第9話 スフィンクスとケンタッキーと猫 (スポテッドタビーと三毛)


 ピラミッド見学からスフィンクスに移動し、車から降りる。ここも沢山の観光客でいっぱいだ。みんな思い思いに写真を撮って楽しんでいる。

 ピラミッドを見てきたせいか、少し小さいなあと呟いたら、和也が

「みんなそう言う」

 と、笑った。

「よかった!自分だけじゃなくて!」

 と、私も笑う。


 しかし、ピラミッドにしてもスフィンクスにしても砂漠もみーーーんな白っぽい色なので、サングラスをしていないと目がチカチカしそうだ。そして太陽の熱と光を反射して・・・無茶苦茶暑い。暑いけどそばに行ってじっくり見ることにした。

 

 何を? 


 猫だよーーー!ピラミッドにもいるんだから、より街に近いスフィンクスなら絶対いると思っていたんだけど、本当にいた!!


 スフィンクスの足の間に猫が寝ている!!スフィンクスみたいに足を前に出して、その足の上に顔を乗せて寝ている!!


 可愛いい!!!ミニ豹みたいなスポットタビー!綺麗な柄だなあ。

 

 傍に行きたいけど、見学するスペースと、スフィンクスの間には溝みたいな空間があり離れているので、そばには寄れない。

 でも柵がないから行ってもいいのかな?ダメだよね??


 と、思いながら周囲をうろうろしていたら、スフィンクスの足下でスフィンクスにもたれていた、ガラベーヤを来た男性が私が猫を見ていることに気づいた。

 そして、猫の写真を撮るか?みたいなジェスチャーをするけど、絶対お金を取るんだろうなと思うので、断る!


 最近の私は断れる女なのだ!


 ここからでも十分写真は撮れるし、気持ちよさそうに寝ているので、そっとしていた方がいいだとうと思っていたのに!!

 なんと彼は!ひょいっ!とスフィンクスの足の間に行き、寝ている猫を捕まえると、首ねっこでぶらーんとぶら下げて私の所に連れて来た。


 ええええええ!?何!?何してんの!!


 気持ちよく寝ていた猫は、まるで人形のようにだらーーーんとしている。


 大丈夫なの!?


 おろおろする私に、彼は「はい!」とばかりに猫を渡す。


 私!頼んでいませんけど!?


 でも猫拒否はできない(したくない)ので、そのまま猫を受け取った。猫は綺麗な緑色の目で私を見上げているが、暴れも抵抗も何もしない。

 

 生きているよね??


 そう思ったら少し目を細めて、「あふ~~」と、あさっての方向を向いてあくびする。

 すると急に周囲に人が集まり「猫だ」「猫だ」「スフィンクスだ!」と写真を撮りだす。仕方ないので、ぼやーんとした猫を抱いてにこにこ笑うしかない!!


 なんなんだよおおおおおお~~~~!!!(涙目)

 野良猫触るの厳禁!が、ここにきて怒涛の解禁である。とほほほほほ。

 

 こうなればヤケだ!私は猫を優しく抱き直し、猫と一緒に観光をすることにした。


 スフィンクスって、昔はナイル河の河岸に立っていたんだってね。狛犬みたいに。すると…この眼下の街は昔はナイル河の川底にあったのかな?

 でもナイル河は上流のダムができるまで、毎年大反乱していたんだよねー??なんかそういのここからの風景じゃ想像できない。


「夢乃!写真撮るよ!こっち見て!」

 携帯電話のカメラを構える和也の方に、夢乃は振り返る。抱いている猫を見て、和也は唖然とし、渋い顔をしたけど携帯電話を構えた。

 

 そう!ここからはピラミッドとスフィンクスと一緒に写真を撮れるスポットなので、猫と一緒にポーズ!

 数枚撮ると、和也はOK!と、親指を立てる。


 それにしても大人しい猫だなあ?と、腕の中の猫を見る。緑色の目を真っすぐに私に向けて、ニャーと鳴く。

 

 可愛いなあ。

 

 だけど、そろそろ次の場所に行く時間だ。そっと地面?石畳?に降ろすと、彼(男の子だった)は、涼しい日陰に行き、ぺたんと座り、私に向かい、ニャーと鳴く。

 

 はいはい、抱っこ料としてお水を差し上げまする!

 ペットボトルのお水を掌に乗せると、ぺちちゃぺちゃ、ざらざらの舌で飲んで、気持ちよさそうに目を閉じて寝た。


 ふふふふ可愛いなあ。


 立ち上がり、和也と一緒にスフインクスから離れようとすると、さっきのガラベーヤの男性が凄い勢いで走ってくると、右手を挙げて親指と人差し指をすりすりする。


 ハイ、やっぱりお金ですね。猫代金ですね。やっぱりね。


 私は1ポンド出すと、彼は渋い顔をする。

 だが、後ろの和也が睨むと、仕方ないというように真っ白な歯で笑うと、「sayonara~!」と言って、また同じ場所に戻って行って観光客に「写真撮るよ?」と話しかけている。


「さよならだって~。日本人だとよくわかったよねえ」


 私達は苦笑しながら、太陽の船の博物館に向かった。

 太陽の船博物館には残念ながら、猫はいなかった。

 既に日が高くなり、じりじりとした太陽が照り付けているので、猫達は涼しいどこかに行ってしまったのだろう。残念。


 でもその後、休憩でピラミッドとスフィンクスが見えるという、ケンタッキーに行ったら周囲には何匹かの猫たむろっていた!!

 

 いるよねー!チキンあるしねー!(違うか)


 このケンタッキーのお店の2Fの客席からは、なんとスフィンクス画商面に見れる!スフィンクスを鑑賞しながら、チキンを食べれるのよ!凄いでしょう!


 しかしこからの風景はなんか不思議。街の雑多な風景の先に、(洗濯物が干してあるし)ピラミッドやスフィンクスが見える。こうしてみると、やはり街のそばにピラミッドがあるんだなーとしみじみする。


 ん?違うか。街がピラミッドのそばに拡張してきているのよね。高田夫人のお話では、高田夫人達がいらした頃は、まだ空港やピラミッドの周辺にはそんなに街はなかったらしい。ここ最近で爆発的に街が拡大したと仰ってたなあと、ぼんやり考えながら生ぬるい7UPを飲み干した。

 そしてガンガンにクーラーの効いた店内で涼んで、懐かしのケンタッキーでお腹を膨らませて外に出る。


 いるいる。猫達が待っている。

 既に何人かの観光客がむしったチキンをあげている。私も当然、かがみこんでむしっておいたチキンの肉の部分を差し出す。


 猫達はふんふんと臭いを嗅いで、あむあむと食べ始める。

 可愛いなー。 

 柄は何というか…三毛?いや汚れで三毛にみえるだけ???

 触ろうとしたら、ぱ!と素早くチキンを加えて逃げてしまった。


 うーん、何というか、ピラミッドやスフィンクスの猫と違い、街の野良猫!って感じだね。カイロで出会う猫は比較的、だらーんとした猫が多いので、なんだか新鮮名感じだった。


 と、思っていると、違う三毛猫が目の前にすらりとした足をそろえて座ったので、残りのチキンを全部上げて立ち上がった。

 

 和也がいい加減にしろとう顔で睨んでいる。

 ハイハイ、今行きますよ!


 私は除菌ティッシュで手を拭くと、サイード君の待つ車に向かって走り出した。


追記:

 スフィンクス前のケンタッキー、席が空いていたらマジラッキー!

 でもエジプト人曰く、ケンタッキーよりエジプトの鳥の丸焼きとかの方が100倍美味しいと胸を張ってよく言われました・笑

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