かる。
もちろん、私達は即答でOKした。
猫探しの当日、私は遠くから流れてくる早朝コーランの声に目覚めて、いい猫に出会えますようにと朝日に祈る。
今朝はなんだか清々しい気がする。暑いけどね。
サイード君運転のレクサスがアパートメント前に横づけされ、私はルンルンで乗り込んだ。ヤシラが説明していたのか?何故かバーブ―のおじさん達まで、私が猫を連れてくるとを知っていて、可愛い子猫だといいねとみんな口々に言う。
エジプト人の情報網恐るべし!!(プライベート情報駄々洩れ???)
と、言うことで、1軒目の店に来た。
大通りに面した大きなペットショップで、店先には馬用!?と思われ程にでかいドックフードの袋が山積みにされていて、日よけのシェードの下には、色とりどりの小鳥の入った籠が無数にぶら下がっている。
ザ!カイロ!と言う感じのカイロによくある店舗風景だった。
中に入ると、棚には綺麗にいろんな動物のフードがカテゴリーごとに分けられ陳列されている。反対側の壁にはグッズっぽいものが置かれている。
螺旋階段が中央にあり、そこにも沢山グッズがかけられている。
涼しい店内を中に進むと、大きな白いテーブルの前に店主とスタッフらしき男性達がにこにこ待っていた。サイード君が店主と話し、握手し、和也、私と握手する。
私がメインだとわかっているらしく、一番きれいな椅子を勧められ、私達は座った。
直ぐに籠に入れられた子猫達が連れてこられた!
私は立ち上がり、子猫達を見た!
白黒ブチ、茶トラ、灰色っぽい子(足先が白)、灰色っぽい子(お腹が白)、灰色のシールポイント・・・・
私は和也に目くばせして、そっと囁く。
「可愛いけど、これ、全部雑種だね?」
いや、雑種でもハートが繋がればOKなので問題はない。だけど血統書付きと言われたのに、少しもやっとする。
サイード君も眉根を寄せて店主に何か言う。店主が何か紙を見せる。サイード君それを見て、語気荒く怒り出す。そして店を出よう!と言う。
ええええええ!?まだ子猫1匹も抱いていないんですけどおおお???
店主が何かサイード君に一生懸命説明するが、サイード君は聞く耳持たずだ。和也は何か感じたのか、私を急いで車内に押し込んだ。サイード君が乗ってきて窓を開けながらも何か語気荒く話しそのまま車をスタートさせ窓を閉めた。
暫くして気持ちを落ち着かせたようにサイード君が説明した。
要は、あそこの子猫は全部雑種。
だがサイード君は血統書付きをお願いしていたので、それを言ったら、あのお店発行の血統書を出してきたのでブちぎれたらしい。
しかもお値段が、血統書を発行するので1匹10万円からと…。いい加減すぎるとサイード君の怒りが収まらない。
この温厚なサイード君をここまで怒らせるとは…何を言った?店主!!
しかし1匹10万円??
それは値引き交渉前の値段だろうか?
それとも確定お値段なのだろうか??
いやいや、問題点はそこではない。
血統書ってお店で出せる物なのだろうか??
なんだか色々突っ込んではいけない気がして、次の店に期待を向けてGO!
ハイ、同じくサード君激怒でお店を出ました。理由は察してください…とほほほ。
次の店にGO!!
3軒目!‥‥次に!!次にGO!!!
そして車内ではサード君の怒りが止まらない。3軒とも1軒目のお店とほぼ同じ対応で、可愛い沢山の子猫を堪能できたのは嬉しいが、血統書の所で激怒こーすに突入なのだ。
何故!?もしかしてみんな結託しているの!?
4軒目、ラストのお店は落ち着いた雰囲気の緑多い住宅街の一角にあるお店。
ここも同じくクリニックとショップ併設のお店だ。店内はこじんまりとしているが、奥には診察室とかレントゲン室とかあり、今までのお店よりは、よりクリニックに近い感じがする。
水色の医療用ユニフォームを着た大柄な男性が出てきて、サイード君と握手し、和也、私と握手する。
ここまで来るまでに、エジプト人同士の怒号を沢山聞き過ぎて、もうへとへとの私はエ笑顔も力ない。診察室みたいな部屋に連れていかれ、そこで彼はPCに数枚の写真を出す。
お!!今度は全部ロシアンブールだ!
(多分本物???)
ドクターは英語で説明してくれる。
「知り合いが猫のブリーダーをしていて、今、ロシアンブルーの子猫はこの3匹がいるらしい。ただ、昨日の情報なので、もしかしたら決まった子もいるかもしれない。会いに行くことは可能。 今日でもOK。
気に入らなければ、他のブリーダー仲間を当たってくれる。
金額はここに書いてある通り。内訳はこれ。
もしも気に入ったのなら、ここで自分が健康診断とかするし、ワクチンとかもするし、診断書も出す。料金はこれ。
血統書については、イギリスの方に登録して出すので、その料金が別途必要。将来的に売るとか、ブリーディングするなら必須。そうでないなら、簡易のが発行できるので、どちらか選べる」
驚いた!ちゃんとしているじゃない!(ドクターごめんなさい)
サイード君も満足そうで、どうですか?いう。
私はわくわくして、3匹の写真をみて、動画を見て迷う。
「今日会えるんだったら、会いに行って決めたらどうだい?」
和也の言う通りだよ!!ここで決めなくてもいいんだよ!!
そこでドクターからブリーダーに電話をかけてもらう。ブリーダーと話しているうちに眉間に皺を寄せた。そして振り返り言う。
「雌はさっき決まったらしい。オス猫1匹だけど、どうですか?」
私達は肩を落とした。
「アパートメントのオーナーから、雄はNGと言われています」
ドクターも残念そうな顔した。
ブリーダーの人は親切な人らしく、猫種にこだわらなければ知り合いに打診してみると言ってくれた。もちろんお願いをしてクリニックを出ようとした。
するとするりと、大きな茶色と白のふさふさの猫が出て来た。ドクターは破顔一笑する。
「飼い主が旅行中でペットホテルで預かっている、イレーヌです。頭がよくて、鍵を開けてすぐ出てきちゃうんですよ。イレーヌ、ほら戻って」
ドクターが抱き上げようとすると、イレーヌはするすると体を交わして私の足元にきて、足をするんするんと頭と体を押し付けていく。
そして金色の細い月のような目で見上げて、にゃーんと鳴く。
まるで「気落ちしないで、いい出会いがあるから大丈夫よ」と言っているみたいだった。私はイレーヌを抱きあげ、すりすりすると、奥のゲージが並んだ一つに入れてあげた。ゲージ越しに、イレーヌは頭をこすりつけ、にゃーんと鳴く。
ありがとう、イレーヌ。
最初の猫探しの旅はこうして終わった。
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